失敗すら楽しい。格安マニュアルレンズでカメラを遊び倒そう

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  • author 武者良太
失敗すら楽しい。格安マニュアルレンズでカメラを遊び倒そう

い い の よ 。 ピント外しても。誰も怒らないんだから。

ここ数年のCP+取材時に、記事にはしなかったけど個人的にじっくりチェックしていた機材群がありました。それが中国の光学メーカーのレンズたちです。

その多くはAPS用のマニュアルレンズでコンパクト、そしてなんといっても安い。しかし手にしてみるとずっしり、重い。メタルな鏡胴に収まる前玉は大口径で、スペックを見るとf1.2とかザラにあってなんだこれ明るくてエラい! そりゃ重いはずだよ!

50mmf1.1
ミラーレスボディと組み合わせたらこんな感じ。
Photo: 武者良太

信仰っていっちゃっていいのかな。日本は「フルサイズってサイコー」と大きなセンサーを礼賛する傾向があります。だから、趣味性の強いレンズはフルサイズ用が多い。富士フイルムとペンタックス、そしてシグマ&タムロンは戦略的にAPSサイズのグーな単焦点を多くリリースしていますが、ほかのブランドはAPS=ビギナーの使うものと判断しているのか、ラインアップがいまいち物足りない

そのようなレンズ市場において、APSセンサー搭載ボディ好きのハートを奪いにやってきたのがこれらのメーカーのレンズなのさあ。

スマートフォンを含め、今どきのカメラは誰が操っても失敗が少ない方向へと進化してきました。それはとても素晴らしいことなのだけど、1枚の写真を時間かけて作り込むのもまた撮影の楽しさ。この記事では、ゆっくりカメラと付き合える時間を1本1~3万円でもたらしてくれる格安マニュアルレンズをいくつかご紹介します。

最近スマホでしか写真撮ってないな。という方にこそ、手にしてもらいたい。あとオールドレンズに興味を持っている方にも。

身も心もとろけあえちゃう:Kamlan 50mm f/1.1 II

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対応マウント:キヤノンMマウント、ソニーEマウント、フジXマウント、マイクロフォーサーズ
Photo: 武者良太

フルサイズクラスのボケがほしい...と願ってやまないAPSっ子にお届けしたいのが、こちらの「Kamlan 50mm f/1.1 II」。なんとf1.1でメガ明るい

レンズは明るくなればなるほど(f値が小さくなればなるほど)、使われるレンズは巨大になり、価格は高くなりがち。しかしKamlan 50mm f/1.1 IIのお値段は2万7000円前後! このプライスでフルサイズ85mm f1.4~1.8級の画角&ボケが手に入っちゃうんだぜ。たまんないですなあモウ。

さすがに563gと重いんですけどね。でもX-E3やEOS M200のような軽量ボディと合わせてもハンドリングしやすくてグー。

F11-4
Photo: 武者良太

f1.1の開放で撮ると、ピーキングを使ってもピント位置がわかりづらくてキッツーい。でも背景のボケボケっぷりにノックダウン。生クリームレンズっていいでしょ、コレ。

f11
Photo: 武者良太

極薄ピントは、奥行きある世界でも効果的に機能します。実際の目で見た景色、または脳内に刷り込まれているシチュエーションと比較すると、いちレイヤーしかピンがきていないシーンはCGのようにも見えてくる。

ハイライトの飽和っぷりがぽやぽやな雰囲気を作ってくれるので、とろーり蕩けてる写真がお好みなら狙いの1本ですよ。

オールドレンズの風味たっぷり:7artisans 55mm F1.4

DSC_0295_R
対応マウント:Lマウントアライアンス、キヤノンMマウント、ソニーEマウント、フジXマウント、マイクロフォーサーズ
Photo: 武者良太

雰囲気ある写真が撮りたい。その気持ちからオールドレンズに目を向けている方が増えてきていますが、ちょっとまったあ。逆光に弱いし滲みは多い新品で程度サイコーな1本が、1万6000~7000円でゲットできちゃうからしばしおまちを。「7artisans 55mm F1.4」を見てからご判断を。

開放時の、しかも最短距離でのピントはThe甘々。ソフトフォーカスレンズかっ、てくらいにほよよんしてる。

でも好き。だから好き。バチピンでカリリ、なんて最近はキットレンズでもカバーできる領域じゃないですか。遊びで使うための格安マニュアルレンズなのだから、個性だしてこーぜー

55mm-2_R
Photo: 武者良太

ピント面の甘ったるさに「ほんとにピンきてるんかコレ。壊れてないか」と思ったら絞ってみましょう。コイツの開放のだらけっぷりは尋常じゃないな、と思いつつ、笑えてきます。

55mm-3_R
Photo: 武者良太

ちょっとでも奥にピント合わせると、メガネをクイッと上げる勤勉さんが起きてくるのが、また笑えてくるポイント。35cmまで寄れる天然ボケの近接撮影能力を活かすもよし、40cmくらいにして目覚めたコイツに働いてもらうもよし。

直線を盛大に曲げていくスライダーの使い手KAMLAN 8mm F3.0

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マウント:キヤノンMマウント、ソニーEマウント、フジXマウント
Photo: 武者良太

ちょっと前まで魚眼レンズって高かったのよほんと...。いまはいい時代になりました。この対角線魚眼のMFレンズ「KAMLAN 8mm F3.0」は2万5000円くらいだもん。カジュアルだわ。

焦点距離が短くなるほど被写界深度が深くなるので、魚眼レンズはオートフォーカスなくてもいいと思うんです。マニュアルで置きピンでどかどか撮っていいんじゃないかって。

GoProみたいな画角をミラーレスで撮れちゃう、局地戦専用装備。ど真ん中水平垂直以外の直線は盛大に曲げてくかんね! 気をつけてね!

超広角3_R
Photo: 武者良太

魚眼レンズは夜景撮影などで多用されてきた歴史を持ちますが、広い空間かつ眼前に高いオブジェクトがあるシチュエーションとも相性がいい。主題をど真ん中に据え置く日の丸構図からチャレンジしていくと、楽しさから味わえますよ。

超広角4_R
Photo: 武者良太

最短撮影距離が10cmとこれまた短め。ここまで寄ると、ボケを生かした画作りもオッケー。似た画角はスマホでも撮れる時代となりましたが、立体感においてはコイツの完勝。

絞り多め&フラッシュ炊いて撮ると、異様な生々しさを感じる写真が撮れることも。いろんな撮影スタイルを試したくなるレンズです。

  • 見えないものが見えてくる超々々々マクロ「FREEWALKER 20mm F2 SUPER MACRO 4-4.5:1」

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    対応マウント:キヤノンEF/Mマウント、ソニーA/Eマウント、ニコンFマウント、フジXマウント、ペンタックスKマウント、マイクロフォーサーズ

    普通のマクロレンズは等倍撮影までできるものが主流です。しかし「FREEWALKER 20mm F2 SUPER MACRO 4-4.5:1」の最大倍率は4.5倍! 細部を見通す能力に特化した1本です。

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    Photo: 武者良太

    さて、これは何を撮ったものでしょうか。年輪? 指紋? どちらも違います。

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    Photo: 武者良太

    ダマスカス鋼のナイフです。

    被写体との距離はレンズ面から2cmくらい。ここまで近づけないとピントが合いません。使いづらさNo.1。しかし、顕微鏡のような細部追求力が2万円で手に入るというのは、ちょっとおもしろくありませんか。

    DSC00512_R
    Photo: 武者良太

    こちらは僕らがいつもお世話になっている野口英世 in 千円札さんの目の部分。インクの盛りがわかりますよね。

    日常的にはまったくといって使いみちのないレンズですが、金属・鉱物大好きっこや昆虫大好きっこに使わせると時間を忘れて撮影に熱中しそう。

    以上、マニュアルレンズをざざざざっとご紹介してみました。

    マニュアルはピント合わせが面倒だって? そこがいいんじゃないの! デジカメは何枚だって撮れるんだし、ピント外れたら撮影しなおせばいいじゃない。ピンボケ写真だって楽しいじゃない。

    ふわかわロマンチックなフレア露出にするも、色がねっとりと乗ってくるアンダー露出にするもお気に召すまま。絞りとシャッタースピードを自分でいじれるレンズとのお付き合い。それが面白いんですから。

    趣味追求型アイテムが、大量生産至上主義の現場から生まれてきたとき

    いまから15年くらい前かなあ。中国の市場にて、富裕層が目立って増えてきたと伝えられはじめていました。同時に好事家が求める、ズバ抜けたスペックを持つアイテムが彼の地で大量生産されるようになりました。

    当時、オーディオの世界では真空管アンプが流行ったんですよ。それまでの真空管アンプといったら、ビンテージも新品も数十万円のシロモノがあたりまえ。でも気がついたら数万円で入手できるモデルが増えてきた。日本で買ったら2本で3万円の真空管300Bを用いたアンプが、なんと7~8万円。

    実際に聞いてみたら、これがなかなかにいい。回路は古き時代のままなのに、パーツの精度が高いからかな? 往年の音を彷彿とさせるナローなトーンだけど、スッキリと透明感がある。メタルパーツを多用したケースのエクステリアもいいしさ。音もデザインもモダンに仕上がったコイツはどこの製品だ、と調べてみたら、中国のメーカーでした。

    レンズも、「この価格でこのクオリティか!」という同じ道をたどってきている気がして。明るさ、もしくは特殊な焦点距離というスペックを重視。最初期は暴れん坊過ぎて使いづらいものが多かったのですが、気がつけばヘタなオールドレンズを超えるパフォーマンスを見せるモデルも出てきました。

    効率を重視しながら果敢にトライ&エラーを繰り返す彼らの意識は、日本の光学メーカーがドイツに追いつけ追い越そうとしていた戦前・戦中時代を彷彿とさせます。そこから生まれるレンズの数々。万人にはおすすめできないのですが、スキモノの方には手にしていただきたいんですよね。

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