今はコロナウイルスとインフルエンザを比べてる場合じゃない!

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今はコロナウイルスとインフルエンザを比べてる場合じゃない!
Image: Samuel Corum/Gettyimages

どちらも危険であり、防ぐ必要があるんです。

今週の月曜日(3月9日)、ドナルド・トランプ大統領は100カ国以上で感染が発生し、米国でも感染が始まった新コロナウイルスの深刻さを軽視する発言を改めてしました。彼のツイートは、「今年の冬だけでも(インフルエンザによって)米国で3万7千人が死亡した」と指摘。彼のツイートの時点で「22人の死亡が確認されたCOVID-19よりも遥かに多い」ので「生活(と経済も)は通常通りに行なうべきだ」と主張しました。

この比較を行なったのは彼が初めてではありませんが、今の時点では非常に視野が狭い意見です。確かに毎年のインフルエンザは私たちにとって脅威であり、みんなもっと真剣に対策すべきですが、COVID-19は一般的なインフルエンザよりも深刻になる可能性があり、今この二つを比べるのは無意味なのです。

本当の感染者数はまだわからない

3月10日の時点Worldmeterは、全世界でのCOVID-19の感染者を約11万8000人死者は4200人としています(編注:3月12日時点で確認したWHO速報値も近い数字)。うち、米国では確認されたのは約800人で、死者は28人です(編注:WHO速報値では感染696件、死者25名)。その多くはワシントン州、カリフォルニア、ニューヨークに集中しています。米国全体がどれだけの影響を受けるかはまだ分かりませんが、これからもこの数が増え続けることだけは確かです。

ここ何週間も、米国の保健機関は多くの人を検査することができなかったため、感染しているのに確認されていない人が少なくともある程度の数いるはずなのです。他にも、高額な検査料を恐れて検査を受けていない人もいるでしょう。連邦政府は、民間の検査ラボに協力を求めたり保険企業に顧客の検査代を免除させたりと、検査能力を大幅にあげることを約束していますが、米国で実際どれだけ感染が広がっているかは未知数で、大規模な検査が行なえるようになるのがいつになるかも分かっていません

つまり、現在発表されている数は幻です。実際の状況は分かりませんが、良いとは思えません。月曜日に公開されたプレプリントの論文は、3月1日の時点で1000件から9000件の輸入感染症例があると推測しています。この論文はまだジャーナルなどに掲載される前なので、結論の信ぴょう性には注意すべきですが、この数字はあくまで武漢から米国への渡航者のみで、過去数週間感染に悩まされているイタリアなどからの感染例は含まれていませんし、米国内での感染も含まれていません。それに3月1日以降、米国内での感染件数は爆発的に増えた可能性があります。

インフルエンザはまだ把握しやすい

ここで注意しなければならないのは、COVID-19に関してはまだ不明な点が多いということです。一方、インフルエンザは予測が簡単です。研究者は感染の追跡の仕方を熟知しているし、冬になれば病人が増えることを医師や病院も予想しています。それに毎年のワクチンや抗ウイルス薬で、ある程度感染を抑えることもできます。COVID-19に対する連邦政府のお粗末な対応から目を反らすために、トランプ大統領はインフルエンザの話を持ち出したのかもしれませんが、それってどういう理屈でしょう? 一般的な病気で大量の人が死ぬなら、他の病気で人が死ぬのも問題はないということでしょうか?

もちろん、インフルエンザを大したことないと見くびるべきではありません。毎年国民の半分がワクチンを受けますが、それでも何万人もの人が毎年亡くなっているのです。特にひどかった2017年から18年のインフルエンザシーズンは、米国人8万人が亡くなったと見積もられています。だから、もし国民の半分がワクチン接種を受けていなかったら、どれだけの人が亡くなったかを想像してみてください。COVID-19のワクチンが現在ないことを考えると、早く対策を取らねばどれだけ危険か分かると思います。

もし米国でCOVID-19の集団感染が始まったら

もしCOVID-19が国全体に広まった場合、インフルエンザよりはるかに多い人が死亡する可能性があります。COVID-19の本当の致死率はまだ確定していませんが、COVID-19に対する素早い対応が評価された医療システムをもつ韓国を基準として考えた場合、致死率は0.5パーセントほどです。もしCOVID-19が、去年インフルエンザに感染したのと同じ3500万人の米国人に感染した場合、死亡者数は17万5000人となります。

これだけの死者数は、既に崩壊しつつある米国の医療システムを完全に飽和させ、さらなる病人だけでなく経済的なダメージも大きくなります。米国は、1000人あたりの利用できる病院のベッドの数が少ないのです。病院がCOVID-19の患者で埋まってしまっては、交通事故や心臓発作、それこそインフルエンザのような他の病気にかかっている人まで看なければいけない病院や緊急病棟に大きな負担となります。

上の例は予測ではないし、新コロナウイルスの集団感染を諦めて受け入れろと言っている訳でもありません。もし集団感染がすでに発生しているなら、州、市、そして個人のレベルでスピードを抑えるためにできることがあるのです。中国や韓国では既に形勢が逆転しつつありますが、それもCOVID-19を軽視しないこと、私たちにできることを(例えそれが、用心のためにイベントを中止したりすることでも)やって備えるべきであることを改めて再認識させてくれます。

COVID-19もインフルエンザも、防ぎ方は同じ

一ついいニュースがあるとすれば、COVID-19に対して私たちができる対応策は、他の感染型の病気からも守ってくれるということです。

カリフォルニア大学リバーサイド校の疫学者、Brandon Brown氏は米Gizmodoにメールでこうコメントしました。

インフルエンザは未だに存在していることを忘れてはいけません。今年のシーズンは2万から5万人が亡くなっています。しかし噂では、コロナウイルスを人々が恐れた結果、インフルエンザによる入院数も減ったと聞きました。どちらも同じ方法で防ぐことができるからです。


Reference: WHO

2020年3月12日20時52分修正:冒頭のトランプ大統領の発言の一部について、インフルエンザが原因である旨を補足しました。

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