バッサバッサと切って、ほぼ残りかす…
モーションスムージング機能はOFFにして映画館の映像のまま楽しもうね!と呼びかけて映画ファンの心を鷲づかみにしたトム・クルーズが、なぜか新作『トップガン マーヴェリック』では超ワイド映像の片鱗もない縦長カットのPV映像をツイし、「言ってることが違うやんけ!」と言われています。
トム・クルーズは去年、『ミッション:インポッシブル 』のクリストファー・マッカリー監督と一緒にモーションスムージング機能を警告する映像を流して一躍有名になりました。最近のHDTVにはフレーム間の映像を補ってスムーズ感を増すモーションスムージング機能が標準装備されているのですけど、「監督が意図する映像と違うので、リモコンでOFFにしてから観ようね」と呼びかけ、「さすが、トム・クルーズ。表現者の気持ちがわかるんだね」とみんな首の骨が折れるほど首を縦に振ったんです。
I’m taking a quick break from filming to tell you the best way to watch Mission: Impossible Fallout (or any movie you love) at home. pic.twitter.com/oW2eTm1IUA
— Tom Cruise (@TomCruise) December 4, 2018
このツイートの2日後には、ONとOFFを切り換えるごとにトム・クルーズ様がリアクトするファン制作映像が出て、こちらもだいぶバズりました。ほんと今見てもよくできてる。感心するわ。
@chrismcquarrie Not even Ethan can stand this kind of torture pic.twitter.com/Kd0alTpwYh
— Gus 'Goose' Ronald (@goosemangus) December 6, 2018
まあ、スムージング処理をかけると、スポーツ中継は盛り盛りの迫力映像になるので、TVメーカーさんが「せっかくできるのにもったいない」と気を回して、ONの標準設定で出荷する気持ちはよくわかるんですけどね。ただ、 映画やTVでこれをやられると、よくあるアメリカの昼メロみたいになって映画監督のこめかみがプルプル震えて体によくないみたいなんです。1993年の安っぽいスタジオセットのドラマじゃないんだからOFFにしようぜと訴えるトム・クルーズ様を見て、ネットでわざわざ設定方法を検索してOFFにした映画ファンは相当数いるものと思われます。
ああ、それなのに。映画館では今のワイド標準規格の2.39:1のアスペクト比(IMDbのデータ)の新作が…
Twitter版プロモ映像では、なんと縦長の2:3に加工されちゃってるんですよ!
Good morning, aviators. Watch the NEW trailer for #TopGun: Maverick starring @TomCruise - In theatres June 26, 2020. pic.twitter.com/pIVM99lcSC
— Top Gun (@TopGunMovie) December 16, 2019
こんなウルトラワイドが…

こんなん、なってるの! 泣く!

「Snapchatとインスタは縦長じゃないと通らないので、そこから流用したんじゃない?」とGizmodo編集部のSNSエディターのEmily Lipsteinさんとかは言ってましたけど、Snapchatやインスタみたいなショート映像じゃなくて全編カットだよ?と指摘したら、確かにおかしいねと言ってました。Twitterなら2.39:1で全然問題ないんだそうですよ?

広告サイドが、単に縦で見るスマホ世代に気を回したのかもしれませんけどね。SNS広告マーケティング会社のBufferが行ったミニ調査では、縦のほうが横の16:9映像より30~35%視聴率が上がることがわかっていて、去年はYouTubeもバーティカル表示に対応しましたし、今年はもっとバーティカル化が進んで、Samsungなんて縦に切りかえられるTVまで出しています。キヤノンも縦撮り標準モード装備のカメラを発売。ハリウッドが大金投じて来春本格ローンチに向けて準備中の短編映像専門のストリーミングサービスQuibiも、縦モードには最初から切りかえられる仕様になる予定です。
みんなスマホを横に構えることが、めっきりなくなってますからね。撮るときも、観るときも。かったるいと感じるのに合わせて、映像もこうなっちゃった。モバイル規格に合わせて制作側の意図が無視されるという意味では、モーションスムージングとそんなに変わらないなって思います。翼をごっそり削って、超ワイドが超バーティカルに修正されちゃうんだから。さすがの制作サイドの味方、トム・クルーズも時代には抗えない?