隕石から超伝導物質みつかる。宇宙では自然発生するってことか!

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
隕石から超伝導物質みつかる。宇宙では自然発生するってことか!
Photo: Graeme Churchard (Wikimedia Commons) via Gizmodo US
1966年にオーストラリアで見つかったマンドラビラ隕石Ⅰ。細かい粒子に超伝導性が確認された

超電導への飽くなき挑戦。

50年以上前に発見された巨大な隕石のなかから超伝導物質が発見されたそうです。

超電導とは電気抵抗がない状態。電線に電気を通すと抵抗があるのでどうしてもエネルギーロスが生じますが、そのロスがなくなった状態が超電導です。MRIなどの医療機器、リニアモーターカー、そして将来的には量子コンピューターにも活用されますし、超電導が拓く未知の技術革新にも期待がかかっています

今回発見された物質はすでに地球上で合成され、超伝導性が知られていたものでしたが、隕石から発見されたこと自体が衝撃的なんです。そう語るのは主任研究者のIvan Schullerさん。カリフォルニア大学サンディエゴ校所属の物理学者です。

「この研究のもっとも重要な成果は、宇宙には自然に超伝導性物質が存在しているとわかったことだ」

と米Gizmodoに話しています。

宇宙からきた合金

隕石に限らず、Schullerさんはありとあらゆる物質に超伝導性を見出す研究を続けてきました。

6年前にはMagnetic Field Modulated Microwave Spectroscopy(MFMMS:磁場変調マイクロ波分光法)という、物質に超伝導性が備わっているかどうかを調べる方法を確立しました。これはマイクロ波と振動磁場で満たした空洞に、細かく砕いた物質を入れ、その物質を徐々に冷やしていく装置。超伝導性は多くの場合、液体ヘリウムの温度(マイナス250℃)以下まで温度を下げなければ見つからないため、冷やす必要があるんです。うまく物質が超電導に変化した場合は、マイクロ波の吸収の仕方が変わるので超伝導性を見分けられるそうです。

アメリカ空軍から研究助成金を受け、SchullerさんはこのMFMMSを使ってかたっぱしから物質の超電導性を調べ始めました。宇宙には低温・高圧な極限環境があるため、そこから飛来してきた隕石を合理的な出発点と捉え、まずは何百もの隕石を小さい順からどんどん調べていったそうです。そして大学院生のJames Wamplerさんがついに超電導性を発見したのが、オーストラリアのマンドラビラ隕石と、南極で発見されたGRA 95205でした。

超電導性を持つ物質はインジウム(In)、鉛(Pb)とスズ(Sn)の合金。宇宙空間で自然発生し、かつ超電導性を持つ物質として新たに知られることとなりました。

汚染の可能性

すごい発見!…と思いきや、研究自体はまったく地味なものだったそうです。

In-Pb-Sn合金はすでに地球で人工的に合成され、超伝導性が知られていた物質だったので、隕石から発見されたサンプルはもしや地球上の物質に汚染されて超伝導になっちゃっただけでは?という疑いのほうが当初は強かったとか。

「発見した時のことは覚えていないよ」と発見者のWamplerさんは米Gizmodoにそっけなく語っています。

「はじめのリアクションは、ウソでしょ? 騙されてない、これ?って。とてもシニカルだけど、結果を厳しめにチェックするいい意味でのシニカルだね。」

その後、実際厳しめにチェックしてもらうためにブルックヘブン国立研究所にサンプルを持参し、Yimei Zhu・Shaobo Cheng両氏に電子顕微鏡で調べてもらったそうです。ふたりのお墨付きをもらって初めて宇宙で自然発生する超伝導性物質を発見したんだ!ということになり、2018年3月に学会で発表したのを皮切りに、2020年3月には米国科学アカデミー紀要にて論文を発表するに至りました。

論文を査読したフロリダ州立大学のMunir Humayun教授は、地球で汚染された可能性が気がかりだったものの、その疑いを払拭する努力を怠らなかった研究者たちを評価しています。さらに、

「数ある論文の中でもこれは驚きを隠せないもの。これまでちゃんと見てこなかったものもじっくりと見る必要性を提示してくれた。In-Pb-Sn合金のようなレアメタルを調査する新たな学問の扉を開いてくれた」

とも語っています。

室温での超電導を目指して

このIn-Pb-Sn合金が宇宙空間でどのように生成されるかはまだわかっていません。太陽系の誕生とともに熱され、その後冷却されて再結晶化するといった化学変化を遂げていると考えられるため、はじめに作られた環境を再現するのは容易ではありません。

なお、In-Pb-Sn合金はマイナス268.15℃以下に冷やさなければ超伝導にならないので地球での実用化は難しそうですが、宇宙にはマイナス268.15℃以下に冷え込む場所があるため自然に超伝導性を持つと考えられます。GRA 90205に関しては、極限の環境で形成されたことが伺え、In-Pb-Sn合金のほかにも超電導性を持った物質が生成されていた可能性もあるそうです。

人類の夢のひとつは室温での超電導。室温で、しかも高圧をかけずに超電導を出せたら間違いなくノーベル賞!と言われているほどです。

MFMMSをひっさげて、SchullerさんとWamplerさんは今後も超電導を求めて飽くなき挑戦を続けるそうです。

Reference: NASA

超伝導物質 ほしい?

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