乗客なしの飛行機「ゴーストフライト」問題に対して、世界が動き出している

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乗客なしの飛行機「ゴーストフライト」問題に対して、世界が動き出している
Photo: Getty

不条理を阻止せよ。

新型コロナウイルス(COVID-19)によって世界中であらゆるビジネスが影響を受けるなか、ヨーロッパでは制度的なしがらみによって乗客なしの飛行機(ゴーストフライトを運行せざるを得ない状況に追い込まれていました。産業にも環境にも無駄としか言いようのない問題ですが、ついに新たな対策に向けて各地域が動き出しました。

そもそも何が起きていたのか

ヨーロッパの航空会社は、主要な空港からの到着・出発スケジュールを入札によって確定させます。なかには、数千万ドルという莫大な費用をかけて落札することもあるのだとか。しかも、こうして確保した発着枠は利用しなければ失うというルールつき…。すなわち、発着枠を維持するために、航空会社はフライトスケジュールの遵守をほぼ義務付けられている状態になります。

利用客がいないというのに運行スケジュールを守らないといけないなんて、誰がどう見てもおかしな話です。ところが、新型コロナウイルスが世界的なパンデミックとして拡大するなか、こうしたルールの見直しは追いつかず、いくら空席が目立とうと、あるいは乗客がゼロであろうと、スケジュール通り飛ばなければ…という状況に追い込まれていました。

こうした不条理に巻き込まれるのは、産業だけじゃありません。飛行機は1マイルの飛行あたり5ガロンのジェット燃料を消費し、大量の炭素や温室効果ガスを放出します。ゴーストフライトを放置しておけば何千ガロン、あるいはそれ以上の温室効果ガスを無駄に排出することになります…。

ついに、規制緩和へ

こうした問題を見過ごすわけにはいかないと思ったのは、ごく一部の人たちではなかったようです。関係当局が動き出しています。

先日、EUではドイツ経産省イギリス運輸国務長官からの呼びかけに続いてルールを停止することを発表しました。「停止」というのは、あくまで新型コロナウイルスの影響が続くなかでの一時的な措置であるため。

これにより(特に小規模な)航空会社が抱えていたプレッシャーが軽減されることが見込まれます。EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は記者団に対し、産業だけでなく環境にとっても好ましい決断であるとの見方を示しています。

またアメリカでは連邦航空局が先週、アメリカの空港での制度(発着枠の使用要件)を一時的に放棄すると発表。ラテンアメリカ・カリビアン航空輸送協会(ALTA)は、国際的な規則緩和呼びかけています。

今後、議論すべきこと

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、飛行機の利用を含めて不要不急な外出制限を求める地域が世界中で増えています。米国運輸省によると、航空会社がフライトをキャンセルした場合、チケット予約者は全額払い戻しを受ける資格があるとのこと。

フライトの需要が劇的に減少するなか、アメリカのLCCであるジェットブルー航空では9.11以来の利用者減を経験しているといいます。おそらく世界中で、いずれ産業全体への経済支援に関する議論が本格化しようとしていますが、これに関連して米GizmodoライターのDharna Noorはまたべつの“不条理"に関しても声をあげています。

彼女が指摘するのは、トランプ政権では医療よりも石油会社を優先することを検討されていたり、ニューヨークでは刑務所に服役している人たちが時給100円以下で除菌ジェル(ハンドサニタイザー)を製造していたり...といった社会問題。これに加えて、航空産業の救済策は億万長者(経営者)の保護ではなく「従業員の賃金支払いを保証すべき」と主張しています。

ゴーストフライトを含め、今後も見過ごせない不条理な問題に対して、ひとつずつ確実に向き合っていく必要がありそうです。

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