時間の流れが早く感じたり、遅く感じたりするのはなぜ? 専門家に聞いてみた

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  • author Daniel Kolitz - Gizmodo US
  • [原文]
  • Rina Fukazu
時間の流れが早く感じたり、遅く感じたりするのはなぜ? 専門家に聞いてみた
Illustration: Elena Scotti (Photos: Shutterstock)

歳月人を待たず。

今年もアッという間でした。つい昨日だって、あれ、1日24時間経たずに日付変わったよね? って聞きたくなるほど秒で過ぎていったような...。さすが師走です。

一方で、時間の流れがゆっくりに感じることもありますよね。たとえば、誰かを待っているとき。あるいは、週末が楽しみな週の月曜日〜木曜日も...。

今回のGiz Asksのテーマは、わたしたちはなぜ時間の流れが早く感じたり、遅く感じたりするのか。大人になったらもう時間の流れ方は早まるばかりかと思っていましたが、専門家の意見を聞いてみたところ、ちょっとした対策法もあるようです。

Aaron Sackett

セント・トーマス大学 マーケティング助教。意思決定などに関する研究に従事。

わたしたちは感覚で直接的に時間を知覚することができません。目で光を検知して、鼻や舌で物理的なものの存在を感じることはできますが、時間の経過を知るための感覚システムはありません。その代わりに、脳が間接的に時間を推測しようとします。

「いま」を考える場合、時間の認識に影響を与える最大の要因は意識です。時間の経過について気にすればするほど、遅く感じる傾向があります。時間の経過を気にせずにいるとき(おそらく近くで起きているおもしろそうなことや妄想中など)は、あっという間に時が過ぎたような感覚になります。

「楽しいときこそあっという間」といいますが、本当は「考えごとをしていると、あっという間に時は過ぎる」と言えるでしょう。プレゼンの前や、議論が白熱したときなど、まったく楽しくないときでも早く時間が過ぎるように感じます。

一方、過去の出来事を振り返るとき、時間の認識に影響を与える最大の要因は記憶です。一般的に、ある期間の出来事を数多く思い出せるほど、その期間が長く感じられます。一年前の出来事について考えるとき、それが少し前に感じるか、かなり前に感じられるかは、当時といまのあいだでどれだけの「もの/こと」を思い出せるかに大きく依存します。

昨年起きたひとつの出来事のみを思い出す場合、それほど前のことには感じないかもしれません。ところがひとつの出来事を思い出して、それ以降に起きたほかの多くの出来事も振り返ると、ずっと昔のことのように感じることもあります(たとえば転職後に引っ越し、新しい恋人ができて、新しい言語の勉強を始めたなど)。

濃い一日の終わり(仕事で忙しかった日やアクティビティが詰まったバケーションなど)もあっという間で、その日の朝のことすら遠い昔に感じることがあります。時間を常に気にすることがないため、一日が短く感じて時間の経過が早かったように感じます。多くの出来事への記憶から、長い一日であったようにも感じさせます。

Philip Gable

アラバマ大学心理学・実験心理学助教。関心領域、記憶・時間の知覚に関する研究に従事。

アインシュタインは、私たちの時間の経験は主観的なものだと考えました。ジェットコースターでの最初の急降下のほか、車が制御不能になったときなどには、時間がゆっくり流れているように感じるかもしれません。一方で、楽しい時間を過ごしているときは「光陰矢の如し」ですよね。こうした状況で、時間の流れ方を左右するのは感情的な経験です。でも、感情だけが唯一の原因なのでしょうか?

これには、モチベーションや行動の推進力となるものが作用しています。私たちは通常、デザートのように楽しそうなものとは距離を縮め、脅威など不快なものからは距離を置きたいと考えます。ところが怒ったときには、意地の悪い人などネガティブなものに近づこうとすることもあります。

このように距離を縮めたり離したりするモチベーションとなるシステムが、時間への感覚を変化させます。近づこうとするときは時間が早く、離れようとするときは時間が遅く感じる傾向があります。

離れるモチベーションが働いている間に時間がゆっくり経過する感覚は、潜在的に有害な状況からより早く逃げることを可能にし、対照的に近づこうとするモチベーションは、時間が早く経過していると感じることで、食べ物、お金、復讐などより長い時間を費やすことになります。

Simon Grondin

ラヴァル大学(ケベック)心理学教授。The Perception of Time—Your Questions Answered著者。

時間の知覚には、さまざまな方法でアプローチできます。たしかに、時間は生活のあらゆる側面を決定することから、うまく時間を知覚できることは重要です。

ラジオの途中で沈黙があったら、わずかな間が起きたことに気づき、何か(話)があるべきだと感じるでしょう。わたしたちはおそらく、時間の経過における一時的な異常を察知する準備が常にできている状況です。いつもの道で、赤信号で停止してから青に変わるまでわずかに時間がかかると、何かがおかしいとすぐに感じることでしょう。

こうした際、時間を計る必要はありません。体内時計のようなシステムが働いて、遅いことに気がつきます。急いでいるときは特に、遅いことへの印象を強く受けるでしょう。

心理学ではこうした時計、すなわちパルスを発するペースメーカーがあると仮定し、パルスの蓄積によって時間の経験、時間間隔が短いあるいは長いという印象を決定します。覚醒に影響を与える出来事(たとえば、喜び恐怖などの感情を引き起こすもの)は、時間の知覚を乱す可能性があります。

時間が早く過ぎる場面はほかにもあります。重要なのは、意識です。時間に注意を払うと、時間が早く過ぎることはありません。ただ、充実した時間を過ごせば時間の経過には気づかないでしょう。

時間はまた、あらゆる人たちにとって重要です。たとえばADHDの人にとって待つことは難しく、将来の結果を読み取るのが難しい場合もあります(temporal myopia=時間の近視眼の一種)。不安を抱える人は、ほかの人と比べて将来に対して考え込み、うつ病の人は過去に縛られる傾向があります。

さらに大きなスケールで考えると、わたしたちは大人になると時間が早く流れる感覚を抱きます。もちろん「短いまたは長い」ではなく「速いまたは遅い」といった話です。忙しい時期を過ごすと、週の終わりになって、初めに計画・予想したほど多くのことをできなかったという印象につながることがあります。こうした印象を繰り返し経験すると、子どもの頃やることが少なかったときと比べて時間が早く過ぎるように感じることがあります。こうした感覚は、ある出来事がかなり前にのものだったと気づいたときの衝撃ともつながります。

8歳のとき、10年前を振り返ることができません。しかし年をとると、10年前に起きたのか、8年前に起きたのか曖昧になることがあります。それはまた、20年前に起きていた可能性だってあります。たとえば9.11は8年前でも10年前でもなく、18年前の出来事です。

Adrian Bejan

デューク大学機械工学教授。最近では、年を取るにつれて時間が短く感じるのはなぜかに関する研究に従事。

時間の経過は、年をとる人にのみ関係します。若者にとってこの問題はないようなものです。

わたしの仕事は物理学で、このテーマにおける物理学は非常にシンプルなものです。私たちの目は画像を記録することができますが、連続的に記録するわけではなく、スナップショットのようなものを取っています。

個別の画像は、電気信号の流れで網膜から脳に移動します。この移動はスピードがあり、リンク(網膜と脳の間のリンク)によって促進されます。年をとり体が成長するにつれて、こうしたリンクの長さや網膜と脳の間の距離は増加します。さらに年齢を重ねて体が劣化すると、今度は信号の速度が低下します。こうした劣化は、目を含む体内のすべての筋肉に影響を与えるため、「カメラ」はある意味で錆びて動くようになり、記録数は日々減少します。高齢者が行き急いでいるように見えるのはこのためです。

しかし、このプロセスを変更するためにできることがあります。 1つは、記録する価値のある画像を目で体験することです。ルーチンを避けてさまざまなことを行ない、機械的な行動をしないようにするのがいいでしょう。また、身体のカメラを保護するため物理的に自分の世話をすることも大事です。

Benjamin DevlinS. Aryana YousefzadehWarren H. Meck

デューク大学心理学・神経科学。

内部状態の自発的・非自発的な変化が、100分の1ミリ秒〜1時間の範囲でタイミングと時間の知覚に強い影響を与えます。これはまた神経生物学的、心理的、および環境的要因によって変化することがあります。

レストランで食べ物が運ばれるのを待つ空腹の人を例に見てみましょう。お腹が空いている(生物学心理学の両方に変化が起きている)ほど、食べ物が到着するのが永遠のように感じるでしょう。逆に、気持ちが満たされた状態にあり、夕食の席でエキサイティングな会話を楽しんでいる場合、食べ物が運ばれる時間に5分の違いがあっても気付かないこともあります。

恐怖など内部状態の一時的な変化は、時間の知覚に影響を与える可能性があります。生命を脅かす危険な状況では、脳がアドレナリンの急増を解放することで適応し、それによって体内時計が高速化して外の世界が遅く見えるようになることがわかっています。

時間知覚に関与する脳内のニューロンは、これらの内部状態のさまざまな変化によって修正されます。また、それらは一部のヒト神経変性疾患(ハンチントン病やパーキンソン病)で損傷した大脳基底核の時間回路を構成します。こうした病状に苦しむ患者は、数秒から数分の範囲で正確に時間を計る能力の混乱を経験します。損傷した部分は、細胞からの神経伝達物質ドーパミンの放出に影響を与える治療によって部分的に回復させることができます。このことは、ドーパミンレベルと時間知覚との直接的な神経生物学的関係性を示唆しています。またドーパミンは、経験の楽しさによって内部時計の速度を上げたり下げたりすることで、時間の知覚に影響を与える信号でもあります。

さらに、時間の知覚と関心記憶といったプロセスが本質的に関係していることもあります。たとえば作業に集中しているとき、時間を気にしなくていいのであれば、タスクのほうに関心を注ぐため時間の経過に気がつかないことがあります。反対に、作業がいつ終わるかについて常に考えていれば、時間の流れは長く感じます。

時間的文脈によっても体内時計の速度は変わります。月曜日よりも金曜日のほうがあっという間に感じるのはそのためでしょう。「週の始まり」として月曜日に長めのTo Doリストを用意すると、1日が長く感じることがあります。しかし金曜日には、面倒なことを後回しにして週末へのスタートを切ろうとする意欲に駆り立てられるような気がするものです。

記憶に関連したプロセスは、エピソード記憶に重要な領域である海馬と嗅内野に特徴づけられています。エピソード記憶内の短い時間枠に多くの情報が保存されている場合、時間の知覚が遅いと考えられます。要するに生理学的、薬理学的、および認知的要因は100分の1ミリ秒〜数時間の範囲で時間を知覚する方法に影響を与え、制御しようとしまいと絶えず常に動的に変化しています。


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