最近ため息が出るニュースばかり。そんな中、ちょっとうれしい知らせが火星から届きましたよ。
火星探査機「InSight(インサイト)」の新たな作戦が功を奏し、熱流量計を火星の地中にもぐらせることに成功したそうです。
火星の地中深くにもぐる「もぐら」
NASAの関連ツイートがこちら。
A bit of good news from #Mars: our new approach of using the robotic arm to push the mole appears to be working! The teams @NASAJPL/@DLR_en are excited to see the images and plan to continue this approach over the next few weeks. 💪 #SaveTheMole
— NASA InSight (@NASAInSight) March 13, 2020
FAQ: https://t.co/wnhp7c1gPTpic.twitter.com/5wYyn7IwVo
火星からちょっといいニュースが届きました。ロボットアームで「もぐら」(注:熱流量計のセンサーがついている先端部分)を地中に押しこむ新しいアプローチがうまくいっているようです!画像を確認した研究チームの士気も高まっています。これから数週間はこのアプローチを続ける予定(力こぶ)
2018年11月に火星に到着したInSightは地震計、カメラ、そして「HP3 」と呼ばれる熱流量計パッケージを搭載しており、火星の地中深くにもぐって熱量を計測するのがミッションのひとつです。

HP3の先端についているセンサー部分、通称「もぐら(Mole)」は、自ら地中にもぐれるメカニズムを搭載しています。NASAによれば、もぐらは直径わずか2.7cm、長さ40cmと小型ながらも、杭打ち機のような機能を持っているそう。内部のモーターがバネをすばやく収縮・リリースすることでタングステン製のハンマーがもぐらの先端部分を内側からヒットし、この動作を3.7秒毎のペースで繰り返すことによって地中にもぐっていける仕組みなのだそうです。
深さ5メートルまでもぐって火星の地中の熱の動きを計測するのが狙いで、最終的にはそのデータをもとに火星の内部構成、またその構成の成り立ちを明らかにしていきたいそうです。
もぐら、もぐれず
ところが、もぐらは火星に着いた当初からトラブルに見舞われ、もぐれていませんでした。
火星の土壌が予想外に硬くて摩擦が足りなかったためうまく掘れず、わずか50cmほどの深さでストップしてしまいました。そこでなんとかもぐらせようと、NASAのチームはInSightのロボットアームを使ってもぐらのまわりの土を押し固める作戦に出ました。もぐらが掘っている穴の側面にもぐらをぴったり寄せることにより、土ともぐら同士の摩擦を高めようとしたのです。
この作戦は最初こそ成功していたのですが、なんと火星の土の逆襲に遭い、ペッと穴の外に吐き出されてしまう結果に…。どうやらすでに掘った穴の中に徐々に土が溜まっていき、穴自体が埋まってしまったようなんですね。
リスキーな作戦
そこでInSightのエンジニアたちが先月から新たに開始したのが「ロボットアームで地中にぐいぐい押し戻す作戦」です。
ロボットアームの先端にはシャベルがついているんですが、それをもぐらのてっぺんの「バックキャップ」という部分に当てて、ゆっくりと地中に押し戻してあげようというもの。
以前からこのような構想はあったらしいのですが、もぐらの上部には繊細な温度センサーをたくさんつけたコード(一番上の画像では茶色いペラペラのテープみたいな部分)がついているために実行がためらわれていた経緯がNASAのプレスリリースで語られています。
満を持じて実行された結果、かろうじてもぐれている様子! NASAのツイッターに投稿された画像では、ほんのちょっとではありますが、もぐらが地中にもぐったように見え、なんとかロボットアーム作戦が成功しているようです。
まだまだ目的の5mには及びませんが、いいスタートではないでしょうか。
このほかにもInSightにはさまざまな機材が搭載されており、地震ならぬ「火震」を観測したり、地殻に予想以上に強い磁場を観測したり、激しい嵐を観測したりと大忙しです。
このままもぐらが順調にもぐっていければ、火星の表面下の熱を計測してさらなる発見につながるかもしれません。