最新アウトドア向けフィットネスウォッチの腕前は...?
Wear OS搭載スマートウォッチの歴史を辿ってみると、けっして浅いものではないことがわかります。ただ、だからといってWear OSが頼りがいのあるものかといえばそうでもなく...。Qualcomm(クアルコム)のSnapdragon Wear 3100は、2100に比べ改善されたことにはまちがいありません。でも、アップデートを数年待った甲斐があったとは思えないのが正直なところ。
そんななか、カシオの広報担当者が自信ありげにみせてくれたのが「Casio Pro Trek WSD-F21HRRD」でした。Wear OS向けカシオ独自のプロセッサを設計・採用したとのこと。HuaweiがWatch GTに独自のプロセッサを搭載していますが、カシオではすべてのパーツを自社製にするという戦略的選択をとったのだとか。これによりWear OSが抱える課題は解決されるのでしょうか...? 米GizmodoのVictoria Songがレビューしています。
Casio Pro Trek WSD-F21HRRD

これは何:Wear OS動作のフィットネスウォッチ
いくら:5万6000円(税抜)
好きなところ:スピーディーで正確。GPSマップ付き!(Wear OSのわりに)バッテリー寿命が長い。
好きじゃないところ:フィットネス感たっぷり。デカい。ゴツい。
起動して画面をスワイプすると、動作がスピーディーな印象を受けました。Snapdragon Wear 3100チップ搭載のMisfit Vapor Xを起動して比較してみると、その違いはわずかながらもカシオのほうがアプリの読み込みが速く、いろいろなウィジェットをスワイプしてみても画面が途切れるようなことはありませんでした(3100搭載の時計ではたまに起きることがあります)。
もっと驚いたのはバッテリー寿命。通常の使用方法で、1度の充電につき1日半(たまにそれ以上)持ちました。運動中でもバッテリー消費に負担がかかっている様子はなく、1時間使っても約8%減った程度。3100搭載の時計では20時間も持てばラッキーなほうだと思っていましたが、カシオの場合はたとえ夜間に充電を忘れても朝のランニングで快適に使うことができそうです(ちっぽけな違いですが、充電を忘れがちな私にとってはありがたい)。
製品名からはわかりづらいですが「Casio Pro Trek WSD-F21HRRD」は、その頑丈なデザインが示すようにアウトドア向きのフィットネスウォッチです。サイズは約61.7 × 57.7mmで、厚みは16.8mm。素敵なディナーに着けて行きたいかといえば、正直そうではないかも。そもそも、日常的なシーンでの着用を想定してつくられたタイプではなさそうですからね。見た目も着用感もガーミンっぽい気がします。
また、カシオのPro TrekはGPSマップ付きで現在地表示も可能です。これはWear OS搭載時計にはなかった機能なので、シンプルにクールだと思います。

完璧かと思ったけど…、GPSがうまく動かない
運動管理には、内蔵GPS、マップ、コンパス、高度計、気圧計、心拍数計測が利用できるカシオのネイティブアプリがあります。Google Fitが好きじゃないという人には役立つかもしれませんが、アクティビティ追跡用、コンパス用、"モーメント設定"用、標高200mごとのリマインダー通知用、"ポイントナビゲーション"、ルート案内用など...ちょっと数が多すぎる感じは否めません。もう少しまとめることはできなかったのかしらと思ういっぽうで、Wear OSには適したアプローチのようにも考えられます。
こうした気が利きすぎな機能はもう完璧で...と書きたかったのですが、実際に使ってみるとGPSがうまく動作しない問題に直面しました。カシオのネイティブアクティビティアプリを使おうとしたところ、デバイスを空に掲げるよう促されました。寒空のもと指示に従うこと10分、何度も接続できないと表示されるので、内蔵GPSなしで2.14マイル走りました。記録では2.2マイルと出ていたので、GPSなしにしてはなかなか正確に計測できているなぁという印象。
さらにGoogle Fit、スマホ、Series 5を使ってもう一度ランニングしてみることにしました。4.6マイルの距離を走ったところ、今度は4.68マイルと記録されました。Apple Watch、スマホの結果と比べてちょっぴり過剰記録されていました。若干の差ですけどね。心拍数計測は、ランニング中同時に着用したApple Watch Series 5と比べても正確なのがわかりました。
ただ気になったのは、Wear OSの更新が厄介であること。自動更新を有効にしたところ、一部はダウンロードされなかったり、途中で中断されたり。すべてにアクセスするためのメニューは不必要に埋もれた状態で、検索するのは結構大変な作業のように感じました。

Wear OSならではの課題を抱えている
結局のところ、このPro Trekはどんなユーザーにぴったりなのでしょうか。税抜き5万6000円という価格感、そして見た目や機能セットからも、カジュアルなスマートウォッチが欲しい人向けではないことがわかります。
Polar(ポラール)やGarmin(ガーミン)など、よりハイエンドな時計と比べても、Wear OSであるがゆえの課題に直面しているような印象があります。その違いはプラットフォームや独自のコンパニオンアプリからも明らかでしょう。特に結果重視のアスリートが必要とするメトリクスを出せるかどうかにおいても差がつきます。Pro Trekには非常に多彩なセンサーと高度な機能がありますが、Wear OSでなければ買うのに...と考える人は少なくないかもしれません。
「Casio Pro Trek WSD-F21HRRD」をレビューすると決めたとき、Wear OSが抱える問題をカシオ独自のプロセッサが解決できるのか興味があったのですが、その答えは「なんとなく」かもしれません。バッテリー寿命は長くなりました。これはフィットネスウォッチ、特にアウトドア向けにとって重要なポイントです。画面スワイプやアプリの読み込みといった動作が速いことも加点ポイント。ただ、それだけでもう十分...ともいえません。
Wear OSが抱える課題は、チップを交換したりよいアプリをつくったりすることで簡単に修正できるものではなく、プラットフォーム全体に組み込まれているのだとがわかります。GoogleがFitbitを買収したことから将来的な期待を抱くことはできるかもしれませんが...。このカシオの時計に関しては、最初に思い描いたものとは違うイメージを持ちました。本当、カシオには問題ないんですけどね。
まとめ
・大きなアウトドア向きフィットネスウォッチ。コンパス、高度計、気圧計、GPS内蔵、心拍数計測つき。
・バッテリー寿命は標準的なWear OSと比べて長め。
・GPSマップ、計測機能がなかなか正確。
・Wear OSであるがゆえ、メトリクスを確認するのにほかのフィットネスウォッチのほうが良いプラットフォームかも...と思える部分はある。
・やっぱりWear OSが惜しい...。