核戦争は、海洋生物にもよくないらしいよ…

  • author 山田ちとら
核戦争は、海洋生物にもよくないらしいよ…
Photo: Shutterstock

科学の視野はかぎりなく広く、科学者は常に斬新な切り口で世界の諸問題を研究し続けています。

時には「そんなことまで研究しちゃったの?」というトンデモな研究も出てくるわけですが、そういうニッチを埋めるべくイグノーベル賞まで用意されているのですね。

前置きが長くなりましたが、このたび学術誌Geophysical Research Lettersに掲載された米ラトガース大学の研究により、核戦争後に起こる地球規模の寒冷化は海洋生物にも悪影響を及ぼすことがわかったそうです。

それは、そうでしょうけど……。

核戦争という前提が冷静に語られているところが恐いのは、私だけ?

カルシウムが足りない

研究の共著者・ラトガース大学環境科学部のAlan Robock特別教授の説明はこうです。

核戦争後に起こる地球寒冷化にともない、空気中の炭素が海の上層部に溶けこんで海水の化学的な性質を変え、海洋の酸性化を悪化させることがわかった。

海洋の酸性化は、化石燃料をバンバン燃やし続けている現代においても問題となっています。

石油や石炭を燃やすと空気中の二酸化炭素が増えるので、海に溶け込む量も増えます。海に溶けた二酸化炭素は水と反応して炭酸となり、海水のpHを低下させるので、したがって海水中の炭酸イオン量が減るんだそうです。

海中の炭酸イオンの量が減るとなぜ困るのか。それは、生物にとって重要な物質である炭酸カルシウム(炭酸イオンの一種)も減ってしまうから。海洋の酸性化が進むと炭酸カルシウムの量も減るので、貝類やサンゴは自分の体を守るための殻を作りにくくなり、生存率が下がってしまうのですね。

暗い未来

では、もし地球上のどこかで核戦争が勃発したらどうでしょうか。ラトガース大学の研究チームがコンピューターシミュレーションにより描き出したシナリオをたどってみましょう。

核爆発による粉塵はすさまじい勢いで空を覆い、日光をさえぎってしまいます。地球全体が急速に冷え込み、海の上層部においては一時的にpHが上がり、海洋の酸性化に歯止めがかかるかのように思えます。

ただし、これは最初の5年間ぐらいだけの話。長期的な地球寒冷化はさきほどのとおり海の中の炭酸イオン量を減らしてしまうので、核戦争10年後の海ではサンゴや、アサリ・ハマグリ・カキなどの二枚貝、ほか貝殻や骨格を持つ海洋動物が殻や骨格を形成しにくくなり、生存率が下がってしまうそうです。

ポストアポカリプス

おそろしいことに、この研究では地球上のどこで核戦争が起こりそうか、具体的なシナリオもいくつか仮定しています。

ひとつはインド対パキスタンの比較的小規模な核戦争。もうひとつは、アメリカ対ロシアのさらにすさまじい核戦争…!

前出のRobock特別教授によれば、これまでの研究から、核戦争が起こった場合は農産業が壊滅的な被害を受け、食糧危機が訪れることがすでにわかっていたそうです。Robock特別教授は「問題は核戦争を生き延びた人たちが海から食料を得られるかどうか。私たちの研究はこの問題解決にむけて一歩前に踏み出した」と語っていますが、完全にサバイバルモードですね。

なお、今後の研究では海洋の酸性化に加えて海水温度・塩分濃度の変化などのパラメーターも併せて考慮したいとのこと。壊れた海でハマグリを奪い合う日がこないよう、切に願っています。

Source: American Association for the Advancement of Science, Geophysical Research Letters

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