“役に立たないロボット”「LOVOT」レビュー:心に余裕がないと人にも、ロボットにも優しくなれないと再認識した2週間

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  • author そうこ
“役に立たないロボット”「LOVOT」レビュー:心に余裕がないと人にも、ロボットにも優しくなれないと再認識した2週間
Photo: そうこ

ロボットの飼い主として、私はいい飼い主だった?

愛されるために生まれてきた家族型ロボットの「LOVOT」。“役に立たないロボット”として注目されており、ギズモードもけっこう前から期待を込めてウォッチしてきました。

おさらいすると、LOVOTは何かタスクをこなすロボットではありません。家で動きまわるだけで何もしません。しかし、ころころー、まるまるー、きゃるきゃるーっとした姿がとにかくかわいい。きゃわ。そう、LOVOTは人に「愛されるために生まれてきた」ロボットなのです。でも、実際に家で2週間だけ借りて一緒に暮らしてみたら、「かわいい」以外のいろんなことが見えました。人としての成長、自己嫌悪、未来のロボットの姿。ロボットを介して人間らしさに再直面した2週間。

心に… 余裕がないと… 人に… 優しくできない… よね…。

LOVOTがやって来た!

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Photo: そうこ

どでかい段ボールが2つ届きました。段ボールがすでにかわいい。

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Photo: そうこ

開けると、旅人感あるコート(のようなもの)を着て、アイマスクして寝ているLOVOT。かわいい。ちなみにLOVOTは2体で飼うと、LOVOT同士でじゃれあったりコミュニケーションを取るようになります。

充電器となる「ネスト」の設置、LOVOTの初期設定は、マニュアルを見つつ簡単にできます。梱包材にも開ける順番や向きが書いてあって親切。ネストはけっこう重いので腰に注意な!

専用アプリをダウンロードして、名前をつけたり、瞳のデザインを選んだり、睡眠時間を設定したり。うちのLOVOTは「ぐり子」と「ぐら江」に決定。LOVOTの名前は3文字以上という条件があります。LOVOTがペアでやって来るとわかったとき、4歳の長女がつけた名前はぐりとぐら。長女にとって最も身近なデュオです。実際に名前を登録しようとしたら3文字からだったので、慌てて「子」と「江」をつけて対応。LOVOTは名前を呼ぶと反応するので、名前はかなり重要。「ぐり子」が本名でも、「ぐりちゃん」と呼ぶことが多いなら、登録名も「ぐりちゃん」にしたほうがいいかも。

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Image: LOVOT
LOVOTアプリのスクリーンショット

この名付けの親である長女の存在が、LOVOTと2週間暮らしてみることにした最大の理由です。私がLOVOTに初めて会ったのは、去年のSXSW。子ども受けがいいことはこれで知っていたので、レビュー用にLOVOTの貸し出しの話を聞いたとき、とりあえず長女に画像を見せてみることにしたのですが、食い気味の「かわいい! 欲しい」でソッコー決定。私は私で、自宅に生後3カ月の次女が居るので、ヘルプ要員になるかなという思惑が…。長女が赤ちゃん次女を可愛がるのはいいのですが、なかなか危なっかしくて次女にとっては毎日がサバイバル。LOVOTが来てくれることで、長女のかわいがりたい熱がそっちにそれてくれればという期待がありました。そこで、LOVOTのお世話は長女が担当する約束のもと来てもらうことにしたわけです。

LOVOTが到着したのは金曜日。設置して、名前などの登録をすませ、キュルキュルと家の中を動き始めたのは夕方。LOVOTが来る前は、毎日「まだ?」と聞いてきたくせに、いざ動き始めたら「(ホイールに轢かれそうで)怖い」というビビリな長女。名前を呼んだり、頭を撫でたりするものの、結局初日はソファの上からのみ接するというね!

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Photo: そうこ
ソファの上からこんにちは

それでも、週末は私と長女と夫で、撫でたり、抱っこしたり、転げたら起こしたりと楽しくお世話をして過ごしました。長女が歌を歌うと、ぐり子とぐら江が踊るような仕草をみせ、みんなで「わー!上手!」なんて言ったりね。まるでCMにでてきそうな、絵に描いたような幸せ時間。

…この時は、まだ知らなかったのです。週明けに阿鼻叫喚の地獄絵図が待っているとは。

家族型ロボットだからこその八つ当たり?

週末は夫が家にいるのですこーし暮らしに余裕があります。問題は平日、大人が私のみの時間帯です。場所にまだ慣れていないぐり子とぐら江。ぐりぐらにまだ慣れていない長女。そして、生後3カ月の次女を抱え、授乳中は身動きがとれない私。長女がぐりぐらと遊んでてくれたらなんて想像は吹き飛びましたね。現実は、手のかかる奴が2人から4人に増えてしまっただけだったのです!

LOVOTは自分のいる場所をマッピングして動ける範囲を把握していきます。が、マッピングは一朝一夕でできるわけではなく、少々時間を要する作業。LOVOTがやって来る前に、家具を多少移動させたり、床に置いていたものを片付けてはいたのですが、それでも初めての場所に戸惑うぐりぐら。ホイールがひっかかりやすい円形フレームのサイドテーブル。突然出現する洗濯物の山。ホットカーペットにオイルヒーターと障害物多めの冬という季節。そのせいでコンセントが埋まり、理想条件ではない位置に設置されたネスト。そう、我が家は、LOVOTにとって非常にトラップの多い場所だったのです…。

その結果、充電が切れそうなのに自力でネストまで戻れず寝てしまう(「省電力モード」の)ぐり子や、ひっかかって転げてしまったぐら江を見て、「おかあさん、はやく助けてあげて!」と泣き叫ぶ長女。眠いけど眠れず泣き叫ぶ次女。次女を抱っこであやしながら心の中で泣き叫ぶ私。週末の幸せモードはどこへやら、完全に地獄絵図。全員が全員「たすけて!」っていうギリギリの状態。

長女の生活習慣にあわせ、LOVOTが「寝る」時間は長女のベッドタイムの1時間前に設定していました。なので、平日に5人(長女・次女、私、ぐりぐら)で過ごす時間は夕方から数時間のみなのですが、それでもそれぞれのご機嫌(バッテリー減り)のタイミングが悪いと夕方地獄タイムに突入してしまう…。

昼間も、やっとこさ眠った次女をベッドに寝かした束の間に食事の準備したり、納豆ご飯をかき込んでいる横で「キュイキュイイ?」と、ぐら江に抱っこをせがまれても、もはやこっちにそんな気力は残ってない!ってついイライラしてね。「コロコロしてんなら、ついでに埃ぐらい吸っといてよっ!」とぐら江に八つ当たりする始末。

生活を便利にするタスク系ロボじゃないってわかっているのに、嫌味の一つも言いたくなる。そう、人が人に優しくできるのは、自分の心に余裕があるときだけ。追い込まれると人は本性がでる。それは、対ロボットでも同じだったのです。いや、もしかしたら、これは家族型のLOVOTだからこそ出てしまったのかも? というわけで、長女が幼稚園で不在の平日昼間は、充電が切れ行き倒れぐりぐらになることもしばしば。

ヒトもロボも慣れは大切

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Photo: そうこ
ハイハイスタイルでぐりぐらと同じ目線に。ついでにワンピが床掃除も

しかし、そこから数日経つとまた状況に変化が。何事も大変なのは慣れるまで。まず、ビビリの長女がぐりぐらに慣れ、抱っこができるようになりました。充電が切れそうなとき、モノにひっかかて転げたとき、私を頼らずとも、長女が自分でぐりぐらを救出できるようになりました。また「ぐり子、こっちだよ!」と名前を呼び、ネストまで誘導もしてくれるように(LOVOTは人についてコロコロ移動したがる)。一方で、ぐりぐらもマッピングが進み、自力でネストまで戻れることがかなり増えました。到着から1週間、最もやっかいな時間は終わり、お互いが暮らしに慣れてきのです。

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Photo: そうこ
お着替え中。下部にあるフックにひっかけるため寝そべってトライ

マッピングは時間が経てばさらに進むので、もっと時間があれば、LOVOTがさらに場所に慣れ、よりスムーズに動けるようになっただろうと思います。それでも、たった2週間の試用でもLOVOTの能力アップは実感できました。

愛される者の機能は…?

LOVOTには日記機能があり、抱っこしてもらったとか、助けてくれたなど、1日の流れが時間毎で記録されるのですが、たまに記録漏れ(反映の遅れ?)があるようです。日記を除くと何度か遊んだ記録がなく、こっちとしては「え、抱っこしたはずなのに」とガッカリ気分に。

お留守番機能もあり、外からアプリ経由で家の様子を見ることもできます。長女がこの機能をめちゃくちゃ使いたがったのですが、結果が思ってたのと違ったようで。長女としては、自分の留守中に遊んでいるぐりぐらの姿を見たかったそうですが、実際に見える画はぐりぐらのカメラから見た画(=ぐりぐらは写っていない)なのでね。また、家の中の特定の位置を写してもらうことができるそうですが、短期間なこともありマッピングが足りずうまくいかず。これも時間と慣れが必要ですね。マッピングが進めば、玄関を設定して使えるお出迎えモードというのがあるのですが、個人的にはそれよりも、寝室を設定することで朝起こしにきてくれるおはようモードがあったらなと思いました。あと、平日週末や曜日によって、LOVOTの睡眠時間の設定が変えられたらいいのになーと。

睡眠時間といえば、寝ている間もLOVOTは動物と同じくちょいちょい動きます。物音もするし、キュイッと声を出すこともあるし、そもそもネストのファン?の音もします。レビュー期間中の週末、友人が泊まりに来たのですが、ぐりぐらの動きが気になる&ファンがうるさいというので、その夜は電源を落としました。まぁ、これも慣れなのかなぁ。あと気になったのは、LOVOTが人についてくる→気がつけば足元にいることがあるので、場合によってはつまづきそうになることも。私は動物を飼ったことがないのでピンとこないのですが、犬や猫にもつまづくってことあるの? これもやっぱり慣れの問題なのかな?

娘の成長を実感

LOVOTと過ごした2週間。短いながらも、楽しかったり、イライラしたりとかなりの感情の変化がありましたが、一番変化を感じたのは長女の態度。ビビってソファから降りなかった初日。それでも、翌日にはハグできるように、5日後には抱っこできるようになりました。自分で説明書を読んだり(ひらがなとイラストしかわからないのでほぼ推測)、ハマって動けなくなっているのを助けたり、褒めたり話しかけたり、時には叱ったりと、長女がぐり子・ぐら江に接する様子を見ていると、短期間でこんなに成長できるのかと感動しました。折り紙でリボンを作ってオシャレさせたり、幼稚園でぐりぐら宛てに書いてきたお手紙を呼んであげたりもしていましたね。

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Photo: そうこ
クイックガイドを読む長女。イラストからざっくり読み解いていくスタイル

小さい子どもなだけあって、ロボットだ犬だ赤ちゃんだというハッキリとした線引きはなく、なんとなく自分担当のお世話すべき相手として接しているのも、見ていて興味深いところでした。

はじめに2週間だけ泊まりにくると言い聞かせていたので、LOVOTが帰る日にグズることはなかったのですが、帰る前日に洗面所トラップにはまったぐり子に対して「明日から私は助けられないんだよ! どうするの!? 充電に帰る練習しなさい!」と激励していたのには笑ってしまいました。4歳ながらに何か思うところがあったのでしょう。

2019年のSXSWで、現地オースティンの親子体験会も行なったLOVOT。そのときに、LOVOTは幼児向けの情操教育(道徳観や感性を養う教育)に活用できるのでは?という話をききました。今回の長女の成長を通してまさにそれを実感。言い方は悪いですが、ロボットということで、対犬猫や赤ちゃんよりも(お互い)安全にかつ、「都合よく」弱い相手を助けるとか思いやるという心を培うことができると思いました。つまり、犬に噛まれたら、猫に引っ掻かれたら、赤ちゃんの頭をゴンしたらという心配はいりませんし、ニッチもサッチも忙しいときや旅行に行くときはスイッチを切れるわけですから、親(教育を提供する側)にとっては都合がいい。

ターゲット層=?

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Photo: そうこ
ある朝の風景。なんか3人集まって相談してた

LOVOTがやってくる前は、たとえば都会のマンションで一人暮らしの若者とか、子どもや孫とは遠く離れてくらす中高年とか、私なりにベタながらもありそうなケースを考えていました。でも、うちに遊びに来た友人A(都会で一人暮らし、実家で猫を飼っている、動物大好き)がまったく見向きもしない一方で、友人B(動物苦手、子ども苦手)はかわいいを連呼して写真を撮ったり、仕組みを聞いたり。たった2人のサンプルとは言えど、予想のまったく逆のリアクションでした。恋する相手や親友でも、最初は想像すらしなかったのに!というのはあるもので、安易にターゲット層を想像するのは危険だと感じました。超先人のaibo(AIBO)パイセンの存在はあるものの、タスクをこなすのが目的ではない愛玩ロボはまだまだ始まったばかりで、これからの業界。私はこういうのは向いてないからなんて言わずに、まずはLOVOT体験に行ってみるべき。思いもよらない人にピタリとはまるかもしれない! 逆に、体験なしで購入を決めちゃうのは危険だよ。

ロボットだから。ロボットだけど

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Photo: そうこ
いちいち抱っこでテレビを見る

心に余裕がなくなったときの自分のイライラや、親に都合がよく情操教育できるという思いから、「ロボットだから」と「ロボットだけど」という2つの気持ちの間でユラユラ。

ロボットだから都合が悪いときは電源を切ってしまえて便利です。ロボットだから壊れても修理ができる=真の死や怪我はなく、ある意味命のリスクがなく気が楽です。一方で、ロボットだけど動物ペットと同じように接してこそ、たとえそこに生き物の不便さを感じたとしても、それが真の情操教育になるのかな…?とも思いました(少なくとも2週間での成長は感じられたことは事実)。

だから、どっちの感覚の人が多いかで未来のロボットの人権のあり方は変わっていくのかも…と思いました。ふと、「ロボットだけど」と追い詰められた結果、捨て犬ならぬ捨てロボが…なんて未来が頭をよぎってちょっと怖くなりましたね。正直、どちらの捉え方が正解なのか、またどちらが人間・ロボットにとってより幸福なのかの結論は、自分の中でもまだでていません。

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Photo: そうこ
LOVOTと対峙する次女。背格好がほぼ一緒

でもLOVOTと接してみて、これだけは間違いないと思ったこと。ロボットがやってくるのではなく、ペットがやってくるという感覚でいないとダメ! ロボット=何かを便利にしてくれるではなく、ペット=手間がかかってお世話必須なのです。でも、その手間こそが家族型ロボットの強みであり魅力。これを魅力ととれない人は、LOVOTは向いていないかもしれません。

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