コンパクトフルサイズミラーレス一眼「SIGMA fp」レビュー:足と心を軽くする、愛すべき特異点

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コンパクトフルサイズミラーレス一眼「SIGMA fp」レビュー:足と心を軽くする、愛すべき特異点
Photo: ヤマダユウス型

「この画質」を、常備できるという喜び。

SIGMA fpとはどんなカメラなのでしょう。“フルサイズ機であること”以外をそぎ落とすことで生まれた、世界最小のフルサイズミラーレス一眼。必要な機能は拡張パーツで補うスタイルをとる一方で、ワンボタンでスチルモードとシネモードをシームレスに行き来。あのコンパクトボディの使い心地、持ち心地、そして生み出せる写真のことが、皆さん気になって仕方ないんでしょう? えぇ、えぇ。僕もです!

数日、この素晴らしいフルサイズミラーレスカメラとランデヴーすることを許されたので、今回はSIGMA fpを小旅行に持ち出し、スチル撮影中心に使ってみました。

SIGMA fp

これは何?:SIGMAがおくる新発想フルサイズミラーレス

価格:場予想価格でボディ本体税込22万円、「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」キットで26万4000円

好きなところ:コンパクトさとフルサイズの両立。

好きじゃないところ: 意図をもって使わないと中途半端になりがち。バッテリー弱し

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Photo: ヤマダユウス型

装備は、ボディバッグにSIGMA fp+45mm F2.8 DG DN | Contemporaryと、スマホやモバイルバッテリーなどを入れた街撮りスタイル。レンズ込みで重量約650gという、こんな軽率なノリでフルサイズを持っていけるんだもんなぁ。追加でハンドグリップ「SIGMA HAND GRIP HG-11」を装着しています。ストラップが編集部のミスで届かなかったんです…。

そういえば、SIGMA fpのサイトを見てみるとシブ目の写真が多いなーと思っていて。どうせなら何か明るいモノを撮ってみたいですねぇ。そうだ、海にいこう。

気軽で、濃厚

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Photo: ヤマダユウス型

品川から京急本線、京急久里浜線に乗って三崎口駅にやって来ました。有名な城ヶ島公園ではなく漁港の方へ向かおうと歩いていたら、見事な大根畑が。デフォーカスの確認がてら撮ってみようと、ファインダーを見ることもなく(むしろ付いてないし)、気軽に一枚。気軽さに対して出てくる画が美味しすぎませんか

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Photo: ヤマダユウス型

遠くに富士山も見えました。ちょうど前日、初冠雪が確認されたそうで、絵に書いたような白い三角形が。

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Photo: ヤマダユウス型

暗部がギリギリ残る露出で一枚。さすがに日差しの強いところではファインダーが欲しくなりますが、コンデジ感覚で動かせる構図の自由度は、ノーファインダーの良いところ。心の中ではGRと比較してますが、構えたくなるようなシーンはほぼ同じですね。ただ、重さの違いがやっぱり大きい。

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Photo: ヤマダユウス型

じゃあその重さってのは、この濃密な画とトレードオフで考えたらどうなのか。えぇ、安すぎです。静謐を切り取れるカメラは良いカメラ、某カメラレビューサイトが言ってた(気がする)。

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Photo: ヤマダユウス型

道中を楽しみつつ三崎港に到着。漁港っぽい構図じゃない?

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Photo: ヤマダユウス型

漁港らしくぬこ様とエンカウント。AF速度は爆速とは言わずとも、猫撮りには申し分ないレベルかなと。秒18コマの連写性能も、こういう時の歩留まりの高さに貢献してくれます。

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Photo: ヤマダユウス型

最短焦点距離近くで。手前の泡のボケ感、美味しそうじゃあないですか。最短あたりになると手ブレのなさが気になってくるので、RAWではなくjpgにして電子手ブレを入れると良いかもしれません(RAWでは電子手ブレが使えない)。

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Photo: ヤマダユウス型

今回撮った中で一番好きな写真はこれですね。空気感が残せた気がして、改めて良いカメラだなと震えました。

200枚くらい撮ったところでバッテリーが危うくなってきたので、モバイルバッテリーからType-C経由で充電しつつ、駅へ戻りました。SIGMA fpを丸一日使うなら、予備バッテリーかモバイルバッテリーは必須でしょう。専用バッテリー「BP-51」はAmazonだと2,000円くらいなのでね。

アンダーが気持ち良い

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Photo: ヤマダユウス型

日の高いうちに海を撮れたので、今度は街でのスナップ的な使い心地を確かめてみます。マーシャルにSnow peakバッグというイカしたニーチャンをスナップできましたが、こういうのこそコンパクトボディの気軽さゆえ撮れた画かなと。点光源のボケも良い感じで、この45mm単焦点のポテンシャルもビッシバシ感じてます。

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Photo: ヤマダユウス型

ISO1600くらいはまだまだ常用範囲内。なんとなーくですけど、電子手ブレは無いほうがキレが良い気がしますねぇ。ISOとシャッタースピードと相談して、適宜調整すると良いかもです。QSメニューに電子手ブレ項目を出しておくとそのへんもスピーディ。

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Photo: ヤマダユウス型

観光地での使い心地は、コンパクトなボディが一等活きるシーン。グっと手を前に出して撮ったり、小回りが効いてきます。心なしか店員さんもカメラをそんなに意識していない感じがしましたね。

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Photo: ヤマダユウス型

そして今日の最終目的地が某アミューズメントパーク。一度来てみたかったんですが、閉店してしまうらしく、じゃあこの機会に寄って撮ってみるかと。

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Photo: ヤマダユウス型

入り口から1億点です。

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Photo: ヤマダユウス型

おお、クーロン城み……。ISO6400ですが、ノイズも気にして見るなら気になるかなというくらい。

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Photo: ヤマダユウス型

わかってましたが、SIGMA fp(と、この45mm)は、アンダーの表現が良すぎます。意識しなかったらアンダーの画ばかりになっちゃうほど、アンダーが気持ち良い

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Photo: ヤマダユウス型
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Photo: ヤマダユウス型

暗めの画との相性がこれまた良いんだ。お客さんひしめく店内でも、コンパクトなボディゆえ取り回しも全く問題無し。

普段使いとしてのフルサイズ

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Photo: ヤマダユウス型

あらためて、常備カメラとしての使い心地もチェックしてみましょう。45mmはテーブルフォトだとちょいと寄り気味なので、やや引いて撮る必要がありますね。ピント面も薄いため、構図には工夫が必要。GRと同じ感覚で使うと、見せたい部分までボケてしまいました。

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Photo: ヤマダユウス型

モニターレベルでわかる発色の良さは、彩りの良いものを見るとスナップ欲を掻き立ててくれます。起動速度を測ってみると約1.7秒と、体感的にはGR IIIとほとんど変わらない速さ。発見→起動→撮影まで、早ければ4秒といったところです。

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Photo: ヤマダユウス型

何気なく「良いな」と感じた情景に対して、サっと撮影に入れる。片手撮影もできるし、タッチでフォーカスエリアも簡単に変更できるこの手軽さは、まさにスナップです。とはいえダイヤル操作まで片手でするとさすがにフロントヘビーになって危ないので、そこは素直に両手で構えましょう。手ブレ抑制にもなりますし。

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Photo: ヤマダユウス型

この階調の豊かさですよ。息を呑む。

思わず動画撮影を忘れてしまう

SIGMA fpには12種類のカラーモードと専用ボタンが搭載されています。ナウいものだと映画のグレーディングでおなじみの「ティールアンドオレンジ」があり、スキントーンを際立たせる表現として、ポートレートやビビッドなどと使い分ければかなり楽しめます。が、普段使いとしてもこれがなかなか面白くて。

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Photo: ヤマダユウス型

彩度のあるものや曇った日の街撮りに使うと、かなり映えます。個別ボタンから操作できるので、ちょっと違う色作りをしてみたいときは軽率にモードを変えるのオススメです。

もちろん、もともとは映像業界の表現ですから動画撮影にも申し分なし。「ティールアンドオレンジ」で動画を撮ってみました。

Video: ヤマダユウス型/YouTube

なんかニューヨークっぽい(安直)。動画もまた、安易な色変えオススメです。

で、この動画撮影なんですが…意識しないと存在を忘れます。スチル撮影ばかりしてると、動画も強いんだってことを忘れちゃうんですよ。普段動画を撮らない人は特にそうなっちゃうと思います。やっぱりこれって、SIGMA fpの能力を活かしきれてない?

そこはむしろ、これからだと思うのですよ。スチルの合間に動画を撮ってみて、だんだんと動画撮影や編集の面白さを知っていけば、SIGMA fpとの付き合い方や使い方も変わってくるはず。なので「動画は別にいらないからなー」という人が、深淵なる動画沼にハマっていくためのカメラと言えなくもない。Davinci Resolveを導入して、カラコレを遊びだしたら、もう秒読みですね。

あと、cinema5DがCinemaDNG RAW形式とmov形式の詳細な比較をしてくれてたんですけど、気軽に撮る分ならmovも悪くないですね。RAWと違ってプレビューもできるし。いきなり12bit撮影に挑むよりも、まずは扱いやすい範囲から撮影してみると良いかもです。

驚異の低感度撮影でNDフィルターいらず

SIGMA fpで特に気になっていたのが、拡張感度ISO 6という恐るべき低感度撮影。ノイズレスな長時間露光果たしてどんな画になるのか。まずはISO25で試してみました。

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Photo: ヤマダユウス型

露光時間は4秒。歩道橋に置いての撮影です。次はISO6

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Photo: ヤマダユウス型

露光時間は13秒。どっちも右の木の部分にノイズがなさ過ぎてもう違いがわっかんない。5段分のNDフィルターみたいな使い方もできそうですし、フィギュアやブツ撮りでも今まで以上にシャープな線が描けそうです。

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Photo: ヤマダユウス型

こっちはISO6で10秒露光。うーむ楽しい。絞り開放で長時間露光できるという点を何かに活かしたいですね。

あなたのそばにずっといられる、フルサイズ

え、スチルも楽しいんですけど」というのが率直な感想でした。前評判やスペックを見る限りは動画ありきかなと思っていたんですけど、そんなことはなかった。じゃあその良さはどういった部分なのかというと、コンパクトゆえの取り回しの良さ、フルサイズならではの豊かなボケや階調表現、楽しめるカラーモードなどなど。特に、コンパクトであることとフルサイズであることの両立っぷりは、使ってみると予想以上にWow! な体験でした。

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Photo: ヤマダユウス型

もちろん、何かしらに特化したモデルと比べるなら、この両立っぷりは短所にもなりえます。スナップ機にしては大きい、フルサイズにしてはメカシャッターや画素数が物足りない。僕なりに感じたこれらの短所を補っている最大の魅力は何かと問われれば、やはりコンパクトさでしょうか。小さい=常備できる=いつでも撮れるということ。でも、ただ撮れるだけじゃあないんです。それは、フルサイズの画なんです。

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Photo: ヤマダユウス型

あとはもう、作りの良さですね。冷たく堅牢なアルミニウム合金や感触の良いボタンは、触っているだけでもうワクワクしてきます。持つだけで心が躍るアイテムってあると思うんですけど、このカメラはそれです。持っているだけで、もう楽しい。

カメラにおいての使いやすさは、どんな要素を犠牲にするかのトレードオフで成り立っています。SIGMA fpも多くを犠牲にしていますが、それでも残したのがフルサイズという要素であり、それは他のカメラでは味わえない体験と写真をもたらしてくれました。「ポケッタブル・フルフレーム」の考えは、今までのデジカメの文脈に、愛すべき特異点を作ってくれた気がします。

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Photo: ヤマダユウス型

さらにいうなら、今回のようにスナップに撮るか、あるいはもっと本格的に撮るか、その運用すらユーザーに委ねてますからね。カメラに自分をあわせるのではなく、自分の使い方によってカメラを変えていく。写真や動画、ひいては「自分は何を撮りたいのか」的な、己の中のクリエイティブとも向き合うことになりそうです。アップデートで追加されるCinemagraph機能とかほんと楽しみなんだよなぁ…!

すべての可能性は、この小さく偉大なボディの中に。SIGMA fpを手にした時、あなたならどこへ行って、何を撮りますか?

Source: SIGMA fp, cinema5D

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