今年はモスクワに冬が訪れなかった

  • author Brian Kahn - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
今年はモスクワに冬が訪れなかった
Image: Shutterstock

モスクワの冬が寒くないなんて、テキサスの夏が暑くないようなものです。

ロシアといえばめちゃくちゃ寒いイメージがありますよね。わたし(Miyajima)は映画『レッドブル』でシュワちゃんがかぶっていた防寒帽や、『ロッキー4』で雪山の斜面を駆け上がるスタローンの姿が浮かんできます。

そんな寒いはずのロシアも、地球温暖化にかかるとひとたまりもないみたいですよ。

モスクワの冬の平均気温が平年を6.3度上回る観測史上最高を記録

モスクワは観測史上初めて冬(12月から2月)の平均気温が氷点下(0度)を上回り、平年よりも6.3度も高い記録的な暖かさになりました。この信じられない暖かさはモスクワだけにとどまらず、ユーラシア大陸のそこかしこで異常に暖かくて雪の少ない冬になったようです。

なんだかもう「観測史上もっとも暑い・暖かい」という言葉をしょっちゅう見聞きする時代になりましたが、今回のモスクワの記録は超ビックリするレベルです。Meteo Franceの気象学者で気温データに詳しいEtienne Kapikian氏によると、これまで最も暖かかったのは1961年で、平均気温は平年を3度上回っていたそうです。

つまり、今回はその記録よりも3度以上高かったことになります。記録が残っている140年の中で断トツだったのはいうまでもありません。

雪は完全にどこかにいっちゃったらしく、大晦日のお祝いのためにトラック数台分の雪を運ばなきゃいけないことになってしまったのだとか。まるで札幌の雪まつりみたいですね。

ABCの報道によると、モスクワ気象庁の主任専門家であるTatiana Pozdnyakova氏は、国営のニュースメディアRIA Novostiにこう述べています。

こんなの冬とは呼べません。なぜなら、冬の間、気温はほとんどすべてが0度以上か、それよりもちょっと低い日ばかりだったからです。冬が始まったのか、それとも秋から春へと一気にジャンプしたのかわからないくらいです。

切り離しようがない地球温暖化との関連性

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Image: Karsten Haustein
2020年2月の世界平均気温偏差

米ワシントンポスト紙のCapital Weather Gangによると、ロシアの北極圏を含む他の地域も同じような感じらしく、国としてもどうやら観測史上いちばん暖かい冬になる可能性が高そう。この極端な暖かさはロシア国境を越えてフィンランドやヨーロッパの一部にも広がっています。ドイツも例外ではありませんでした。ドイツでは、冷凍ワイン用のブドウの味が凝縮するマイナス7度以下まで気温が下がったときに収穫するらしいのですが、今年の冬はついにマイナス7度を切らなかったそうです。

気候危機に伴う気温の上昇は、冬が冬らしくなくなっている理由のひとつです。世界中で記録される異常な暖かさと二酸化炭素汚染が関係ないなんて言い張るのは、もはや不可能になってきています。二酸化炭素は気温を上昇しやすく、しかも極端化しやすくしています。将来的に寒くなくなってしまう可能性が高いシベリアの土地は、その恩恵をうけて2100年までに高級不動産になるといわれています。シベリアがリゾート化するかもしれないなんて…。

正位相の北極振動が追い討ちをかけてさらに暖かく…

もちろん、自然変動もまた世界中に熱を運ぶ役割を果たしているのは間違いなく、ロシアの冬の暑さに一役買ったのは言うまでもありません。

Verisk Companyの大気環境研究部門の大気科学者であるJudan Cohen氏はEartherにメールでこう答えています。

この冬のモスクワの気温が信じられないくらい高くなった理由のもっとも明快な答えは、低気圧がモスクワの北西に停滞して、冬の間ずっと偏西風が強い流れを維持していたからです。

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Image: North Carolina Climate Office at North Carolina State University
北極振動(正位相)

この風が、モスクワとその周辺地域に暖かい空気を送り続ける要因になったようです。これには、冬のほとんどの間(特に2月に)ずっと北極振動が正位相にあったことが影響しているとのこと。

この現象の特徴は、北大西洋の中央部に高気圧が停滞するため、北極周辺で強い大気循環が起こることです。高気圧が居座っているために中緯度地域までおりていけない冷たい空気が北極圏に閉じ込められるので、モスクワ周辺などの中緯度地域で暖かい空気が循環することになったのだとか。

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Image: North Carolina Climate Office at North Carolina State University
北極振動(負位相)

北極振動が負の傾向にあったここ数年の冬は今年とは逆で、北極から極渦が数日から数週間にわたって中緯度までおりてきていました。

この冬はおおむね北極振動が活発だったため、極北地域では寒さが厳しくなり、ユーラシアや北米の一部では平年を上回る暖かさになりました。アメリカの冬は本土を通して穏やかで、南東部では観測史上最も早く春が訪れてしまいました。


モスクワの冬の気温にはビックリしましたけど、今年だけの現象であればそれほどあわてる必要もなく、「そういう年もあるよね」ですみます。ですが、引用したツイートのグラフを見るとモスクワの冬の気温は上昇傾向にあるので心配ではあります。

長い目で見ると、他の地域と比較して2倍の速さで温暖化が進んでいる北極圏と中緯度地域の気温差が小さくなって、そうなると北極の空気を閉じ込める役割をしているジェット気流がハチャメチャな動きをするようになるので、いろんな場所で寒さも暑さも雨も水不足も極端になっていくと思われます。

北極を北極に閉じ込めておくには、二酸化炭素排出量を減らすしかないようです。

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