打倒新型コロナウイルス。原子レベルの姿から弱点を探せ

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
打倒新型コロナウイルス。原子レベルの姿から弱点を探せ
Image: Wrapp et al (Science 2020)

強い感染力を持ち、勢いが止まらない新型コロナウイルス

今のところ治療法が確立されておらず、同じRNAウイルスで構造が似ているとされるエイズウイルスやエボラウイルスに効く薬が試験的に使われ始めているそうですが、その効果はまだわからないことのほうが多いようです。

早急に治療薬を見つけたいのは科学者に共通する思いでしょうが、このたび米テキサス大学の研究者が世界に先駆けて新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の構造を原子分解能レベルで解明。スパイクタンパク質とはウイルスが細胞に侵入するために使う糖タンパク質のことで、新型コロナウイルスを封じる治療薬の開発につながると期待されています。

ウイルスの弱点

新型コロナウイルス(正式にはSARS-CoV-2=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は、昨年末に初めて感染が報告されて以来中国で7万5000人に感染し、そのうち少なくとも2,000人の死亡者を出しています。

日本でもクルーズ船内、そして屋形船の利用客からも広がっていった経緯が明かされ、新型コロナウイルスの感染力の強さが浮き彫りになってきていますね…。

なんとか食い止める方法を探すため、中国はいち早く新型コロナウイルスのゲノム解析に着手し、1月30日付で発表。その結果をもとに、今度は米テキサス大の研究者が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を作成・純化することに成功しました。

スパイクタンパク質は、ウイルスにとって感染路を開拓する重要な部分です。スパイクタンパク質が宿主(ウイルスに感染する人)の受容体を探し出して結合することで、ウイルスの侵入が可能になります。ということは、スパイクタンパク質の構造を理解すればウイルスの侵入を防ぐ手がかりになるかもしれないわけで、ウイルスの「弱点」とも言えます。

原子レベルの姿

そこで、テキサス大学オースティン校のDaniel Wrapp教授率いる研究チームは、低温電子顕微鏡法(cryo-EM)を使って新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の姿を原子レベルで明らかにし、学術誌『Science』に2月19日付で発表しました。

低温電子顕微鏡法は2017年のノーベル化学賞受賞に輝いた画期的な手法です。まず被写体を凍結・固定してから電子のシャワーを浴びせて3,000枚以上の2次元イメージを取り出し、それを組み合わせることで3次元イメージを復元します。

Image: Wrapp et al (Science 2020)

低温電子顕微鏡法で比較した新型コロナウイルス vs. SARSコロナウイルスのスパイクタンパク質の姿がこちら。着色してあるのが新型、白色のままなのがSARSだそうです。うぬ、素人目にも、似て…いる……?!

新型コロナウイルスはSARSより手強そう

『Science』に掲載された研究では、このふたつが確かに似ていて、しかもふたつとも揃って宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合することもわかったと報告しています。

新型コロナウイルスのほうがよりアグレッシブにACE2受容体に結合したがる傾向もわかったそうで、まだ仮説ではありますが、これが新型コロナウイルスの感染力の高さのゆえんかもしれないとのこと。

さらに、SARSコロナウイルスのスパイクタンパク質には効き目があった抗体も、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を認識できず、結合できないこともわかりました。

なかなか手強そうな新型コロナウイルスの実態が明らかに…。治療薬の開発はまだ始まったばかりですが、世界中の研究者がお互いの研究を糧に共同して新型コロナウイルスと戦ってくれているんですね。

打倒新型コロナウイルス。そして薬が完成する前に感染しないためには、くれぐれも除菌と手洗いを忘れずに。

Source: Science, Nature, The Lancet

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