仮想狂気な2020年代、ギズモード・ジャパンよどこへ向かう

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  • author 西條鉄太郎(METACRAFT )
仮想狂気な2020年代、ギズモード・ジャパンよどこへ向かう
Photo: VICTOR NOMOTO

果たして未来はどうなるのか?

スマホが一般化した現在、ポストスマホとか言われながらも何も出てこない現状。テクノロジーは今後どんな道をたどるのか。

元ギズモード・ジャパンのライターで、現在はアート&ビジュアルクラフトチーム、METACRAFT(メタクラフト)を率いる西條鉄太郎さんに、「テクノロジーとクリエイティブの未来」について寄稿してもらいました。「未来」の話は、西條さんが手がけたMVの制作から、エモーションドリブンの話へ。

元々パンクなひとなので、いつものギズのテンションとはだいぶ違いますが、大目に見てください。




今回ギズモード・ジャパンから、「ビジョンが必要だからアイデア欲しい。未来についてなんか書いてくれ!」とざっくりすぎる依頼をされたんだが、何を何から書けばいいんだろうか…。未来なんか知らねーよ!

とにかくまず、筆者が何者か説明せねばなるまい。そこから話を広げていこう。筆者がギズモード・ジャパンのライターをやっていたのは、今からちょうど10年前。2010年〜2013年くらいのことだ。米Gizmodoが「iPhone 4」試作機を不正入手しリークした記事や、ギズモード・ジャパンのメンバーが奇妙なハリボテのiPhone帽子をかぶってAppleストアに並んでいたのがバズった時期。筆者が関わりはじめた頃のギズモード・ジャパンは米Gizmodoのローカライズ記事が多くを占めていて国内の話題が少なく、その辺をカバーできるライター(というかブロガー)のオーディションがあった。そこで、編集部宛にギズモード・ジャパンのクローンサイトをつくって送りつけ、たまたま合格したのが、当時学生だった筆者である。

2010年代はArduinoでサブカル界のスターになれた

当時は、WIREDの編集長だったクリス・アンダーソンが「メイカームーブメント」という”誰でも彼でも製造業で起業家なれちゃって、やべえことなるぞ、みんなやったれ!”的な言葉を提唱した時期で、日本でも東工大でMaker Faire Tokyoが行われ盛り上がっていた。レーザーカッターや3Dプリンタもそうだが、Arduinoを筆頭としたカジュアルマイコンと、さまざまな情報のオープン化が流行ってて、メイカーズに対する波だけではなく、インタラクティブアートへの波も押し寄せていた。おそらくこれまで、このふたつの潮流が紐づけられて語られたことは明確にはなかったけれど(あった?)、源流のところではカジュアルマイコンブームってとこで交わっていたはずと筆者は思ってる。

「いろいろ光らせたり、動かせる! これは筆や楽器に変わるこれからの新しい表現のツールだ! モテそう!」ってワクワクがあったから、著者は、そういったテック&クリエイティブなネタを、意識的によくギズモード・ジャパンで取り上げていた(あと、下ネタと、深海魚ネタを)。ガジェットにおける”数値のスペック”にはあまり興味がなく、ユーザーのアイデアや、それらの背景にある文化やそこから生まれる芸術の方が面白いと思ってたので。

当時のギズモード・ジャパンの国産記事はiPhoneとかSONYの新型カメラとかの「数値のスペック」ばっかり取りあげてたけど、今のギズはどうなんでしょうかね? 持ち物自慢するスネ夫みたいなメディアになってませんか? 大丈夫ですか?

2020年代はバーチャル・ナエバの時代へ

FUJI
Photo: TETSUTARO SAIJO

で、2020年を迎えた今、メイカーメディアの事業停止やテックショップの倒産など、メイカームーブメントと呼ばれた2010年代の夢は一度収束しそうだし、インタラクティブアートも商業的なブームはとっくに過ぎている。誰でもモノづくりで事業立ち上げられると思ってたけど、誰でもできるわけじゃねえんだなやっぱりねってことにみんな気づいたし、今さらテクノロジーだけを推したところで、大して面白いエンタメや広告的コンテンツにはならない。

世の中にPCやインターネットが登場して以来、世界中が「アトムからビットへ」と目指していたデジタルイノベーションが2000年代後半くらいに収束して、逆に2010年代は「ビットからアトムへ」というものづくりを礼賛する時代に逆流したわけだが、2020年代のこれからは、またさらにそのカウンターで「アトムからビットへ」になる。なかでも20年代は特に”コミュニケーション”や”空間”がもっとビット化する。

例えばVH(ヴァーチャルヒューマン)の台頭や、深層学習によるディープフェイクも今後より精緻なリアルタイム処理が可能になるだろうし、一層誰もが”実存とは何か”を意識しながらメディアと対峙していかねばならない。そのうちツールが一般化して、クラスメイトの顔を使ったフェイクポルノとか問題になりそう。ミレニアルは既に当然のこととしてSNSの広告臭さや、フェイクニュースの多さにもシラけている。

空間の概念も進化が加速している。最近各種イベントが配信で完結するようになったり、これまでテレワークのテの字も頭になかった古参企業が、株主総会を慌ててZoomでやったりとかも増えている。それに配信以外にも、リアル空間に人が集まらないオルタナティブなイベントのあり方が模索されていくはずだ。筆者は今年のフジロックは当然中止だと思ってるが、代わりにスクウェア・エニックスがPS4でやれるオープンワールドのMMO的なバーチャル・ナエバをつくってこの危機を乗り越えてくれないかなって願っている。そしたら世界中からリスペクトされることだろう。5G、そして6G世界なんだし、そろそろ音楽フェスの体験も、時空間の制限を超えちゃってくれて構わない。

たまたまCOVID-19の拡散でそこらへんの意識の浸透が加速しているけれど、流れとしてはもともとあった。

Jamiroquaiが24年前に予言したVirtual Insanityのような時代だ。

仮想狂気の時代には、美学や信念がCOOLを生む

個人的に、こういった仮想狂気な、”ビット化するコミュニケーション”時代のクリエイティブは、上述に対し一見矛盾するようだけど、今まで以上に対面での繋がりや”仲間”、そして”愛”といったような人間くさい普遍的なキーワードが尊重され、アウトプットの差別化になると考えている。人と人がリアルで会うことの適わない悲しく危機的状況の今だからこそ、同じ空間で同じ何かを共有することの尊さやレア感を皆が改めて実感しはじめた。"人間"を感じさせるクリエイティブがいま世の中に必要とされている。

この記事とはまた別に、筆者が総監督として携わったJP THE WAVYの「OK, COOL」のMV制作記事が掲載されているが、その記事の内容を要約すると、「チームでの制作には信頼関係が大事。テクノロジーとかテクニックの話じゃねえよ大概。カメラとか、使うガジェットのスペックの良し悪しなんて制作の時短になるかどうかってだけだ」って話で、少年漫画的精神論のほうがテクノロジーより大事だって時もあるってことで。気合とか友情とか。WAVYとはよく行く珈琲屋の常連仲間で、コロナ騒動以前は毎日のようにそこで会っていた。このMV制作はたまたまノリ的にはじまった仕事だ。Zoomで地球の裏側と効率的な打ち合わせをするより、無言で隣に座ってる時間が長い方が、互いのパフォーマンスを引き出す信頼関係が生まれるわけである。こういう尊さは我々の周辺だけでなく、これから必然として同時多発的にいろいろなところで再確認されていくはずだ。

JP THE WAVY/YouTube
WAVY
Photo:AYAMI KAWASHIMA

仮想空間の進化、ネットに溢れまくる多すぎる選択肢、非実在人間が言葉を発し、車も空を飛ぶし、手乗りのイルカが現れる。これからのテクノロジーやクリエイティブはすげー楽しいけど、一方で自分にとっての「選択基準」となる「美学」「信念」とはなんなのかを見つめ直し自問自答し続けることができないと、人間くささを持ち合わせないと、COOLな創造なんてできねえ時代がぶっぱじまりやがったんだぜである。

西條鉄太郎:ビジュアル&アートクラフトチームMETACRAFT代表。文章を書いたりグラビアを撮ったりもしている。最近ではメディア「EVELA」の編集長。


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