相変わらず、どれもバヤです。
Adobe Summit 2020が、2020年4月1日(水)深夜よりオンラインで開催されました。Adobeのデジタルマーケティング関連の新プロダクトを紹介するイベントなんですが、新型コロナの影響でオンライン開催と相成りました(おかげでセッションごとに細かくアーカイブされていてむしろ見やすくなってる感も)。
日本語字幕も充実していてありがたいのですが、やっぱり気になるのは開発中の機能をチラ見せしてくれるSneaksでしょう。35分間のSneaksセッションではいくつかの未来的技術が発表されました(Adobe MAXの時ほど一般向け機能じゃないけどね!)。
リアルなモノがAIとARを介してデジタルに同期される
書籍を作る際の最終確認は、今、きちんと印刷・製本されたサンプルで行なわれています。著者と編集側とで何度かの校正をして、さぁ見本が刷り上がった。でも著者が海外に行っちゃって修正コメントを書き込んだサンプルを返送してもらうのが大変! こんな時に役立つのが、「Dually Noted」。いわく、書籍とデジタル文書を融合するテクノロジー。

編集者側は今まで通り、こんな風にPCからデジタル文書(たぶんPDF)に注釈を入れます。表紙はこんな感じで良いか、見出しの位置は問題ないか。

海外にいる著者には刷り上がった本のサンプルを送付し、実物でチェックしてもらいます。ちがうのがコメントの返し方。著者がスマホアプリを使って本をスキャンすると、編集がデジタル文書に入れた注釈がARで表示される。著者はスマホでコメントできる。つまりは、AIが実物を細かく認識して、入れられたコメントをARとデジタル文書とで対応・同期させてくれる技術なのです。
これ、本じゃなくて冊子やチラシなんかも同じように使えないのかな。刷り上がった見本に対して営業がアプリでコメントして、遠方のデザイナーが確認する、みたいな(ページが少ないと恩恵はイマイチかもですが)。
というかARということは、新iPad ProのLiDARが活きる可能性が…!?
自分に合ったウェブコンテンツがもっと見つかりやすくなる
ニュースサイトなんかでずらっと並んでいる記事をタイトルと写真だけで流し読みすること、あるでしょ? おもしろそうなのがあったらクリックして読む、みたいな。読まれるか読まれないかは、タイトルと写真で決まる、なんて言われるくらい、大事。
そんな記事のタイトルや写真をユーザーの好みに合わせて調整できるなら、読まれる確率アップしません? 「Snippets」はまさにそれができる機能。サイトに表示される記事のタイトルや写真をAIがユーザーごとにパーソナライズしてくれる機能です。

ホームページ製作時、導入となる枠でSnippetsを選択。ターゲットにしたい対象者の候補が表示されるので、お好みで選択します。すると…

これが…

こんな風に変化。タイトルと写真がターゲットユーザーに最適なものに自動で変換されるように(リード文章は自動生成されない)。
Adobe Sensei(AdobeのAI)が訪れたユーザーの過去の行動データを参照し、最適な言葉や写真を用意してくれるんですって。しかも、どれくらい効果的か、どれくらいコンテンツと関連性があるかなどもスコアとして表示してくれるという。「やだ、この写真私の好みにピッタリ…」と思うユーザーが増えれば、クリック率も増えよう。ブログとかでも便利じゃなかろうか。
デジタルで着せ替え。ファッションとECを変える
ファッションとECの結びつきは年々強まっていますが、自分とまったく体型が違う人の着こなしはあんまり参考になりません。これを解決するのが「Clothes Swap」、わりと読んで字のごとくです。

サイト内に商品とモデルが並び、気になる商品と自分の体型に近いモデルを選択。しばらく待てば、選択した服を着たモデルの画像が次々に自動生成されるというものです。逆に、1つの商品を様々な体型のモデルに着せれば、いろんな体型の人に訴求できる画像が得られます。AI、3Dモデリング、機械学習で、より現実的な試着イメージを見せてくれる感じですね。
また、ユーザーが自分の画像をアップロードすると、該当する服を着た画像が生成されるなど、「この人が着てるところを見たい」を叶えられるのもAIゆえの利点です。
服を販売する側にも大きな恩恵があります。同じTシャツを体型の違うモデルごとに撮影する、XS〜XXLまでの着用画像を全部用意する、そうしたコストをカットできるのですから。やはり画像生成とAIは相性が良い。
アクセシビリティ向上が、たった数クリックで
「Adobe Experience Cloud」の責任者であるスティーブ・ハモンドが、世の中を変える可能性があると紹介していたのが、この「Access Ace」です。アクセシビリティを意識したデザインが求められる昨今、この機能を使えばコンテンツ制作に革命が起きるかもしれません。
視覚障害のある人は小さな文字や特定の色をうまく認識できず、コンテンツ製作者の意図した受け取り方ができないケースがあります。

デモで紹介されていたこのHTMLメール、Access Aceのアクセシビリティチェッカーにかけたところ、アクセシビリティスコアがあまりよくありません。HTMLをスキャンし、どこがアクセシブルでないか、なぜそうなのかまで教えてくれます。
すごいのは、ボタンをワンクリックするだけで、こうしたアクセシブルが一発で改善するんです!

アクセシビリティ改善は手作業で対応することが多かったそうな。どの部分がなぜアクセシブルじゃないかを判断するのも難しそうですし、こうした判断はAIに任せると良いところなのかもですね。「Access Ace」があれば、果たして世の中のWebページの何パーセントが、今まで届き得なかった人に届くようになるのか。WHOによると、視覚に何らかの障害がある方は世界に約22億人いらっしゃるそうです。
ゴールへの最適な道筋はSenseiが調べます
「Bon Voyage」はAIをわかりやすくサイト分析に活用しています。Adobe Experience Platform内で利用できるJourney Orchestrationに付随する機能で、多くの人が使うものではなさそうですが、なかなか興味深い仕事をしていますよ。

Journey Orchestrationでは利用者の導線=パスを設定しますが、「Bon Voyage」はさらに目標金額とゴールタイプを設定します。パスを公開し、数週間が経って進捗を確認すると、達成率がイマイチと出た。ここでAdobe Senseiの出番。どのタイミングで利用者のエンゲージメントが低くなったのか、またどの時間帯にどんな反応を示すのかを分析してくれます。ユーザーごとに見ているのがすごいところ。
「今まではクーポンをお知らせしていたけど、この人たちにはクーポンよりも新メニュー追加の方が反応が良い」などがわかれば、エンゲージメントも売上もアップ。あえて達成目標を作ることで、達成に向かって微修正できるのがメリットだそうですよ。目的を作ることで、Adobe Senseiも分析しやすいのかもしれませんね。
たくさんの画像の編集、もうSenseiにお任せで
IFTTTしかりZapierしかり、異なるサービスの連携は効率化に欠かせません。Adobe製品を連携させるAdobe I/Oを利用した「Gluestick」なら、ドラッグアンドドロップのような簡単な手順でAdobe Experience Platformのサービスを連携できてしまいます。

デモでは、大量のRAWデータをピントチェック&トリミングし、Web品質にしてアップロードするフローを自動化していました。興味深かったのは、ピントが合ってるかの自動チェック、Adobe Senseiによる主要な色の抽出とスウォッチ自動生成、および自動タグ付けですかね。重いRAWデータをアップロードしているあいだに、Creative Cloudには自動処理された画像がポンポン上がってくるワケです。「青いシャツ、デニム」なんかのタグもちゃんと付いてる。ぜったい手作業でしたくないやつ。
PhotoshopのアクションやIFTTTと似たような機能といえますね。複数人が関わるプロジェクトなどで、反復作業になりがちなデータのやり取りを自動化しておけば、時間の節約になるでしょう。それに、Adobe Senseiをフローに組み込めるならもっと面白いアクションも作れるはず。
AIは賢くなっていくに決まってるので
いやもうAdobe Sensei無双じゃないかと。SenseiっていうかもはやWizardじゃないかと(先祖返り)思ったのですが、今回のSneaksを見て、改めてAIは賢くなっていくしかないなと痛感しました。
今や人類のあらゆる行動はデータとして記録され、記録から傾向を抽出し、ビッグデータは肥え続ける。僕たちがただ生活するだけで、AIができることは増え続け、より効果的な方法を閃いていく。僕たち自身も知らない僕たちの仕組みをSenseiはまるっとお見通しなんだろうなぁと思うと、そら恐ろしいものもありますねぇ。
AIができることが増えてきたら、人間は何に向き合いましょうか。ユニークな見出しを考えたり、マーケティング会議に使っていた時間を、ほかの時間に使えるとしたならば。試しに、ギズモード・ジャパンの記事の見出しもSenseiに考えてもらいたいですね。でもそっちの方が反応良かったら…どうしましょ。
Source: Adobe