科学者がレゴを絶対零度近くまで冷やした理由:量子コンピュータのため

  • 22,479

  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
科学者がレゴを絶対零度近くまで冷やした理由:量子コンピュータのため
Image: Lancaster University

市場のものより熱伝導率が低く、安上がりな素材だったんです。

科学者たちが、レゴのブロックを絶対零度近くまで冷やす実験をしています。その理由は、いつの日かレゴのような素材を量子コンピュータの材料にできれば、という希望からなのだそうです。

安価で効果的な代替品になるかも?

たとえば、とても低い温度で操作を行なう量子コンピュータなどの技術では、ゆっくりと伝熱する物体が有用な構成部品となります。ほかで製造される工業用プラスチックでも同じ効果が得られますが、大量に必要になると高価になってしまいます。

そこでイギリスのランカスター大学の研究者たちは、レゴ・ブロックがこうした高価な材料に代わる、安価で効果的な代替品になるのでは? と考えました。そこで彼らはブロックを4段積み重ねて、希釈冷凍機に入れました。この装置は、ふたつのヘリウム同位体を混合する熱吸収プロセスを利用して、超低温を生成するものです(同位体は同じ陽子の数と、異なる数の中性子から成る原子)。

実験方法

彼らは、4段積みブロックの底面を放射性同位体が混合する冷却室に取り付け、ブロックの上面には小さなヒーターと温度計を置きました。SCIENTIFIC REPORTSに掲載された論文によると、この実験ではブロックは真空の宇宙よりも低温の70ミリ~1.8ケルビンの温度環境に晒されたのだそうです。

ちなみにケルビンの値がゼロだと、それは物質が熱を持たない温度で、摂氏−273.15度または華氏-459.67度と同じことになります。

191227_lego2
Image: SCIENTIFIC REPORTS

ブロック頂上部分を加熱しても、下段のブロックの温度に目立った変化はなかった、とも報告されています。そして重ねたブロックの熱特性を計算したのち、研究者らは「こうした非常に低い温度でも、レゴは効果的な断熱材である」と結論付けました。またこのレゴは、市場に出回っている高価なプラスチックよりも良好な性能を見せた、と書かれています。

そのメカニズムは?

研究者たちは、レゴ・ブロックの低い熱伝導率は、ブロックが挟み込む構造と、材料であるアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンのABS樹脂が持つ熱伝導性を併せたことから生じる、と仮定しました。

挟み込みは、ブロック同士をカチっと合体させることにより、ブロック間の物理的な接触を最小限に抑える空間が形成されるので、熱の移動が遅くなるのです。

量子コンピュータは超低温じゃないと動作しない

量子コンピューティングと呼ばれる新たなコンピュータ技術はまだ生まれたばかりですが、これだけ注目されているのには理由があります。それは、潜在的な問題を通常のコンピュータよりも速く解決できる可能性があるからなんです。

ですがIBM、Google、Rigettiなどが開発している量子コンピュータは、どれもが極端な低温の中でしか動作しないのです。デバイスの構成部品や環境から出る余計な熱は、コンピュータに利点を与える量子の動きを壊してしまう可能性があります。

超低温で耐えられる素材は他にも

レゴのような一風変わった素材が量子コンピュータに利用されるのは、これが初めてではありません。昨年は、デンタルフロスが耐熱性に優れているため、量子実験でケーブル類を縛る話題をお届けしたことがありました。

しかし研究者たちは、量子コンピュータの構造にレゴを組み込むということは考えていません。その代わり、レゴのような真空/ABS複合素材は、将来の超低温技術のための有用な構造部品になるかも? という考えています。

ABS樹脂に将来性を見出す

ABS樹脂はすでに3Dプリンタで人気の素材であり、他の工業用プラスチックよりもはるかに安上がりです。それを踏まえると、将来のデバイスは特定の技術のために、ABSで特別に作った部品を組み込む可能性があります。

近い将来、レゴ製の量子コンピュータが活躍していたらおもしろいかも。

Source: SCIENTIFIC REPORTS

    あわせて読みたい

    powered by