人類は、仮想的に死者を蘇らせられる術を得ました。でもこの行く先は?
2016年、韓国のJang Ji-sungさんの7歳の娘Nayeonちゃんが、難病で亡くなってしまいました。幼子を失った親の気持ちは察するに余りありますが…その3年後、テレビのドキュメンタリー番組のため、NayeonちゃんがVRになって再現されることになりました。
愛娘と再会する母の様子を、そのトレイラーでご覧ください。
とても幸せな時間でした
Futurismいわく、制作と放送をしたのは文化放送というテレビ局で、このコンテンツの作品名は「I Met You」とのこと。母親はVRゴーグルとトラッカー付きグローブを装着し、グリーン・バックの貼られたスタジオで娘と再会。Jangさんは、この体験について「ここはおそらく本当の楽園なのでしょう。短い間でしたがとても幸せな時間でした」と話しています。
Aju Business Dailyによりますと、このコンテンツには8カ月を費やしたのだそうです。体型の似た女の子をモーション・キャプチャーし、Nayeonちゃんの顔と声を再現したのでした。
こちらが9分半ある長尺映像となっています。
感動の再会ですが、どれだけ触ろうとしても手が空を切る姿がとても切なく感じます。最後に白く光る蝶となってしまった娘を見送るのは、さぞや辛かったことと思われます。
しかしこの先、お母さんがこのコンテンツに依存してしまわないか、少々気がかりです。
デジタルで蘇った人たちの例
年末恒例の『紅白歌合戦』ではAI美空ひばりが出場し、賛否両論が起こりましたよね。倫理的に故人の冒涜と受け取った人は多く、特に同業の音楽家からは批判的というより嫌悪感に近い意見が多い印象を受けました。
また以前には、メタル界の北島三郎ことロニー・ジェイムス・ディオがホログラムで蘇り、ファンたちを魅了しました。ですがこちらは、ファンたちに概ね好評だったんじゃないかと思います。
故人をデジタル・コンテンツ化し始めた現代人
愛して止まない、だけどもうこの世にいない人をデジタル・コンテンツで再現することが可能になってきた今、故人の想いより生者のエゴで復活させられた方は浮かばれないんじゃないか?なんて思います。今回のコンテンツは母親が望んだのでしょうけれども、結局テレビでお茶の間に流れたNayeonちゃんは、ビジネスとして消費されてしまった…という見方もできます。
これからの社会では、死にゆく前に「デジタル化での復活を望みますか? YES/NO」みたいな書類にサインさせられ、映像会社などが死んだ自分の肖像でビジネスをする時代が到来するかもしれません。従来のように動画や写真を編集したものではなく、意図せぬ形で喋らされたり動かれたりするのです。そこに魂はなくとも遺族が少しでも喜んでくれるのなら…と望む人は少なくなさそうですよね。
Source: YouTube (1, 2), Aju Business Daily via Futurism