毎日が驚きの連続です。アメリカのコロナウイルス対応

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毎日が驚きの連続です。アメリカのコロナウイルス対応
バイオハザード風のマスクでコロナ緊急予算案に目を通すトランプのMr.イエスマン Image: @RepMattGaetz/Twitter

おもしろくないよ…。

米沖のクルーズ船でも21人が陽性という、パンデミック前夜の風雲急を告げる時局に、83億ドル(約8750億円)の緊急予算審議に面白半分にガスマスクを被って現れた人がいます。その人の名はマット・ゲーツ。

トランプ大統領がゴルフで入り浸るフロリダ州の選出で、大統領の寵愛を一身に浴びてスピード出世した、37歳の下院議員で、「ミニ・トランプ」とも「トランプの腰巾着」とも「イエスマン」とも呼ばれています。フロリダといえば全米で一番シニアの多いコロナウイルス要注意地域なのに、こんなことしてて大丈夫なのかな…と一気に不安がこみ上げてきます。

…と書いてたら東海岸初の死者が出たというニュースが入ってきました。場所はもちろん、フロリダです。ああ…。

なぜガスマスク?

ガスマスクを被った動機についてゲーツ議員はこう説明しています。

「コロナウイルス予算案に賛成票を投じた。感染拡大を食い止めるには財源が要るからだが、あまり納得していない。80億ドル以上も、どこで補うのだ。次の世代に今の世代のパンデミックのツケを利息つけて回すのはいかがなものか」

若手議員らしいロジックですけど、フロリダには特別養護老人ホームが3000以上と老人ホームが約700あります。西海岸のシアトル近郊で2月24日と26日に全米初のコロナウイルスの死亡が確認されたのは、どちらも特養ホーム「 LifeCare Center」。未来を語る前にもっと目の前にやるべきことがあるような…。

フロリダ州保健局の集計では「2人が死亡、18人が陽性、118人が陰性、108人が検査結果待ち」(3月9日時点)とあり、全感染者の14.3%が亡くなっている計算です。これに対し、検査大国韓国は「陽性7041人、死亡46人」なので、全感染者に占める死亡者の割合はわずか0.65%。数がまったく合いません。

検査を先送りにしているうちに春の風が吹いてみんな治るんだから、ここは気軽に乗り切ろうや、という姿勢のトランプを見て、よーし、ここは自分もひと肌脱ごう、と思ったんでしょうね。

しかし、大統領とイエスマンのお気軽パフォーマンスも虚しく市場は乱高下を続けています。

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Image: Google

投資批評家はイタリアを後進国呼ばわり

ほかのタカ派も似たり寄ったりで、株のためならもう何を言ってもいい雰囲気です。CNBC投資番組「マッドマネー」司会のジム・クレイマーなんかも「アメリカは医療先進国だからそこまで死なない」と言い切っていて…。

Video: Matt Novak/YouTube

「1958年にも流行り病で大勢死んだが、それは海外の話で、海外はとにかく医療が遅れているだけ。イタリアもひどいものだ」という発言には、え? WHOの医療制度世界ランキング見て言ってる?ってなりました。

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医療制度世界ランキング
Image: 世界保健機構(WHO)

イタリア(7375人が感染、366人が死亡:3月9日時点・イタリア市民保護局発表)は全員検査は無料で手厚く対応中医療費が不安を呼んでいるアメリカがとやかく言えた義理じゃないですよね…。また、イタリアは65歳以上が23%を占める高齢化社会なので、16%の米国とは同じに語れないとNY Timesは指摘していますよ。

テレビ医師の虚言はアメリカも同じ?

一方、国民的人気を誇るドリュー医師は2日のFOXニュースで「ウイルスよりパニックが問題。かぜで18,000人死んでもだれも話題にしない。騒ぎ過ぎだ。検出が進めばどうせ致死率は下がる」と力説。でもその後、致死率は当初の2%より逆に高くなり、WHOは3.4%と改めています…。

Video: Matt Novak/YouTube

大統領補佐官「ヨーロッパにはならない」

Video: Matt Novak/YouTube

「われわれはやり方を知っている。ヨーロッパがバタバタしているのを5、6週間ずっと静観してきた」と余裕をにじませているのは、ミック・マルバニー大統領首席補佐官です。現実には国内の感染規模すら把握できていなくて、2月第1週にCDCが配布した検査キットに不具合があって6週間ロスっただけ。

その後、マイク・ペンス副大統領(コロナウイルス対策本部長)が「検査キットの用意はある」と発表したので、きっと今ごろは大々的に検査やってると思ってる人も多いと思うんですが、NY市は5日時点でたったの24人、アイオワ州も17人ぽっきりだったりします。

死者10人の特養ホームも検査拒否

クラスタはしっかりやってるんだろうなーと思ったら、死者が続々と出て立入禁止になった特別養護老人ホーム「 LifeCare Center」の前では家族が集まって国に涙ながらに中の状況の説明を求めています。病院に運ばれずに残っているシニアは、感染者と相部屋でも症状が出ていないと検査対象とはみなされず、家族がいくらCDCに頼んでも検査してくれないんだとか…。結果がわからないと、引き取りたくても引き取れないと、声を詰まらせています

訃報が入って悲しみに暮れてたら、ピンピン生きてると連絡があったり。何回も面会で出入りしていた家族も「検査を断られてどうすればいいかわからない」と言ってて、なんで外に出てTVに出てるの…?となりました。

CDCのコロナウイルス相談ホットラインに電話したら「LifeCare Center?何それ?」という職員が出て、家族が説明して初めて死者が大量に出ていると知って驚くノリらしく、「これだけ全国区のニュースになっているのに信じられない」と家族は目を回しています。

虚言に走るトランプ

頼みの綱の大統領は、楽観論でお茶を濁して、「アメリカのコロナ対策は万全だ」と根拠のない自信をにじませています。

感染が広まると「民主党がデマを流してる」と触れ回り、CDC代表と保健福祉長官がホワイトハウスの記者会見で「国内感染の拡大は不可避」と発表すると、同じ席で「まだ国内感染は15人。数日でゼロになる」と完全否定。(編注:世界の感染者数等をまとめているジョンホプキンス大学の特設サイトによると、3月9日時点で米国内の感染者数は547人)

死者が増えたら増えたで、「ワシントン州でたくさん亡くなってカリフォルニアとニューヨークでも1人亡くなった」と述べ、まだひとりも死んでないニューヨーカーをもう死んだことにしてカウント。

WHOが致死率を3.4%と改めた点についても、「WHOの致死率は間違い。自分が見聞きした印象では1%にも届かない感じだ。すぐ治るし、そのまま働きにいって治ってる人もいる」とうっかり口を滑らせ、「え? 感染したまま出勤していいの?」とちょっとした騒ぎになり、CDCのトップが事後対応に追われています。

こんな虚言・失言を繰り返していたらハーグ(国際司法裁判所)まっしぐら。国内でも集団訴訟の嵐ですよね。毎日ハラハラします。


Source: Twitter, Florida Health, WHO, Protezione Civile, KOMO News, John Hopkins CSSE

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