放射線レベルの高さより、人間がいない場所を好んだ動物たち。福島の避難指示区域で闊歩してました

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  • author Brian Kahn - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
放射線レベルの高さより、人間がいない場所を好んだ動物たち。福島の避難指示区域で闊歩してました
Image: University of Georgia

動物から、放射性物質よりも嫌われてるのが人間…。

チェルノブイリ原発事故後に、立ち入り禁止区域で野生生物が繁殖したことはよく知られています。最近では、Netflixの『Our Planet』でその様子が放映されていました。

今回発表された研究結果によると、福島の立ち入り区域でも同じようなことが起こっているとのこと。人間がどれだけ地球をめちゃくちゃにしても、人間さえいなくなれば自然環境は元通りになる方法を見つけるようです。

2011年に起こった大きな地震による大津波で福島第一原発が炉心溶融を起こし、日本政府は放射性物質に汚染された地域(ロサンゼルスほどの広さに匹敵)の人々を避難させました。住民が避難した地域は、滞在可能な区域、一部で立ち入りが制限される区域、高濃度汚染のために立ち入りが禁止される区域に分けられました。

福島に設置した定点カメラには動物の闊歩する姿が

この区分は原発事故後の人々の生活再建に役立てられていますが、研究者にとっては、野生生物が放射性物質や人間の生活圏の変化にどういう反応をするのかを見る、またとない機会になりました。原発事故後の研究のほとんどは、放射性物質が動物の個体や小さなグループに与える影響や、細胞レベルでの影響に関するものでしたが、今回、Frontiers in Ecology and the Environmentに掲載された研究では、3つの区域に120台の定点カメラを設置して野生生物の繁殖状況を調べました。

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Image: University of Georgia


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Image: University of Georgia


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Image: University of Georgia


120台のうち14台のカメラは故障してしまったそうなのですが、残りの106台によって、60日間で26万7000枚の撮影に成功。そこには、福島の田園地域を闊歩する動物たちの姿がありました。映画『ジュラシック・パーク』でジェフ・ゴールドブラム演じる学者のセリフのように、命が生き残る方法をみつける様子が捉えられていたという感じ。いくつかの場所で撮影されたタイムラプス動画には、イノシシの赤ちゃんが母乳を飲んだり、サルが歩き回ったり、ウサギをくわえたキツネが通り過ぎたりする姿が映っています。

Video: University of Georgia/YouTube

すべての区域で最も多く撮影されたのは野生のイノシシでした。立ち入り禁止区域内で撮影されたイノシシは制限区域の2倍、人が滞在可能な区域の3倍以上にのぼりました。滞在可能な区域で最も撮影されたタヌキとニホンカモシカを除くほとんどの動物は、立ち入り禁止区域で最も多くの個体が確認されたそうです。

動物は人間よりも放射性物質との共存を選んだ?

「ある程度の野生生物が、たとえ放射線レベルが高くても人間がいない場所を好んだ結果、避難区域での繁殖につながったようです」と、研究に携わった福島大学環境放射能研究所のトーマス・ヒントン客員教授はEartherに語っています。

「人間と共存するくらいなら放射能と暮らす」ともとれる動物の行動は人類にとって痛烈ですが、まあそういうことみたいです。

真面目な話をすると、この結果は、野生生物は人間がいなくなった場所でより繁殖できることを示しています。また、これまでの研究結果では、放射性物質による生物のDNA損傷生殖機能低下が報告されていますが、今回の研究で集められたデータでは、生物種の個体数レベルでの異常はみられなかったみたいです。

森林火災と乱開発の原因になっているアマゾンから、気候危機が激化させた森林火災によって多くの動物を殺しているオーストラリアに至るまで、人間は世界中で動物に大きな困難をもたらしています。その結果、わたしたちは6度目の大量絶滅期の入口に立っていて、人間活動によって100万にも及ぶ生物種が絶滅のリスクに直面しています。壊滅的な絶滅によって、人間の生活がより厳しい状況になるのは避けられないでしょう。

野生生物保護の鍵は、人間がいない場所を提供できるかどうか

野生生物に住みやすい場所を提供すべきなのは明らかですよね。再野生化はその第一歩です。福島の再野生化は意図的なものではありませんが、比較的短期間でこれだけ回復したのですから、きっちり計画を立てればさらに良い結果になるかもしれません。とにかく足並みを揃えて、迅速に行動する必要があります。

ヒントン氏はこう述べています。

「人類は自然界のガンです。かつてないほどの広範囲におよぶ人間の存在が、たくさんの野生生物に目に見える影響を与えています。しかしながら、自然界には回復力があります。もしも人間によるストレスが小さくなれば、多くの野生生物は回復に向かい、生息数を増やしていくのです」

野生動物たちは、本当に怖い存在をよく知っているのかもしれないですね。

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