スワロフスキー製の単眼鏡「dG」ファーストルック:初心者に便利な鳥識別機能が使える約25万円のバードウォッチングバディ

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
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スワロフスキー製の単眼鏡「dG」ファーストルック:初心者に便利な鳥識別機能が使える約25万円のバードウォッチングバディ

高いのか、お買い得なのか…。

およそ25万円もする、野鳥観察のための最高級ガジェットを触ってみた米GizmodoのRyan F. Mandelbaum記者による、スワロフスキー製の単眼鏡「dG」のファーストルックをお届けします。


自然が好きな人たちは野外に赴く際、高価なガジェットをたくさん持っていきます。遠くの動物のディテールとフィールドマークを見るための双眼鏡に、シャッターチャンスが巡ってきた場合や何か珍しいものに出くわした場合に備えての望遠レンズ付きデジタル一眼レフカメラ。海や干潟で野生動物を遠くから観察するためポータブルフィールドスコープ折りたたみ式三脚や、何の鳥か調べるための本や携帯電話を持っていくときもあります。

そのような大荷物は絶対必要なもの。そう思っていました。しかし、Swarovski(スワロフスキー)の単眼鏡で遊んでみると、その考えは一変。野鳥の観察にまともな写真の撮影、鳥類の識別までの全部が同時にできたんです。

スワロフスキーって光学機器も作ってるんです

Swarovskiというとクリスタル・ガラス製品が有名ですが、自然が好きな人たちの間ではステータスシンボル(他の誰よりもはっきりと見るため最高級光学機器に散財できるという証拠)になる単眼鏡やフィールドスコープといった光学機器も製造しています。同社は4月1日に、単眼鏡「dG」(アイピースが1つだけの双眼鏡のようなもの)を発売します。同製品にはカメラが内蔵されており、写真は自動的にコーネル大学のAI搭載アプリMerlin Bird IDに送信されます。この製品で遊んでいた間も、自分の双眼鏡とカメラを使ってしまったものの、dGだけを持って野外で1日楽しむ自分が容易に想像できます。

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SwarovskiのdGを使うNYCの生物学者Gabriel Willow氏
Photo: Ryan F. Mandelbaum (Gizmodo)

スワロフスキーのブランドアンバサダーと野鳥観察へ

先日、ニューヨークの生物学者Gabriel Willow氏と会いました。昔からの仲ですが、仕事で会うのは初めてです。私たちは珍しい鳥を追うために仕事を切り上げ、ジビエディナーの集まりではヤギの頭のプレートを分かち合ったこともあります

Willow氏はスワロフスキーのブランドアンバサダーとしても活動中。彼は自身のソーシャルメディアに投稿するためdGをもらっていましたが、そのことを教えてくれた際に、試すときにはついて行っていいかと頼んでいたんです。そういうわけで、セントラル・パークで野鳥観察をすべく、また早めに仕事を切り上げることに。バードウォッチャーの間でセントラル・パークはその利便性、訪れる鳥類の幅広い多様性、そして生息環境の独自性のおかげで他では見つけにくい鳥たちを間近で見られることから、最高の野鳥観察スポットだと考えられています。

私たちはまず、公園にいるカナダガンの大きな群れやハシビロガモ、かわいらしいオビハシカイツブリなど近くの水鳥を眺めながら、貯水池沿いを歩きました。

使い方はいたって簡単

単眼鏡の使い方は双眼鏡と同じです。アイピース越しに対象を見て、フォーカスノブで焦点を合わせます。中心に野鳥の姿がはっきり見えたら、ファインダーの傍らに内蔵されたカメラで写真を撮るにはdGの大きなボタンをプッシュ。そうすると、dGがWi-Fi経由で写真を自動的にスマホに送ってくれます。

野鳥識別アプリと一体化。撮影したその場で鳥の名前がわかる

dGは、コーネル大学が製作した野鳥の種類を識別するアプリMerlin Bird IDと一体化されています。ちなみにこの人気アプリは無料です。

このアプリの一般的な使い方は、ユーザーが一覧から選んだ野鳥の特徴、さらには観察した日と位置情報から、アルゴリズムがもっともらしい鳥の種類を提案してくれるというもの。しかし、同アプリには写真に基づいて鳥類を提案できる強力なAIツールも搭載されていて、ぼやけていたり荒っぽかったりする写真でも正確な判断をしてくれることが多々あります。

私の場合、カメラで撮影した写真や双眼鏡に当てたiPhoneカメラで撮った鳥の写真にこのAIツールを使うのですが、dGの写真はすぐにMerlinアプリ内に表示されます。もし鳥類ではない動物や植物の名前を知ることに興味がある場合でも、同機の写真はiNaturalistといった動植物を識別する他のAIアプリでも使えるはずです。

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dGで撮影した写真を識別するMerlin Bird IDアプリのスクリーンショット
Screenshot: Ryan F. Mandelbaum

撮影した写真をシェアすることも可能

dGの写真はMerlinで種類が判別できるほど鮮明で、ミスはピンぼけやアングルが悪いことによるものでした(Merlinか私たちの落ち度であって、単眼鏡のせいではありません)。下草を軽やかに進むヨーロッパコマドリ、アオカケス、ショウジョウコウカンチョウ、ウタスズメを眺めながら公園をゆっくり散策しました。そこでGabrielがまた別の機能を披露してくれたんです。dGはWi-Fiの届く範囲内のスマホ5台に転送できるので、一緒に出かけた友人らに自分が見たものをシェアできます。

どんな人が欲しがるのだろう?

金額が問題でなければ、どんな人がこのデバイスを欲しがるだろうと考えてみました。カメラの画像はよいのですが、それでもまだどこか荒っぽく、画質は双眼鏡にiPhoneを当てたもの(例はコチラから)と同程度でした

個人的には野鳥は両目で見るのが好きで、写真撮影も含めて趣味として捉えているので、双眼鏡+カメラの組み合わせを私は気に入っています。ですが、ネイチャーウォッチングにハマっていて、特に苦労してカメラを運びたくないタイプなら、このようなプロダクトは便利だと思うでしょう。家にカメラを忘れたせいで珍しいものを撮影できずイラ立ったというバードウォッチャーの話はよく聞きますからね。

それにもし初めて見る野生動物がいる異国に行くとしたら、被写体を大きく見せて、かつ何の動物か見分けてくれるツールはぜひとも持っていきたいものです。

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dGで撮影したショウジョウコウカンチョウの写真
Photo: Gabriel Willow

単眼鏡としてのスペックはそこそこ

この単眼鏡のスペックは8×25。バードウォッチング用双眼鏡のスタンダードだと考えられているのと同じ8倍の倍率で、対物レンズ有効径は25mmという意味です。

倍率は対象がとれだけ近くに見えるかを表す数値なので、8倍なら対象との距離を8分の1に縮めて見られるということ。集光力は対物レンズで決まるので、大きな有効径の対物レンズからの画像のほうが明るさと解像力が向上します。要はレンズ径が大きいほど画質がよくなるというわけ。自然が好きな人の多くが最もよく使う双眼鏡は、42mm以上のものが多く使われています。

機能を考えたら価格は妥当かも

価格はというと、2310ドル(約24万2000円)ほど。高価に思えますが、ベテランの(もしくはリッチな)バードウォッチャーたちに人気のあるスワロフスキーの双眼鏡は最上位モデルで2,000~3,000ドルほどかかります。それに、目にした野鳥を簡単に識別してくれる双眼鏡はほかにありません

とはいえ、お手頃価格で高品質な双眼鏡もあります。私が使っている100ドルのCelestron社Nature DX 8×42には少し不満があるので、約500ドルのニコンのMonarch 7sかZeiss Terra双眼鏡へのアップグレードを考えています。

一方で、Merlin Bird IDアプリは無料で、スマホのカメラを双眼鏡にマウントするホルダーなら50ドルで「dG」と同じような機能を手に入れられます。でも手間どるし合理化されてないので、珍しい野鳥を撮影できるか、それとも何だったのか気付かずに見逃してしまうのかといったことが起こるかもしれません。

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スワロフスキー「dG」の対物レンズとカメラ
Photo: Ryan F. Mandelbaum

カジュアルなネイチャーウォッチングに向いている

このデバイスが見掛け倒しかそうでないか、あるいは内蔵カメラ付きの光学機器のために双眼鏡+カメラの組み合わせを捨てられるか判断できるほど十分に使えたのかはわかりません。オートフォーカス、そしてシャッタースピードやカメラレンズのF値を変える方法はないので、写真の画質は専用のカメラには勝てません

ですが、私はカメラなしで出かけて、せっかくのシャッターチャンスを逃して後悔したことがたくさんあります。お昼休みにサクッとセントラル・パークで散歩とか、重いレンズを持ち運ぶ余裕のない出張といった機会です。野鳥の種類の特定が難しい初心者バードウォッチャーや、野外を散歩する前に何百もの品種を覚えるつもりはないカジュアルな自然愛好家などが使っても役立つはずです。

もし、鳥の種類の識別アプリと一体化したカメラ搭載の単眼鏡がもっとお手頃で一般的になれば、他のテクノロジー製品では成し得なかったほど多くの人々が自然を楽しめるようになるかもしれないということが何より重要なのかもしれません。

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Photo: Ryan F. Mandelbaum

Source: Swarovski, Merlin Bird ID, Audubon, B&H,( 1, 2)

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