石油の年間需要、コロナの影響で10年来の低下か

  • author Yessenia Funes - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
石油の年間需要、コロナの影響で10年来の低下か
Image: Getty

コロナ・石油・気候危機の複雑な三角関係に、しばらく悩まされることになりそう…。

新型コロナウイルスによる世界的危機は日を追うごとに悪化し、国際的な気候変動サミットの事前交渉のキャンセルや、飛行機が客を乗せずに飛ぶ「ゴーストフライト」につながりました。そして今、石油需要は10年以上ぶりにとんでもなく減少すると予測されています。

石油需要が2009年以来の減少

国際エネルギー機関(IEA)が3月に更新した石油市場の予測によると、世界の石油需要は、コロナウイルスのために今後も下降パターンを続けるそうですよ。石油市場は2020年第一四半期に、史上最も劇的かつ突然の下落に見舞われました。IEAは今年2月に、石油の需要が1日あたり82万5000バレル増加すると予測していましたが、改定版では9万バレルの減少と、えげつない下方修正をしています。

IEAのFatih Birol事務局長は声明でこう述べています。

コロナウイルスが石油市場に及ぼす影響は一時的なものかもしれませんが、世界の石油供給企業の収益を左右しかねない長期的な課題がなくなることはありません。

コロナウイルスによって石油需要がさらに減る可能性も

需要の減少が予想される原因は、もうなんといってもコロナウイルスの世界的な感染拡大です。人々が外出を控えている(そこら中で外出禁止令が出ています)おかげでガソリンの消費量が激減していることや、航空便のキャンセルなどが考えられます。

平均的な予測によると、世界の今年の石油消費量は1日あたり9,990万バレル。減少幅は比較的小さいとはいえ、需要が減少すると予測されるのはありえないことのようです。だって世界の石油需要が減少するという予想は、2009年の不況以来初めてのことなんですよ。コロナウイルスの感染拡大とその経済への影響によっては、これから数カ月のうちに予測が変わる可能性もあります。現状を見る限りでは、たぶんさらに下方修正されることになりそう。

楽観的なシナリオもあるにはあるが…

IEAは需要が減少すると予測していますが、実際にどれくらい減少するかはシナリオ次第だそうです。シナリオはふたつあって、ひとつは物事が急速に悪化する悲観的なシナリオで、もうひとつは政府が協力して事態に対応する楽観的なシナリオ。悲観的なシナリオではウイルスの封じ込めに失敗し、石油の消費量が1日あたり73万バレル減少楽観的なシナリオでは、世界がすぐにコロナウイルスを封じ込める動きを見せることで、今年の世界の石油需要が1日あたり48万バレル増加するのだとか。

石油需要の増加は「気候危機」を深刻化させるため、長期的には良くない

IEAは、石油消費の増加を最良のシナリオとして想定していますが、長期的に見ると気候危機による経済への影響を無視しています。化石燃料消費量の増加は、経済にとっても地球にとっても決して良いことではありません。とはいえ、石油産業の急落が良いことかというと、そうともいえません。あぁ、ジレンマ。

IEAの報告書は、温室効果ガス排出量削減のための世界的な政策の転換に賛同し、こう書いています。

クリーンエネルギーへの移行が石油供給に与える影響は依然として不明であり、多くの企業は今後数年間、短期のプロジェクトを優先しています。これまで大手石油企業は、CO2排出量の削減について、長期的な目標に焦点を当てる傾向がありました。それに対し、投資家が持続可能性に焦点を絞るように圧力をかけ続ける一方で、活動家(特にヨーロッパと北米の活動家)は、新たな石油開発を阻止しようと、はたらきかけています。

結局のところ、コロナウイルスはひとつの災害にすぎません。異常気象のインパクトがより一般的になってきた世界では、遅かれ早かれ景気後退の可能性は高まる一方です。では、そうなったときに経済はどう対応するんでしょうね?

化石燃料に依存する経済からクリーンエネルギー中心の経済へ

政府のリーダーたちは、新型コロナウイルスに対して適切な対応をはじめていますが、気候変動を解決するために必要な作業も見失ってはいけません。そしてその作業の中には、化石燃料に依存しない世界への移行が含まれます。それが欧米のニュースでよく見かける「グリーンニューディール」だったりします。

移行がすぐに行なわれなかったりスムーズに進まなかったりすると、世界経済はもっと多くの脅威に直面することになるでしょうね。私たちが目にしているのは、温暖化によって失われる未来のほんの一部にすぎません。でも私たちは、この機会を再生可能エネルギー中心とした新しい経済システムつくる機会捉えることもできます

クリーンエネルギーへの移行がはじまっているという認識は、すでに石油・ガス産業の財政的な健全性に影響を与えています。ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどの銀行はすでに北極でのプロジェクトへの資金提供を終了しています。また、活動家や投資家は、石油・ガス産業への資金調達をやめるよう銀行に圧力をかけ続けています。金融関係者が他のエネルギー分野にお金を使うようになるのは時間の問題です。当事者であるエネルギー企業でさえ、化石燃料が下り坂にあることを認識しているくらいですから。

新型コロナウイルスが経済に与えているインパクトの大きさをみると、化石燃料からクリーンエネルギーへ今すぐ移行する、というわけにはいかないでしょう。でも、爆発的に感染者が増加した国々でみられた大気汚染環境汚染の改善は、私たち人類が目指している脱化石燃料後の世界を垣間みせてくれているような気がします。

    あわせて読みたい