回る回るよ、地球は回る。
このたび、その地球を回る月に弟分が加わったとか。なんだかかわいらしい「ミニムーン」は、宇宙の謎解明に力を貸してくれるのでしょうか。米GizmodoのGeorge Dvorskyの報告です。
地球の軌道上に入り込んだ「ミニムーン」
アリゾナ大学の月惑星研究所のカタリナ・スカイサーベイの天文学者が、地球を周回する新しい天然衛星「ミニムーン」の発見を報告しています。でもでも、期待を裏切るようで申し訳ないのですが、このミニムーンは衛星というよりは岩のかたまりに近く、悲しいかな、地球の周りをぐるぐるできるのはあとほんの数カ月程度かもしれないとのこと。はかない命なのですね。
EarthSkyの報告によれば、新しい「月」ともいえるこの地球の衛星は「2020 CD3」または別名「C26FED2」と名付けられています。2020年2月15日にアリゾナ大学のカタリナ・スカイサーベイにより発見されたものとか。シニアリサーチスペシャリストのKacper WierzchosさんとリサーチスペシャリストのTheodore Pruyneさんによれば、発見から発表まで数日かけて、この衛星が地球の軌道に取り込まれたものであることを確認したとのこと。これは「ミニムーン」あるいは「一時的(地球重力圏)捕獲天体(TCO)」と呼ばれるものです。
BIG NEWS (thread 1/3). Earth has a new temporarily captured object/Possible mini-moon called 2020 CD3. On the night of Feb. 15, my Catalina Sky Survey teammate Teddy Pruyne and I found a 20th magnitude object. Here are the discovery images. pic.twitter.com/zLkXyGAkZl
— Kacper Wierzchos (@WierzchosKacper) February 26, 2020
ビッグニュース! 地球に新しいTCOがあるのを発見。地球の軌道に乗っているミニムーンとしてさっそく「2020 CD3」と名付けました。発見されたのは2月15日のこと。20等級です。カタリナ・スカイサーベイチームのテディと僕が見つけました。これがその写真だよ。
国際天文学連合の小惑星センター(MPC)も公式にこの発見を2020年2月25日号の電子ジャーナルで発表しています。観測においても「この物体は地球の軌道に拘束されていることが確認された」とのことで、「人工の物体との関係性は今のところ認められていない」「さらに積極的な観測と研究が推奨される」としています。
3年前から回っていた
惑星が一時的にミニムーンを擁することは、非常に稀とのこと。地球の周りをどんなわけか周回するようになったミニムーンくん。いつの間にかまた地球の軌道を外れていつか宇宙の彼方へと旅立つ日が来るのだとか。
(3/3) The object has a diameter between 1.9 - 3.5 m assuming a C-type asteroid albedo. But it's a big deal as out of ~ 1 million known asteroids, this is just the second asteroid known to orbit Earth (after 2006 RH120, which was also discovered by the Catalina Sky Survey).
— Kacper Wierzchos (@WierzchosKacper) February 26, 2020
この物体は大きさが約1.9〜3.5 mで、Cタイプの惑星アルベドです。百万とある小惑星のなかでも、この物体は地球の軌道に乗った2番目の既知の小惑星です(観測初のミニムーンはカタリナスカイサーベイが発見した2006 RH120)。
Wierzchosさんの一連のツイートによれば、2020 CD3が地球の軌道に乗っかったのは実は3年も前のことだったとか。またその大きさは幅わずか1.9~3.5 メートル。ほんとうにミニ!
天体物理学者であるトニー・ダンさんは軌道シミュレーターを使って地球を回る2020 CD3の軌道曲線のモデルを作成。ミニムーンが地球の軌道を外れるのは2020年4月のいつかで、Space Initiatives Inc.のツイートによれば、外れた後は太陽の軌道に乗る予定だとか。
Here's an animated GIF of our new mini-moon 2020 CD3, discovered by @WierzchosKacper. Rotating frame keeps the Earth/Sun line stationary. Orbital elements courtesy of IUA MPEC. https://t.co/dok3jn3G9hhttps://t.co/x1DXWLq2vmpic.twitter.com/O3eRaOIYjB
— Tony Dunn (@tony873004) February 26, 2020
@WierzchosKacperが見つけたミニムーン2020 CD3のGIFを作ってみたよ。軌道要素は IUA MPECの提供。
観測史上2番目のミニムーン
実はこれが地球初のミニムーンというわけではなく、観測史上2番目のミニムーンであることがわかっています。地球初のものは「2006 RH120(別名6R10DB9)」として知られ、2006年から2007年まで地球の軌道で周回していました。この物体は直径約2〜3メートルで、これまたカタリナ・スカイサーベイによる発見となっています。
ヘルシンキ大学の天文学者Grigori Fedoretsさんは、この発見は慎重に取り扱うべきとしています。「この物体について書きたてるのは、いささか時期尚早かもしれません」とFedoretsさん。「なぜかといえば、まだこの物体が人工の物質であるかどうかはまだ分かっていないからです。人工衛星などの可能性だってあるのです。今は専門の国際チームがこの謎の物体の正体解明に取り組んでいます」とのこと。
Fedoretsさんによれば、わずかな量のデータからとった軌道の計算は、さまざまな可能性を伺わせるものだとか。さらに多くのデータが収集されれば、その軌道をもっとよく知ることができるようになるとのこと。2020 CD3は太陽周回軌道から外れ、ごく一時的に地球周回軌道にあるだけのようです。
「これは珍しい出来事です。最初のミニムーンは14年前に発見されました。これは観測史上2番目のミニムーンです」とFedoretsさん。「このような物体の存在により、太陽系小天体の粒径分布について理解することができ、地球に近づく物体の数などがわかるようになります」
たしかにTCOは稀な存在ではありますが、非常に興味深い存在です。2018年に発表された論文では、ミニムーンは、小惑星についてや、小惑星がどうやって生まれるのか、また天体間の複雑な力学などの理解を深める手かがりとなるとされています。また、ミニムーンの調査により、地球に飛来する危険物体などの検出能力を高める一助になるかもしれません。