VanMoof X3レビュー:あまりに快適、独創的。世界初の「オートマ電チャリ」

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  • author かみやまたくみ
VanMoof X3レビュー:あまりに快適、独創的。世界初の「オートマ電チャリ」
Photo: かみやまたくみ

すごすぎてびっくりしちゃった…。

2020年4月21日、オランダの電動自転車メーカー「VanMoof」が新モデル2種を発表しました。今回はそのうちのひとつ、X3を発表前にレビューさせてもらいました。レビューに使用した車体は、製品版とは一部仕様が異なっていますが、機能や乗り味などは基本的に同じとのこと。

デザインは前モデル同様なんですが、乗ったときのフィーリングが完全に別モノになっていて目が飛び出ました。X3はオートマ電チャリとでも言うべき自転車になっています。「チャリでオートマ」と言われてもピンとこないかと思いますが、そりゃそうです。たぶん世界初のアプローチなので。いや、電動自転車にこういう発展の仕方がありえたんですね!

VanMoof X3

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Photo: かみやまたくみ

これは何?:オランダの電動自転車メーカー「VanMoof」の最新モデル

価格:25万円(税込、送料別)

好きなところ:独自の電動オート変速機と強力なモーターのおかげでとにかく乗っててラク、自転車に必要な機能がぜんぶ内蔵されている、個性的なデザイン

好きじゃないところ:あんまりない。強いて言うなら車体が重いところ

ラクさ異次元な、街乗りハイエンド

まずはX3がどんな電チャリかをざっくり紹介しましょう。系統的にはクロスバイクとママチャリの中間くらいな感じ。スポーツバイクのような軽快さと不安定さが同居したピーキーな走りではなく、安定感・安心感のあるどっしりとした走りをするタイプですね。

その一方で、ペダルを漕ぐとき重さを感じることはほぼありません最大500Wという高出力のモーターを搭載しており、漕ぎ出しはもちろん、上り坂だろうが向かい風だろうが、常にラクちんです。平均的な体格の男性であれば、かなりキツめの坂でもアシスト上限の時速24km/hを維持できるんじゃないかと。このラクさが電チャリの中でも異次元な感じなんです。そして、そこまでのラクさをどう実現したかにX3の革新性があります(詳しくは後述)。

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Photo: かみやまたくみ


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安定した制動性の油圧ディスクブレーキを採用
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仕上げが非常に滑らかで、フレームには溶接跡がまったくない
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フロントライトは内蔵
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リアライトも内蔵
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トップチューブには、LEDディスプレイを搭載。バッテリー残量や走行速度などが表示される。写真だとやや心もとない感じですが、晴れた日の日中でもしっかり見えます
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ハンドルバー右手側にはモーターの出力を一時的にアシストレベル4相当(モーター最大出力付近)にまで引き上げるブーストボタン
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タイヤは太めで、クッション製に優れ、砂利道なども悠々走れるタイプ
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このアングルかっこいい
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前モデルから継承したデザインも特徴的。アルファベットのXをあしらったフレームデザインからはアヴァンギャルドな印象を受けます。フレームの溶接跡は綺麗に消されており、細かく見ても仕上がりは上質。マットカラーが鈍く太陽に輝く感じがたまりません。写真で見ると細身に見えますが、実際はけっこうマッシブで、車体重量もあったりします(約19kg)。まぁ走行中はほぼ感じないんですが。

仕様・デザインから想像されるように、カジュアルな格好で乗って街中を流すためのアーバンバイクです。このX3で優雅に街を行くのは、出せる速度も相まって非常に気持ちがよかったです。

自転車のまま限りなく原付バイクに近づいた何か

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奥に見えるワイヤーの先が電動自動変速機
Photo: かみやまたくみ


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もちろん、外からは見えないようになっています
Photo: かみやまたくみ


X3を数ある電動自転車と分かつのは、VanMoof独自の電動オート変速機「e-shifter」。走行速度を内蔵コンピュータが認識、それに応じたギアに自動で合わせてくれます。これが乗り味にモロに影響してるんですよ。

変速がめんどい問題

自転車の変速機ってライダーがラクをするためのものです。脚が重く感じる状況(上り坂とか)ではギアを軽くし、軽すぎるとき(下りや平坦)はギアを重くする、というのがセオリー。自転車を快適に乗るには、ギアの変速がどうしても必要になります。

ただ、乗り手の体重や搭載しているギアの種類、どこを走っているか、坂なら勾配はどれくらいなのか、風はあるのか等々で最適なギアは変わってきます。的確な変速には、自転車と自分を知ることの両方が必要だったり。「め、めんどくせぇ」と思うのは致し方なし。変速機がついてても使わない人がいるというのも頷けようってもんです。

VanMoof「オートマにしちゃえばいいじゃん」

「だったらコンピュータに変速させればよくね?」というのがVanMoofの回答。これには痺れざるをえません。

自転車の操作系はこれまでずっとクルマで言うところのマニュアルトランスミッション(MT)だったのです。ギアの変更を電動で行なう仕組みはすでにあり市販もされていますが、「ギアを変えるべき」という判断をコンピュータに行なわせて自動化する──自転車をオートマチックトランスミッション(AT)化する仕組みは世界初の模様(VanMoofが調べた限りでは、同様の仕組みの製品はないとのこと。ぼくが調べた範囲でもプロトタイプレベルのものはあれど、グローバルで展開される製品への採用は初っぽい)。

オートマの概念を街乗り自転車の世界に持ちこみ、かつ乗り手がそのメリットを確かに享受できる完成度になっている点こそがX3の革新性です。ハイエンド自転車の一翼を担ってきた競技用自転車だと手動変速のほうがいいですから、こういった方向性にはならないです。カジュアルさ重視の街乗り電動自転車だから活かせる。そこをきちんとついているのは実に鋭い。

フィーリングは自転車としてはかなり独特で、原付的とでも言うのがいいでしょうか。細かな変速ができる自転車で「勝手に進んでる!」感を味わえるのは確か。的確な変速を行なえば、ペダルの存在を忘れられます。X3で新しいのは、このフィーリングに「変速するぞ」という判断も操作も不要になっているところ。陳腐な表現ですけど、「何もしてないのに勝手に進む!」の域に達しています。車体に安定感があるのもあってかなりモーターサイクルに寄った印象を受けましたね。

仕組み自体はシンプル、しかしメリットは大

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変速設定は、専用アプリから変更可能
Image: VanMoof

e-shifterの仕組み自体はシンプルで、事前に時速何km/hでギアを上げて、時速何km/hでギアを下げる、というのを設定しておき、スピードメーター経由で走行速度を認識したコンピュータが設定通りに変速を行なう、というもの。

設定はデフォルトでもかなりいい感じ。ぼんやり漕いでいても、アシスト上限の時速24km/hに落ち着くようになってます。平均的な体格の日本人男性であれば、特別な設定なしでもX3の快適さを堪能できるんじゃないかと。

面倒な変速を考えなくてよくなり体力的にも楽になるとなれば、運転や周囲の景色を見るのに頭のリソースを割り振れるようになります。そう、操作を含めた走行の負荷が低くなれば、より安全に走行でき、体験としても楽しくなるのです。電動自転車のメリットはまさにここにありますから、X3は電動自転車を独自の形で進化させた製品、といっていいでしょう。

電チャリは、「超ラクな自転車」でいいのです

ロック機構を内蔵し解錠はペアリングしたスマホから行なえたり、GPS内蔵で位置をスマホで確認できたり(盗まれても居場所がわかる)もするX3は、電子化・デジタル化を極めた電動自転車と言えます。自転車という究極的なところでアナログなジャンルにここまでテクノロジーを取り入れる余地があることを、具体的なプロダクトの形で示すというのはあまりにもすごい。

また、日本の厳しい法律下で自転車であることをやめないまま、「乗っていて気持ちいい」を突き詰めているという点も注目に値します。海外では強力なモーターを積んでスピードを上げる方向に向かった電動自転車が多いですが、日本で迂闊にそれをやるとバイク(自動二輪車)になっちゃいます。自転車であることをやめれば、免許が必要に。そうなったら、誰でも乗れる気軽な移動手段という、自転車の根本的な存在意義が失われます。そんな中で、変速という自転車のメカニズム上重要な部分に着目して走行性能の進化を実現できたのは、VanMoofの人たちが「自転車とはどういうものか」を知り尽くしているから、なのでしょう。愛と熱意を感じますね。

なんか乗りたいなーと思ったらぱっと乗れて、乗ったら運動になったり思わぬ景色が見られたりして気持ちよかったり楽しかったりする。そうした体験がきちんとでき、ふつうの自転車以上に楽しめるのが、X3のいちばんいいところです。自転車であることは変わらない、でも最先端を行く、そんな電動自転車。

気になった方は、原宿のVanMoofストアでぜひ試乗してみてください。

+α

ほかにも良いところが多いので、ここでざっとカバーします。

・価格は25万円だが、デザイン性に優れるとともに走行性能および機能性(以下に詳述)に優れるため、納得感がある。…というかカジュアルなモビリティとしてあまりに優秀なので、個人的には安いとさえ…。

・アシストは4段階、個人的にレベル3か4で乗るのが合っている印象。航続距離はレベル4で60km(往復30km)。自転車をメインの移動手段にしたい人、プライベートでの行動範囲を広げたい人にはかなりおすすめ(なお、充電が必要な電動自転車の宿命で、長距離のチャリ旅にはあまり向かないです)。

・前モデルより上り坂が圧倒的にラクになってます。e-shifterのお陰。

・前照灯と尾灯を内蔵。ハイエンド自転車では別売り品を取り付け、利用の度に充電する必要があることが多いので、本体の充電と一元化できる形になっているのは嬉しい。

・盗難対策も内蔵。まず、ロック機構を内蔵。アプリをインストールしたスマホ、またはロックボタンからのパスコード入力で解除可能。ロック中に移動しようとするとアラームが鳴る機能も。また、GPSも内蔵、盗難時はバイクハンターが探してくれるサービスを利用可能です。

・自転車に必要な機能がオールインワンになっている。別途ライトを買ったりワイヤーロックを用意したりする必要がない。買えばあとは走り出すだけというのもポイント高し(キャリアはないですが、後付け可。しなくても横に長い荷物ならフロントライト上の部分にヒモで固定できます)。

・前モデルと比べて、起動や手動でのアシスト段階切り替えの速度が速くなった。操作面でストレスを感じることはないと思われる(自転車のレビューで「CPUとBluetooth接続が高速化してる!」とか感じることになるとは思いませんでした)。

・価格以外でネックになるのは19kgという車体の重量。問題になるのは、駐輪スペースがなく、家の前に段差がや階段があるケース。家の中に上げるのはけっこう大変。加えて、バッテリーは内蔵で取り外し不可。充電も兼ねて自宅に保管するスペースも確保しなければならないケースがけっこう多いはず。

・「あまりがんばってペダルを踏まない」「気持ちペダルの回転数を増やす」のがたぶん正しい乗り方。脚に負荷を感じない程度にくるくる回す、ちょっとスポーツバイクっぽい乗り方がとにかくラクです。

・カラーはダークとライトの2色。

・体格がいい人は、兄弟機の「S3」のほうが合うはず。

Source: VanMoof

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