DJスティーヴ・アオキに、あえて音楽のことを聞かないインタビュー。彼は“フューチャリスト”だった

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  • author ヤマダユウス型
DJスティーヴ・アオキに、あえて音楽のことを聞かないインタビュー。彼は“フューチャリスト”だった
Photo: Victor Nomoto - Metacraft

ステージに立つ側の人であっても、その目線は意外に僕たちと近いかも?

スティーヴ・アオキ。年間250本以上ライブをし、オーディエンスにケーキをぶん投げたり、ライブ中に首を痛めて病院に直行したりと、派手さも規模も世界レベルな日系アメリカ人DJ/ミュージシャン。

経歴とライブの様子だけ聞くとギズモードとは縁がなさそうな文化に居る人に見えますが、実はスティーヴ、バリバリのテック大好きマンなんです。

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Photo: Victor Nomoto - Metacraft
ギズモードの撮影にもノリノリで応じてくれた

たとえば、2014年に発売された彼の1stアルバム『Neon Future』には、『"Transcendence" (featuring Ray Kurzweil) (Intro)』という楽曲が収録されています。これは人工知能研究の世界的権威、そしてシンギュラリティを提唱する第一人者でもあるレイ・カーツワイルをフィーチャーした楽曲。

また『"Beyond Boundaries" (featuring Aubrey de Grey) (Outro)』という楽曲では、不老不死の実現を本気で目指す老年学者のオーブリー・デ・グレイをフィーチャー。音楽カルチャーとは遠いように見える学者たちを、あたかも当たり前のようにフィーチャリングしています。

Video: WIRED/YouTube
レイ・カーツワイルとスティーヴ・アオキの対談

この、未来やテクノロジーに対してポジティブにアプローチする姿勢、かなりギズ寄りじゃないですか? で、今回彼が来日するということでギズモード・ジャパンにもインタビューのお話が来ました。

そして、スティーヴに色々と聞いてみたんですが…もうね、彼めっちゃくちゃテックファン、むしろテックオタク。テクノロジーに詳しいミュージシャンというか、この鋭い観察眼と未来志向は、フューチャリストと言ったほうが僕の中ではしっくりくるレベルでした。ついでに、彼が情報を摂取しているお気に入りのブログ(記事の最後に紹介)も聞いてきましたよ。

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Photo: Victor Nomoto - Metacraft
ちなみに彼が使っているスマホはSamsung Galaxy

今のテクノロジーは、完全にSFのそれ

──今日はよろしくお願いします。まずはギズモードということで…最近はどんなテクノロジーに注目していますか?

スティーヴ・アオキ(以下、スティーヴ):そうだね、じゃあ、あんまり新しくないことについて話そうかな。

新しくないといっても、未来っぽいものなんだけどね…

SFみたいなもの…

コミックに出てくるようなものなんだけど…

テレキネシス

って言葉を聞いたことある? 超能力で物を動かすみたいな。その概念はいまや実在のものなんだ

2013年頃だったかな。侵襲的手術でAIを脳に埋め込むテクノロジーで、脳波を翻訳するみたいな形で、脳から直接誰かと話せるようになった。ほかにも「動け」って思ったら、椅子が動いたりね。

それについての研究もあって、ロボットアームを動かしてご飯を食べられるっていう内容だったと思う。「アームを動かしてご飯を持ち上げて口に運んでほしい」と思うだけで、そのアームを5,000マイルも離れたところから動かせるんだよ。フランスにいる人とロサンゼルスにいる人がいたとして、その人たちがロサンゼルスからフランスのアームを動かすとしたら、それってテレキネシスって呼んでもいいんじゃない?

──確かに。原理はテクノロジーで説明できたとしても、やっていることは超能力や魔法みたいなものですものね。

スティーヴ:もはやテレキネシスは定義可能な科学だよ。テクノロジーって常に何かできない人を助ける場面で使われるけど、人類を進化させるためでもある。テクノロジーで超人類になるとか、創造性や想像力で生活を進化させるためだとか、人類にとって本当にエキサイティングなことを実現するためでもある。

テレキネシスがすごいのは、今ここでそれが現実に起こっているということだよね。かつてのSFの概念が今、現実のものになっているという。そういったブレークスルーを科学者たちが実現するときに、その場に居合わせたいなと思っているんだ僕は。科学者や研究者に会ってみたいし、会話もしてみたい。実はみんなが想像を絶するような研究についていろいろ調べているんだけど、いろんなところと守秘義務を結んでるから、ギズモードさんだけじゃなく他の人にも細かくお伝えできないこともあるんだけどね。

でも、これこそが、僕にとっての情熱なんだよ。アルバムシリーズ『Neon Future』は衛星のビーコンみたいなもので、空に反響する蝙蝠が出す超音波みたいなものなんだ。僕は世界の科学者たちと世界を繋ぐパイプになりたい。音楽を通して科学を語りたいと思っているよ

それが音楽である理由

Video: Netflix Japan/YouTube
スティーヴ・アオキの音楽活動を追ったドキュメンタリーがNetflixで配信されている

──あなたのアウトプットが常に音楽なのはどうしてですか?

スティーヴ:音楽は、自分にとって初恋の人みたいなものだからね。初恋の人は頭から追い出すことはできない。まず何か自己表現をするなら、音楽。心からハッピーになれて、喜びを、幸福を、満足を得られるから。だから、誰もそれを奪うことはできない。これは僕の情熱だからね。

でも、僕は色んなことに興味をもっている。学びたいし探求もしたい。人間は探求をする生き物だ。知の欲求がある。「誰も行ったことがない地なら、行かねば」というのが人間だ。だからこそ人間は世界を極めることができた。人間って好奇心に生かされている生き物なんだ。

──つまり、あなたの未来的なマインドを広める手段が音楽という?

スティーヴ:そうだね、それが僕の手法かな! 誰にでもそれぞれやり方というものがあるよね。画家であっても彫刻家であっても、スタイリストであっても、デザイナーであっても、建築家であっても。みんなDNAをマッピングする方法を探すよね。

たとえばOff-White(オフホワイト)のロゴのでっかい「X」。彼(デザイナーであるヴァージル・アブロー。ルィ・ヴィトンのクリエイティブディレクターも務める)はもともと建築家で、「X」マークは構造物を意味するよね。そのDNAをOff-Whiteのロゴに刷り込んでいるわけで、彼が建築のDNAを持つ証なんだよ。

Off-White(オフホワイト)のロゴをあしらったシャツ

──その「X」が、あなたにとっては音楽であると。

スティーヴ:そう。僕はたぶん音楽を作り続けていくだろう。でも、僕は好奇心旺盛だから、知の探求はやめないと思う。音楽のおかげで、人に何かを伝えることができたし、僕には到底話しかけてくれそうにない人にも語りかけることができた。生物学者のリチャード・ドーキンス(著作『利己的な遺伝子』で有名。「ミーム」という言葉も考案)に会うためにロンドンのオックスフォードにも行ったよ。リチャード・ドーキンスは僕のことを知らなかったけどね。

「信じられる? 人って昔は死んでたんだって!」

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Photo: Victor Nomoto - Metacraft

──今の時代についてどう思っていますか?

スティーヴ:今という時代は、人類の文明においてもっとも興味深い時代なんじゃないかな。人工知能の権威であるレイ・カーツワイルは、面白い時代へどんどん近づいていると言ってたけど、その意見に同意するよ。カーツワイルが言っているようにそんなに指数関数的にではないかもしれないけど、テクノロジーが進もうとしているところへ面白い未来が線形に成長していないのは確かなこと。その成長は絶対に線形じゃない。

70年代のコンピュータの大きさはこの部屋の半分ほどもあって、25万ドルくらいして、大学や研究所、政府機関の建物や大企業しか持てなかったわけだけど、それから30年経って、今やみなスマホを持っている。たったの500ドルで買えるんだよ。みんなが持っていて、昔のコンピュータよりもずーっとパワフルだ。

これからのテクノロジーもそうなっていくんじゃないかな。人類がサイボーグになろうと、ロボットの一部を移植する体になろうと、またはテクノロジーについて議論を進めようと、多くの人に拡張できるものじゃなくちゃならない。テクノロジーはお金持ちの人たちのためだけのものであってはならないんだよ。スケールアップしてみんなが使えるようになれば、それがテクノロジーの成功だよね。そうならないなら、そのテクノロジーは失敗ということになる。イーロン・マスクや、その他のパイオニアは、テクノロジーをスケールアップしてみんなが使えるようにすることを目指している。

レイ・カーツワイルがシンギュラリティに語った有名なTED Talk

──人とテックの関わり方についてはこれから変わりそうですか?

スティーヴ:まず第一に、僕たちはテクノロジーを使って進化しながら、地球のことも考えなくてはならないんだ。まず地球を持続可能にしないといけない。「半AI・半人間」という存在に進化していくために、地球を破壊しないようにね。

だから僕たちは僕たちでありながら、生活する形を変えていかなくてはならない。たとえば、きっと近いうち、人類の目標は食物の産業を変えていくことになると思っている。牛の幹細胞から牛の肉を作り出すことができたらすごくない?

これは想像だけのお話じゃない。僕は今ある企業と対話をしているんだけど、この会社は牛の幹細胞からミートボールを作ることができる。出来上がったものは、実際の肉だよね。でも、このテクノロジーは動物を殺すことがないし、地球を破壊しなくていい

そして第二に、今はテクノロジーによって生かされることができる時代だよね。「意識」を機械にアップロードして、どんな人でもパーソナリティを生きるということができる。そしてそれは将来的に変化していく。これは実質的に、テクノロジーを通して永遠の命を手に入れたということなんじゃないかな。

だから、「信じられる? 人って昔は死んでたんだって!」なんて会話が、僕たちが生きている間に聞こえてくるかもしれない。僕はそれを目指している人たちと共同作業をしたいと思っているんだ。そこに到達したら、もう欲望からは開放される。だって人生の残り30年とかいうことがなくなるから。

──つまり2つの共通点は?

スティーヴ:未来には人の考え方が変化するんだ。たとえば「あと俺の人生の残りは20年だ。自分勝手に生きよう、地球や環境なんか知るもんか。だってもうすぐ自分は死んで、いなくなってしまうんだから!」って思っているとする。でも、永遠に生きられるとしたらどうだろう。「しょうがない。すべてを考慮して、周りにいるすべての人に配慮して、地球のことも考えなくちゃな」って感じに、テクノロジーの進化によって人の考え方がすべて変わってしまう。だってみんなそこに存在し続けるからね。

これが、僕たちはテクノロジーを使って進化しながら、地球のことも考えなくてはならない理由だよ。

スティーヴが思う「日本のコレすごい!」を広めたい

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Photo: Victor Nomoto - Metacraft


…閑話休題。

ご覧の通り、ハンパじゃないです、テックへの熱量が。話を聞いてるうちに、もうスティーヴがフューチャリストとしてテックを語るチャンネルでも作ったほうが良いのではって思ってきました。音楽を生業としつつも研究者たちと交流があるのも、すごいミクスチャー。

さて、スティーヴ・アオキが日本にやってきたのはある目的のためです。なにやら2020年に日本国内でアーティストをプロデュースするとのこと。今まで話したようなエッジーなマインドをもつスティーヴですから、相当に濃いメンバー、プロジェクトになるのは間違いなさそう。

ここからは、日本でのプロデュース、これからのプロジェクトについて伺います。

──2020年に、日本でアーティストをプロデュースすると聞きました。

スティーヴ:そうだね。いま僕が手がけているもっともエキサイティングで新しいコンセプト、そしてプロジェクトだよ。日本にいるのはそのためなんだよね。もちろん、ショーをするために来ているってのもあるんだけど、僕は過去15年かけて日本全国をツアーで回って、いろんなところでプレイしてきた。そして、僕が心から愛している日本の文化のそれぞれ異なる面をつなげるときが、ついに来たんだ

このプロジェクトは、音楽家やアーティストや歌手のプロデュースじゃない。日本の文化や個人を突き詰めたものだね。それこそ、アニメのキャラやファッションデザイナーであっても、コンセプトに当てはまるならどんな人でも、メンバーに加えたい。1+1+1+1が25になるような、ダイナミックな僕の愛する日本の文化の多様性をショーケースしたいんだ。これは本当に僕にとってエキサイティングなプロジェクトだよ。

──これからプロデュースする人のなかには、海外で知られている個人やグループも居ると思います。一方で「日本の音楽シーン」の枠組みで海外でヒットするためには何が必要だと思いますか?

スティーヴ:僕なりにうまく説明しようとするなら「プレゼンテーションすること」かな。僕は好きなものはみんなと共有したい、そういう人間だ。だから音楽なんかやっているんだよ。好きなバンドがあったら「これ聞いたほうがいいよ」ってみんなに言って回る。

そういう意味では、日本には愛すべき側面がたくさんあるんだ。それらの細々とした愛すべきものをひとつにまとめてパッケージ化して、世界に見せてあげたい。僕の情熱を表現したい。世界にはそれに共感してくれる人たちがいるし、共感してくれない人たちもいるかもしれない。でも、どのようにしてその人たちに届けるか、海外でヒットさせるにはこれに尽きるんだ。


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Photo: Victor Nomoto - Metacraft

──今回のインタビューを通して感じたのは、あなたはシェアしたい欲求が強いわけですね。

スティーヴ:ときどき僕に「日本に行くんだけど、なにか情報ちょうだいよ」って言ってくる人がいるんだ。すると僕はオススメをたくさん書いてあげるんだよ。「これは絶対にやるべき、これも絶対に見るべき」ってね。「これもやったほうがいい」とか。

反対に、今でも日本を訪れるとき、どこでご飯食べるか悩んだら、僕は絶対に藤原ヒロシに聞く。この前もヒロシとご飯食べたんだけどね、「ここで食べたほうがいいよ、ここに行ったほうがいいよ」って、惜しげもなく教えてくれるんだよ。だから僕はいつもその文化に精通した人に聞くことにしている。「これについて教えてよ、これについて知りたいんだけど」って。

つまり、ある世界を広めるためには、その世界についてをどう表現するかに尽きると思うんだ。たくさんの人が日本のことを知っているけど、実はそんなによくは知らない。日本にもローカルな音楽シーンがあることは知っているけど、それについて深く知らない。だから他の文化と同じように、それを世界中のみんなに教えてあげたいんだよ。それを好きになってくれる人たちがいる、好きでない人たちもいるかもしれない。大切なのは、僕が愛する日本の文化のすべての側面を共有したい、ということだ。

今のところ、これは僕のメインプロジェクトと言っていい。これから日本で過ごす時間がもっと増えると思うよ。

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Photo: Victor Nomoto - Metacraft

…という感じだそうで。つまりは、シェア欲の高いスティーヴ目線でピックした日本の面白いカルチャーを世界に発信していくプロジェクトのようです。

話を聞いた限りの僕の印象だと、音楽だけでなくたとえばライゾマティクスのようなビジュアルで表現するチームや、JUN INAGAWAのようなアニメとストリートを横断するイラストレーターなども、今回のプロジェクトには当てはまるように感じました。インタビューのときにスティーヴが着ていた服も東映アニメ大集合なグラフィティでしたし(Slumpykevっぽい?)、村上隆さんとかも好きみたいですし。

好奇心旺盛で、ともすればフューチャリストとしても魅力的なスティーヴ・アオキ。プロジェクトの具体的な部分(人選や時期、プロダクトなど)など、まだ決まっていないことも多いので、これからも彼の日本での動向は追っていこうと思います。テクノロジー愛についてもまた聞いてみたいですし!

最後に、スティーヴがどんなメディアやブログをフォローしてるのかをこっそり教えてもらいました。

スティーヴ:ブログね、オッケー。オススメできるものを選んでみるね。

・MIT Media Lab|https://www.media.mit.edu/

・New Scientist|https://www.newscientist.com/

・ScienceAlert|https://www.sciencealert.com/

・Scientific American|https://www.scientificamerican.com/

・Ars Technica|https://arstechnica.com/

・The Verge|https://www.theverge.com/

・Gizmodo|https://gizmodo.com/

・VentureBeat|https://venturebeat.com/

・ExtremeTech|https://www.extremetech.com/

おお、米Gizmodoも見てるとは、テクノロジーだけでなくガジェットもお好きということ? これはますます我々に近い感じがしますね。

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