コロナ特需のAmazon倉庫で感染蔓延。内部告発者を経営陣が解雇し「頭よくない」とネガキャン

  • 68,426

コロナ特需のAmazon倉庫で感染蔓延。内部告発者を経営陣が解雇し「頭よくない」とネガキャン
Image: Leon Neal/Getty Images News/ゲッティ イメージズ

仕事がないのも地獄だけど、出番も地獄です…。

NY都市交通局では新型コロナウイルスで地下鉄・バス運転士ら50人が死亡し、 1,900人近くが感染、さらに5,000人が自宅待機になって交通機能が麻痺していますが、必需品を扱うAmazon倉庫ワーカー40万人の労務環境もシビアなようです。

平時の50倍(食品部門)という空前の受注ボリューム。ノルマに1秒でも遅れると査定が下がって報酬が消えるので、手を洗う暇もなければ、防護具も消毒剤も充分なくて、互いの間隔を空けられない作業も多く、休憩室は混み混みです。当然のことながら体調を崩す人は増えているのに、無言で休みを言い渡されて感染数は公表されないので、倉庫内でどれくらい広まっているかもわからない不安の中で作業を続けている、とレポートされています。

NY最大の倉庫では感染数をひた隠し

最悪なのが5,000人余りが働くNY最大の「JFK8」倉庫(スタッテン島)です。The Vergeが紹介している管理アシスタントのBarbara Chandlerさん(40)も、吐きながら勤務を続ける作業員ら数人に帰宅を命じてるうちにダウン。熱がなかったので勤務後に検査を受け、出社を続けていたんですが、目が血走ってるよと別の管理アシスタントのChristian Smallsさん(31、3児の父)に3月24日帰宅を命じられ、やがて陽性と結果が出ました。

無理して通勤したのは、陽性なら2週間有給休暇をもらえるけど、陰性は休業手当がないため。

現場管理者がストして即日解雇

20200408Amazon_Smalls
Image: CNBC
デモ後解雇されたSmallsさん(右)

帰宅を命じたSmallsさんは「3児のためにも死ねない」という考えの持ち主で、シアトル(米国初のクラスタ)に出張した同僚が病欠をとったのを見て、自主的に有給を消化していました。いつまでも休んでもいられず出社したんですが、吐しゃ物を拭き清めて作業を続ける現場の様子を見て不安は増すばかりです。ほかの倉庫のように一時閉鎖と消毒をするよう経営陣に再三求めても、「CDCのガイドラインに従ってるし、感染者もひとりも出ていない」の一点張りで取り合ってもらえません。「3月11日に初の感染者が出た」という情報は管理者ミーティングで聞かされましたが、社内では決して口外しないように言われたので、ほかの作業員はViceの報道で知らされる始末。月俸80~100万円の仕事には何ら不満はなかったのですが、「こんな環境ではみんなが安心して働けない」とデモし、即クビになってしまいました。

報復人事の疑いで市が調査

解雇理由についてAmazon側は「濃厚接触後14日間の有給休暇を命じたのに従わなかったからだ」としていますが、米上院議員3人がジェフ・ベゾスCEO宛てに送った8日付けの公開質問状にはこうあり、懲罰人事の感が否めません。

(Smallsさんは)自宅待機を28日に命じられ、30日に解雇された。しかしながらAmazon広報に確認したところでは、陽性反応が出た社員の最終勤務日は3月11日ということなので、14日の待機期間は3月25日で終わっている。自宅待機を命じられたのは、解雇された社員が情報開示と保護強化を求めるデモを行なった後のことであり、接触から2週間以上経ってからだった。

濃厚接触というのは24日のChandlerさんのことかもしれませんが、「十分な距離をとって5分ほど会っただけだ」とSmallsさんは話しています。また、半日接触した作業員には待機命令はおろか感染の通知すらなかったそうで、ビル・デブラシオNY市長が市人権委員会に事実関係を調べるよう命じています。

経営陣は「頭がよくない」キャンペーンの悪だくみ

強制解雇だけでも打撃なのに、ベゾスCEOを交えた経営者会議ではSmallsさんを「頭のよくない」「組合活動の顔」に仕立て上げるネガキャン戦略まで周到に話し合われていました。VICE編集部が入手した議事録の中で、David Zapolsky法務部門トップはこう語っています。

「彼は頭もよくないし理路整然と話せない。こちらのほうがはるかにマスコミ受けはいいし、こちらがいかに懸命に作業員の保護に努めているか、たたみかけるように説明するだけでずっと優位に立てる」

「反論ではまずデモ扇動者の取った行動がいかにモラルに反する許すまじき行為であり、見方によっては違法行為だという点を事細かに述べる。それがひとしきり終わってから、いつものように作業員の安全方針を述べる。彼をニュースの中心に据え、可能であれば組合/抗議活動全体の顔に祭り上げるのだ」

うへ…。Smallsさんは「待遇や福利厚生には不満はないし、組合には一切関与していない」と言ってるんですけどね…。

この問題発言は社内で大いに転送されて報道機関にリークし、NYの議員が怒りまくって、Amazonのダークサイドを世界に喧伝する結果になりました。

反省のフリしてネガキャン

Zapolsky氏は「感情にまかせた失言だった」と後日インタビューで反省の色を滲ませていますが、「自宅待機命令を無視して何度も出社してほかのAmazon社員の健康と安全をリスクに晒す社員に憤りを感じてつい口走ってしまった」と、ちゃっかりネガキャンも忘れてはいません。

バーニー・サンダース上院議員が公開質問状を出し、「労働者を守れないばかりか、危険な労務環境に声を挙げたワーカーを解雇するとは、世界一の富豪の会社が聞いて呆れる」とツイートしたら、オバマのホワイトハウス元報道官で現Amazon上級VPのジェイ・カーニー氏が「Smalls氏は社会的距離を意図的に破った。14日間の有給休業命令を無視して倉庫に戻って全従業員を危険に晒すことこそ許すまじき行為だ」と打ち合わせ通りにネガキャンを発動。さっそく評論家のMeagan Day女史に「もっと濃厚接触の作業員が何十人もいたのに解雇されたのは彼だけだと本人から聞いたけど、それについてコメントは?」と返信されて沈黙してますよ。

社内に検査施設をつくることに

ノルマ優先で安全後回しな職場環境の改善を求める従業員1,500人の署名が集まり、50以上の倉庫で感染が確認されたことを受け、改善も急ピッチで進んでいます。たとえば…

・倉庫でマスクを配る

・検温する(熱があったら3日無給で休む)

・間隔を破ったらクビ

・パートにも有給を認める

まあ、熱が出ない人もいるし、熱があっても2週間有給を取るには陽性判定か待機命令が必要です。2週間で治らなかったら無給だし、医師に自宅療養を言い渡された人は有給の対象外になってしまいますけどね。米国労働安全衛生局のガイドラインでは診断書提出を有給の要件にはできない決まり。検査不足では病欠の色分けもできないため、9日には社内独自の検査施設を早急に開設してパニックを鎮める計画であることを明らかにしました。

実店舗の倒産が相次ぎ、求職者には事欠かないAmazon。足元を見るのではなく、ここは適切な対応で範を示して欲しいですね!

Sources: The Verge, The New York Times(1, 2), Reuters, United States Senator

    あわせて読みたい

    powered by