スマートホームの抱えるトラブルは、進化のための成長痛

  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
  • [原文]
  • scheme_a
スマートホームの抱えるトラブルは、進化のための成長痛
Illustration: Gizmodo

過渡期の技術には、問題がつきもの。

昔は裕福な人だけのものかと思えた家のスマートホーム化も、今やある程度なら割と簡単にできるようになりました。と同時に、ハッキング被害や企業による盗聴(意図したかどうかはともかく)など、さまざまな問題も出てきました。

家の電気なんて手で付ければいいし、エアコンだって家に帰ってちょっと寒いのを我慢すればいいだけじゃん! もうスマートホームはたくさん!と思う方も多いと思いますが、米GizmodoのAndrew Liszewski氏は、もうちょっと辛抱強くなってあげるべきだと考えているようです。


新しい技術が高い信頼性と利便性を手に入れるには、時として10年ほどかかることもあります。コンピュータや携帯電話などはその地点に到達したと言えるでしょうが、対照的にスマートホームは、言ってみれば第二次性徴期を迎え、反抗期で大人を困らせたりする時期なのです。

家を寝床や物置以上のものにするというアイデアは、SF小説家や未来派の人々にとって、何十年にもわたって熱いトピックでした。例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart II』は、帰宅してあなたが玄関に立つと、家があなたを認識してお帰りなさいと出迎え、自動で照明を点け、部屋の気温を自動調節してくれ、さらに好きなテレビ番組をつけてくれる未来を描いてくれました。『スター・トレック』には音声操作のコンピュータが登場し、船長が宇宙船全体を船長席から操作することができます。『宇宙家族ジェットソン』ではロボットや機械が重労働を担ってくれています。スマートホームは恐れるべきものではなく、期待するべきものなのです。

ところが現実には、スマートホームは頼りないし、欠点だらけで、セキュリティも心配です。スマートホームを最初に登場させた会社のひとつがInsteonで、2005年にはすでに家の照明やサーモスタット、モーションセンサー、さらには家電までをも、中央コントロールシステムと繋いで、家主が遠隔で操作、管理、そしてさまざまな家のデバイスの自動化を行なえました。10年前、家族が携帯で家に電話するだけで、帰宅前にサーモスタットを調節したのを見たときはとても面白く、『ジェットソン』で約束された未来がやってきたと思ったものです。

しかし、こういったスマートホームがインターネットへ接続可能になり、スマートフォンアプリやウェブポータルを通じて、世界のどこからでも操作できるようになったことで、大きな問題を抱えるようになりました。2013年、当時Insteonはユーザーに対してパスワードによる保護を義務化せず、しかもポータルをGoogleによるウェブクローリングから守らなかったため、赤の他人の家を遠隔操作できるだけでなく、家の住所や住んでいる子供の名前など、不安になるほどの量の個人情報がのぞけてしまうことを、ForbesのKashmir Hill氏がデモンストレーションして見せました。

やがて、スマートホームシステムやデバイスはセキュリティが義務化され、未来は元どおりになったかと思われましたが、より多くの家がスマートホーム化するにつれ、その後何年も続いたのは、数々のセキュリティ面での懸念やハッキング事件でした。セキュリティ研究家や悪意あるハッカーがスマートホームに侵入する新たな手口を見つけるのに、長くはかかりませんでした。例えば、IoTデバイス同士の通信を行なって、監視するクラウドサーバーにアタックをかけたり、単純にフィッシングによってパスワードを盗み、家をより安全にするはずの技術の、すべてのアクセス権を得てしまう方法です。

スマートホームというアイデア自体に問題があるわけではなく、スマートホームを提供している企業が、堅実な設計とハードウェアのセキュリティより、利便性やいろいろな機能のアップグレードを優先したことが問題なのです。両手いっぱいの荷物を抱えた状態で、音声でドアを開けられるなんて『スター・トレック』みたいですが、それを叶えるために近道を選択すると、逆にもっと問題を作ってしまうのです。

しかしどういうわけか、スマートホームデバイスへの侵入に関して一番の懸念は、セキュリティではなくプライバシー(の欠如)だと考えられています。これはハッカーやセキュリティ研究者たちが、オンラインから監視カメラへアクセスする方法を発見して以来懸念されていましたが、音声操作のスマートアシスタントの登場でより大きな問題になってきました。

Google(グーグル)、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)などの企業は、自分たちのマイク付きスマートスピーカーは発動用の命令コマンドのみを聞いていて、それがあって初めて音声を録音し、クラウドに送信し、音声認識ソフトウェアやアルゴリズムで解析されると、口をそろえて言います。多くの人にとってはその言葉だけで十分信頼に足りたようで、今では多くの家に、彼らのデバイスが設置されています。

しかし、それは完全な真実ではありませんでした。人気のGoogle Home Miniには欠陥があり、ランダムに音声を録音して勝手にGoogleのサーバーにアップロードしていました。さらにAmazonは、Alexaスマートアシスタントが録音したデータを、生身の人間に聞かせていたことが判明しました。これは地域独特のスラングやアクセント、他言語などをサーバが理解できなかったからです。なので、家で起きていることを逐一聞いていたのは、アルゴリズムだけではなかったということです。

しかし、これらの問題はまだいい方です。GoogleはソフトウェアアップデートでHome Miniの問題を解決したし、Amazonは人間のモデレータには絶対にアクセスしたデータの悪用はさせないと約束しました。ところが、Amazonが10億ドルで買収したRingは、最初こそ来訪者を分かりやすくするスマートインターホンを作っていましたが、ユーザーのプライバシーよりも、ディストピアな監視社会を作る方が重要だと方向転換しました。

ハッカーに家のWi-fiパスワードを晒してしまう可能性のあるバグだけでなく、今年の初めにはRingが密かに数百の警察署と提携し、インターホンカメラで録画したデータを警察がアクセスできるようにしていたと判明しました。一応、警察用に同社が作ったポータルを通じて、警察が自分の録画データにアクセスするのを拒否することはできます。しかし、当初は遠隔からでも自宅のドアの前を見られるというだけだったものが、とんでもない(しかもセキュリティには疑問符がつく)監視ツールとなっていたのです。

この時点でスマートホームの夢を諦めるのは簡単です。でも、それはちょっと、若気の至りで道を誤ったティーンエイジャーの人生を諦めるようなものです。スマートホーム革命を推し進めている多くの大企業が行なったことは酷いものですが、より小さい企業には、真剣に技術を推し進め、これらのデバイスが陰鬱な監視社会の一部とならないような未来を描いているものもあります。SF小説家や未来派の人々には、こういった技術がいずれ悪夢のようなディストピアを生むと考える人も少なくありません。しかし、ベッドから起きたらシャワーが既に温まっている、というのを実現した結果が、絶対にそうなるとも思わないのです。

    あわせて読みたい