え?こんなに?
地域差もあるかもしれませんが、新型コロナウイルス(COVID-19)で「あれ?」となったチャートを2つ集めてみました。
お腹を壊して入院する人が48%もいる
まず上の円グラフ。これは武漢COVID-19医療対策専門家グループが1月18日~2月28日の市内3つの病院の入院患者204人(平均50代半ば)を調べてまとめた入院当時の主な症状です。
日本厚生労働省のCOVID-19診療の手引きには「発熱、呼吸器症状、頭痛、倦怠感」が主な症状で、「下痢や嘔吐などの消化器症状の頻度は多くの報告で10%未満」とありますけど、ここでは呼吸系と消化系の両方の症状が出る人が45%もいて、消化系の症状しか出ない人も3%もいるんです!
具体的にどんな症状なの?
具体的には食欲不振(84%弱)、下痢(29%)が多く、あとは嘔吐(0.8%)、腹痛(0.4%)の人もたま~にいる感じです。悪化度で比べると、消化系症状の人のほうが重症化しやすく、完治して退院する確率は、消化系症状のない人が60%であるのに対し、34%止まりでした。論文は、 米国消化器病学発行「American Journal of Gastroenterology」に掲載中。
ハリウッドセレブご用達の名門シーダーズ・サイナイ病院で研究所長を務める同誌編集長のBrennan Spiegel医師は、食欲不振をカウントしているせいかも…と指摘し、「食欲不振をカウントしなければ、消化系の症状が出る人は全感染者の30%程度だ」と語っています。ポイントを連続ツイートでまとめてくれてますよ。
Breaking #COVID19 Data – Please Share (1/10): On behalf of @AmCollegeGastro, our editorial team at #AmJGastro just released a study from Wuhan, China reporting 48.5% of patients presented to hospital with a digestive symptom as their chief complaint. Coronavirus is #NotJustCough.
— Brennan Spiegel, MD, MSHS (@BrennanSpiegel) March 18, 2020
1)呼吸系より消化系症状のほうが早く出る
2)でもまさかコロナとは本人も医師も思わないため、入院が遅れる
3)消化系だけで呼吸系の症状が出ない感染患者も稀にいる(3%)
4)消化系症状が出る患者は重症化しやすく、致死率も高め
これらの知見をもとに武漢のグループは「呼吸系症状だけ診ても肺以外の初期症状は検出できないし、呼吸が苦しくなるまで診断が遅れることもある」と警告。Spiegel医師も次のように語っています。
「濃厚接触者診断時のチェックリストに下痢を加えれば、早期特定、早期治療、早期隔離で感染を最小限に食い止められるかもしれない。無論、非常によくある症状なので、 下痢、吐き気、嘔吐、食欲減退、腹痛を訴える人すべてを検査なんて無理だし、すべきではないが、濃厚接触の疑いや確証があって、尚且つ発熱と消化系症状を併発しているなら、それも検査の目安になるだろう」
なるほどねえ。
米国感染第1号も嘔吐・下痢の初期症状
言われてみれば、アメリカの入院患者第1号も最初は吐き気と下痢…。武漢から帰って自宅観察中に陽性判定が出て入院したんですが、そのときにはまだ嘔吐と空ぜきが2日続いているぐらいしか症状はなかったんでした。
NEJMによると、入院2日目に下痢になって、便と咽頭の両方からCOVID-19のウイルスが検出されます。まだ血清に異常はなし。3日目の胸部レントゲンも異常なしでした。入院5日目にやっと左肺に異常が確認されたときには、もう酸素飽和度が90%を切って全身に十分な酸素が行き渡らない状態に悪化してて、経鼻カテーテルで酸素吸入。感染が両肺に広がって抗生物質のバンコマイシンとセフェピム投与。7日目にエボラ出血熱・MERS治療薬のレムデシビル投与。それやこれやでなんとか回復できたのだけど、渡航歴がなかったらコロナなんて疑わないだろうし結構危ういところでした。
気管からウイルスが検出されなくなってからも、便から検出される人が23%。トイレが感染源になるかどうかは不明ですが、トイレの後にあまり手を洗わない国(2015年ギャロップ調べ)と感染地域は偶然重なったりもしていますので(イタリアは反ワクチン与党の影響も大きそうだけど)、石鹸で手洗いせねば!という意識になりますね。
ICUと病床が若者で埋まる!

2枚目の表はこちら。「コロナで危篤になるのはシニアと病気の人だけ」と聞いて気が大きくなるせいか、欧米では65歳未満のピンピンした身体で病院に運ばれる若者と中年が半分で、「65歳以上のシニアの命綱の病床と呼吸器を奪っている」と各国の保健当局に非難されてるんですね…。
・アメリカの入院患者の38%は55歳未満(2月12日~3月18日のCDCによる集計)
・パリの集中治療室の患者300~400人の半分は65歳未満(フランス保健省)
・オランダの集中治療室の患者の半分は50歳未満(救急救命士セミナー資料)
気をつけていてもかかる人はかかるし、全員が全員、パーティーで遊び惚けてるわけじゃないとは思いますが、中国の統計とあまりに違い過ぎて、とても同じ病気の話をしてるとは思えなかったりします。
世界最速で感染拡大のニューオーリンズ
たとえば、140万人が集まったマルディグラのお祭り。パンデミックどこ吹く風で開催を強行したニューオーリンズの街では、パレードから2週間後に感染第1号が現れ、ずっと感染ゼロだったルイジアナ州は一気に1,172人に爆増して34人が死亡、州内全域が外出禁止になって、ホテル従業員16,000人と関連サービス49,000人が職を失いました。感染は全米に飛び火しています。たった1回のパレードを中止にしなかったばかりに丸1か月、経済活動停止、です。
人工呼吸器が追いつかない
NYのER( 救急治療室 )医師が現場の模様をYouTubeで報告しています。「腹痛の人も、交通事故の人も、若い元気な人もコロナで人工呼吸器の補充が追いつかない。遺体が冷凍トレーラーで運び出されている」と語っています。
Propublicaではパンク状態のICU勤務医が、血の混じったピンクの分泌液を出しながら酸素を求めて手足をバタバタさせる若者の悲惨な姿を報告しています。酸欠でマヒの後遺症が残る人もいるんだとか…。
一寸先は闇ですので、これからのお花見シーズン、充分気を引き締めてまいりましょう。
追記[2020/03/27]NYからの動画を追記しました。
Source: American College of Gastroenterology, CDC