封鎖解除の切り札に。新型コロナの集団抗体検査、米スキー村で初実施

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  • author satomi
封鎖解除の切り札に。新型コロナの集団抗体検査、米スキー村で初実施
Image: United Biomedical/ABC News

知らぬ間にコロナに感染して治って、免疫機能がある人は何人いるの?

そんな素朴な疑問に最終回答を出すべく、4,000m級の山々に囲まれた名峰スキー村のテルライド(写真上)を中心とするミゲル郡が、米国で初めて全郡民約8千人に新型コロナウイルス(COVID-19)の抗体一斉検査を実施。ABC Newsが報じています。

抗体を獲得した人数を把握することが、ロックダウン解除のゲームチェンジャーになるのではと期待を持たれています。

抗体ってなに?

抗体とは、ウイルスを撃退する働きを担うたんぱく質のこと。新型コロナウイルスに感染すると、通常10日ほどで血中に抗体ができます。これを調べればウイルスの足取りが掴めるというわけです。また、免疫機能は身体にしばらく備わるので、まだ一度も感染してない人ほど厳密に家ごもりしなくていいと言われています。

全検査を寄付

テルライドでも新型コロナの影響は深刻で、スキー場が閉鎖となって外出が制限され、住民は治療・入院設備を備えた病院がひとつもない空気の薄い高山で常に酸欠リスクに苛まれています。

検査を提供するのはUnited Biomedical(総合生物医学公司)という会社。共同創業者のMei Mei HuさんとLou Reeseさん夫妻(写真下)がたまたま子供たちと一緒にテルライドに在住することから、地元の郡に掛け合って共同で実施することになりました。 検査キットはすべて夫妻から無償で提供されます。

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Image: ABC News
United Biomedical共同創業者兼共同CEOのMei Mei HuさんとLou Reeseさん夫妻

左のMei Meiさんは同社を創業した女性実業家・王長怡董事長のお嬢さんです。フォーマルな姿は、Fortuneの1年半前の動画で見れますよ。「これまで会った中で一番頭のいい35歳を紹介するわ」と司会者に言われて「どこ?」と見回したり、ファンになること間違いなし。親に反抗してペンシルバニア大の文系に進学し、ハーバード大学院で弁護士資格を取ってマッキンゼーで働いていたのですが、約10年前に家業が大変なことを知って助けたら経営が上向いて専業になりました。アルツハイマー予防接種用ワクチンなどが同社の主力製品です。

検査はどうやるの?

United Biomedicalの抗体検査は酵素免疫測定法(ELISA) 法による血清検査で、HIV検査のように血液を採り、COVID-19を撃退中かどうかを確認するタイプのものです。鼻に綿棒突っ込んで行なう検査は、サンミゲル郡の場合、結果が出るまで最低でも5日もかかりますが、これなら48時間で結果が出るんだそうです。精度は中国で検証済みで、「交差反応もない」とMei Mei共同CEOは話しています。

日本でも3月上旬に横浜市立大学医学部微生物学・梁明秀教授のチームが関東化学のキットで抗体検出に成功して話題になりましたよね。そちらはELISA法なら2時間半、 イムノクロマト法は15~30分で判定できるということでした。長崎大学キヤノンメディカルシステムズが先日発表した蛍光LAMP法によるウイルス遺伝子検査も40分の迅速判定タイプなので、組み合わせたら最強ですねー。

抗体検査だけに頼るのはリスキーな3つの理由

よっしゃー、これでロックダウンにおさらばできる!ピース!と思いきや。まだ次の3つのハードルが残っています。

①抗体があってもウイルスが身体に残っていたら人にうつしてしまうかも!

②再感染リスクも不明だし!

③抗体で免疫が続く期間もわかってないんでしょ!

①はウイルス検査でダブルチェックするなり、観察期間を置くなりしてから、免疫パスポート発行というような、システマティックな対処が求められますし、②については「治ったと思ったらまた感染した」という事例が各地で報じられていて「再感染するんじゃ抗体調べても意味ない」という不安もあります。過去に流行ったコロナのMERSは回復後すぐ再感染するリスクは低め。新型コロナも低めであることを祈るばかりです。③は数カ月か1年か数年かまったく見当がつきません。これも検査の継続実施で解明が待たれるポイントです。

検査後はどうするの?

夫妻の「願ってもない申し出」(Grace Franklin郡保健部長)に地元は大喜び。検査は強制ではないのですが、「情報は少しでも多いほうが助かる」とみな協力的です。

全郡民に14日間の間隔を開けて2回任意で実施する予定で、3月半ばから救急隊員、医療、教職、必須業務の従事者とその家族から先に実施しているのですが、まだ感染者はひとりも出ていません。抗体検査1本で営業停止を解除することはできないにしても、「郡内感染状況と感染の有無を見える化できれば、住民の健康を守って、医療施設への負担を最小限に抑えながら、平常運転再開許可の目途も立てられる」とFranklin保健部長はThe Denver Channelに期待をにじませています。

NY州も抗体検査実施、開発レースが加速

抗体検査といえば、NY州ではすでに医療現場で働く人たちに実施中ですし、FDAが緊急使用許可方針を示したことで全米の研究所で開発レースが過熱中です。United Biomedical社は中国と台湾で10万件の検査実績があることが強み。「週数万件から1週間で週20~30万件に検査数を増やした。4月中には1日100万件までキャパを上げる予定」といい、NYやカリフォルニアなどにも幅広く展開していきたい方針ですよ。

米国では「すでに準備完了」!?

NYが死者824人の過去最悪を記録した9日、米国立感染研究所長のアンソニー・ファウチ博士は「最終的な米国の死者の数は6万人ほどになる」と先の予測(10~20万人)を大幅に下方修正し、「上昇カーブはやっと横ばいになった、あとひとがんばりだ!」と国民を全力で励ましました。その会見で忘れなかったのが、抗体検査のトピックです(やっぱりここが肝なのね…)。

「すぐというのは、製造元の人や企業から聞いた話で、数日か数週間で大量に用意できるだろう」、「抗体検査は重要。もう感染済みの人も大勢いるのかと思う。症状が出なくて気づかないだけで。感染済みならコロナウイルスも撃退できる率は高い。さらに検査は必要だが。通常の社会に戻れる人もたくさんいると思う」

いやあ…心強い言葉。今すぐ欲しい…。

水際、クラスタの段階を過ぎて、感染経路が特定できないパンデミックに達した今、「感染規模の把握と免疫獲得者のカテゴリ分け」(共同CEO)はだれもが気になること。結果に注目ですね!

2020年4月10日 追記:4月9日時点での情報を追加しました。

Sources: ABC News, The Denver Channel

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