10年使える箱。
Mac Pro、高いですよね。タワー型で59万9800円からのスタートときたもんだ。バイク買えるし、中古のクルマだっていいところのが狙えるプライスです。公開現在、MAXカスタムで550万円(税別)以上。パソコンでこの価格ってちょっと待てよ。なんだApple(アップル)はボッタクリなショーバイをはじめたんか。
と思う方が多いかもしんない。だからMac Proがなんでこう高いのか探ってみました。
Mac Proはパソコンじゃなくワークステーション

世の中には「なぜPROという名をつけた」と言いたくなるプロダクトが溢れていますが、このMac Proは正真正銘のプロフェッショナルモデル。業務用マシーン。既存のカテゴリに当てはめるなら、パソコン、すなわちパーソナルコンピューターではなく、「ワークステーション」と呼ばれる製品群の一員です。
他メーカーのワークステーションも、パッと見のハードウェアスペックと価格が見合っていないように感じるモデルが多々あります。CPUのコア数とメモリ搭載量はすごいけど、CPUクロック数とGPU性能は巷のタワーゲーミングPCに負けてないか、とか。
しかしワークステーションのお話をするとなると、スペックリストでは見えないところが大事になってくる。
ワークステーションに求められる最もたるポイントは安定性。たとえば多くのモニタに複数の映像を送り込んでいるデジタルサイネージ、イベント会場で展開される8KのリアルタイムCGレンダリング、数十のハイレゾトラックを並べてミキシングしていく音楽制作現場、展示物の前に立ったカスタマーのデータを取得して個人情報を破棄しながらもビッグデータとして使えるように整形するAIマーケティング。
こういったハングアップ(フリーズ)することを許されない現場を支えているマシンがワークステーションです。CPU&GPUのファンがフル回転している状態で長時間動かし続けても、ハングアップしない構造が求められるため、ハイパフォーマンスであると同時にヘビーに使いつづけてもへこたれない極みのエアフロー設計に、砂漠のように広大なメモリ空間を制御できるように作られているんですよね。
想像してみてください。8K動画編集の仕事を受けてしまって、最後のレンダリングに2日かかると表示され、ゴールを待ち望んだ48時間より前にオーバーヒートで止まってしまったPCの姿を…そして納期に間に合わないことを確信してしまった自分の表情を…。
ヴォイドアウトしたくなるはずそんなの。でもその事態を(極力)防いでくれる耐久レーサー的アーキテクチャ、それがMac Proなのだと、まずは認識していただきたい。
Appleも空気の魔術師の一員

Mac Proの内部写真を見ると、近年のクルマのボンネット内部をみるかのごとく、各部がカバーで覆われています。見た目がいいからこうしたわけじゃない。整流のためのエアロパーツなんですよこのカバー。
実機を見てみないと断言できませんがCPU、電源、拡張スロット(GPU含む)の三大熱源部をそれぞれ別室化。前面の摺り下ろしパネルから取り入れたフレッシュな空気の通り道を分けて各部を冷却し、熱をもった空気が他のパーツエリアに入り込まないように排気させるようなエアフロー設計がされているのでしょう。
効率よく冷却できればオーバーヒートしにくいし、ファンの回転数も抑えられるから低ノイズ。長年PCを作り続けてきたメーカーならではの空気の魔術師スキルが思う存分発揮された作りなんだろうなあ。みてみたいなあ。
2モジュール4GPUのモンスター

目に止まりやすいMac Proのストロングポイントといったら、なんといっても今回から独自に採用しているMPX(Mac Pro Expansion)モジュールの存在ですね。高速データ転送と大電力供給をセットにした新拡張スロットに、GPUを2機搭載したグラフィックボードモジュールを2台組み込める。はい。都合4GPUをサクッとインストールできます。しかも選べるのがグラボ界最強種と名高い「Radeon Pro Vega II Duo」ときた。

MPXのメリットは計550Wの電源供給ができることで、既存のデスクトップPCやワークステーションのように、電源ラインを考える必要はなし。超カンタン。ということはメンテナンスも超カンタン。最初はどノーマルな構成で、あとからモジュールを付け足してのカスタムもOKです。
筐体内部でケーブルが浮いてないから、空気の流れを阻害する要因もきわめて少なく、排熱効果も高くなる。いいことだらけすぎる。
プロキシを作る必要なし。No 待ち時間、No ストレス

映像編集、再生時のブースターになる「Apple Afterburner」の存在もMac Proが極みとなるポイント。今はMac Proでしか使えないアクセラレーターカードなので、Mac Proを使う理由にも直結しうる要素です。
動画編集をする際、通常MacBook Proのようなマシンでは4Kの映像をそのまま長時間再生できないため、プロキシと呼ぶ軽いバージョンの映像を作ってから編集を進めます。
Apple Afterburnerはこれをスキップできるカード。最大3ストリームの8K 30p ProRes RAW映像を処理できるようになるって。つまりリアルタイムに3つの8K RAW映像を重ねたり切った貼ったの編集ができる。4K RAWなら12素材を並べて待ち時間なくフルフレームレートでいじれるって(ちなみに後付けもできる)。
ナンスカソレ。新人なのにTV局の編集室でいきなりのデビュー決めるんですか。それだけの生産力をご期待あれってことですか。
ライバル機以上に稼ぐための道具

クルマでいったらスーパーカー級のパフォーマンスがあり、カスタムすることでの伸び代もめっちゃある。それこそ300km/h超えのドリフトを成功させたGT-Rのように。
新しいMac Proってそんな存在なんですよ。うちに秘めたポテンシャルが天井どころか雲も突き抜けちゃう。
またAppleはアプリ開発者にOpenGLを超えるGPU APIのMetalを普及・浸透させることで、同じアプリを同じスペックのハードウェアで動かしてもMac Proのほうがほら快適という環境を作ろうともしています。
Mac Proを使えば生産性が高くなる。短時間で仕事を終えて次の仕事にとりかかれて、月収年収アップ間違いなし。Mac Proの本質ってここじゃないですかね?
ところでAppleさん。MPX ModuleってeGPUを考えてない?

最後におまけ。…さてMac Proの構成ページをみていたら、「Radeon Pro W5700X」モジュールの提供が予告されているじゃないですか。Vegaより新しい世代のGPU(RDNAアーキテクチャ)ですが、スペックはVegaより低いので価格も安めとなるでしょうけど…
…まてよ? AppleとAMDはもしかしたら、MPX Moduleを使ったeGPU BOXの提供を考えているんじゃなかろうか。MPX ModuleをMacBook系にも提供するんじゃなかろうか。
カードサイズは長いけど、ハイパワーかつインストールのカンタンさで魅力的なMPX Module。それがモバイルマシンでも使えるようになれば…。夢、ひろがりますね。