想像を遥かに凌駕する温暖化の勢いが止まる気配はありません。
光景を思い浮かべてください。気温20度。イカしたGジャンを羽織って、広げたレジャーシートの上でジントニックを飲みながら、ディップをつけた野菜スティックを口に運ぶあなたの髪をくすぐるそよ風。ピクニックにピッタリの場所よね、南極って。
な…南極……だと?
南極半島で20.75度!
いや、マジで南極が快適な気候なんですよ。南極半島の列島部分に位置するシーモア島(Google Mapはこちら)で、日曜日(2月9日)に最高気温が20.75度を記録。こんなことはもちろんはじめて。過去最高だった19.8度をほぼ1度上回ってしまいました。
「多くの観測地で気温は上昇傾向にありますが、こんなの見たことがありません。」と、ブラジル政府の科学者で南極の研究を行なっているCarlos Schaefer氏はガーディアン紙に話しています。
急激に進む南極半島の温暖化
公式な気温として認められるためには、世界気象機関(WMO)による確認が必要なのですが、シーモア島の温暖化傾向を考慮に入れると、20度はどうやら突拍子のない気温ではなさそうです。南極半島のシーモア島周辺は、世界でももっとも速く温暖化が進んでいる地域のひとつ。世界平均気温は産業革命前からだいたい1度上昇していますが、南極半島は過去50年で3度も上昇しているんです。すべて化石燃料産業のおかげです。
2日前には、南極大陸で過去最高となる18.3度を記録したばかり(それまでの最高は2015年の17.5度)。南極半島もそれに続く形になってしまいました。
気温が上昇すると海面上昇が超心配
気温上昇によって、世界最大をほこる南極の眠れる氷が急激にとけています。海に張り出した氷河を下からえぐる温かい水が最大の脅威ではあるものの、気温が上昇すると氷の表面がとけてしまい、上と下からのダブルパンチになるので、さらに心配です。
氷が生活の基盤になっている生物(ペンギンとか)と生態系にとって、氷がとけるのは大問題。陸地の氷がとけて海面が上昇すると大きな影響を受けるわたしたち人間だって例外じゃありません。とても不安定な状況にある西南極の氷床がすべてとけると、海面は約3メートル上昇します。沿岸にある多くの都市(東京とかね)にとっては大打撃です。
西南極だけじゃなく、南極大陸の氷が全部とけると、海面は60メートル上昇してしまいます。すぐにそこまで上昇するわけではないとはいえ、海面が60メートル上昇するとどんなことになるのかを知らなくてもいいように、やっぱり温室効果ガスの排出を止めた方がいいですよね。
気候と気象は別物なので、日平均最高気温に大きくリアクションする必要はあまりないのですが、夏とはいえ南極圏で20度を超えてきたのには正直ちょっとビックリ…。