年俸1億円の仕事辞められますか? アマゾンVPは辞めました、社員粛清に抗議して

  • 19,175

  • author Shoshana Wodinsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • satomi
  • X
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …
年俸1億円の仕事辞められますか? アマゾンVPは辞めました、社員粛清に抗議して
Image: Leon Neal / ゲッティイメージズ

「Amazonさらばじゃ」って普通できないわあ…。

会社の頂点で働く年俸100万ドル(1億円超)のクラウドエンジニアが、新型コロナに怯えながら働く倉庫ワーカーの待遇改善を求める社員を次々クビにするAmazonに愛想を尽かして辞め、ブログで思いの丈をぶちまけています。

辞めたのはアマゾンウェブサービス(AWS)VP兼ディスティングイッシュド・エンジニアのTim Brayさん。Googleで4年働いてから入社し、「最高の仲間、最高の仕事、年俸100万ドル(1億円超)の報酬」に恵まれて何不自由ない暮らしだったのですが、「VPとして会社に留まることは、忌むべき行為を容認することにほかならない」と考え、実行に移しました。

社員への見せしめ人事に怒り

辞める直接の引き金になったのは、経営陣に苦言を呈する社員への見せしめ人事です。

Amazonでは負荷削減を求める社員の会「Amazon Employees for Climate Justice(AECJ) 」が昨春立ち上がり、秋には排出削減の株主決議を求めて社員8,702人が署名(そのひとりがBrayさん)。盛り上がりを見せていたのですが、世界中の有志が環境ストを決行した辺りから「これ以上騒ぎ立てると解雇するぞ」という圧力が上層部からかかって雲行きが怪しくなっていました。

コロナ対応でも、倉庫内の感染状況がワーカーに告知されず、防護具も情報も満足に与えられないまま不安が広まっていきます。なのに会社は「安全管理は万全だ」の一点張り。改善を求めてデモした社員も即解雇され、経営陣は解雇した社員のネガキャンの筋書きまで話し合っていたことが内部文書のリークで明らかになりました。

その後どうなったのかというと、倉庫の人たちに手を差し伸べた本社の社員まで解雇されていたのです!

倉庫で働く人たちはAECJに助けを求めた。AECJはさっそく社内で署名を呼びかけ、4月16日(木)に世界中の倉庫ワーカーをつなぐビデオコールを企画し、市民運動家のNaomi Klein氏をゲストに招くことに決め、10日(金)に社内MLで告知した。するとそれが引き金となって、AECJのとりまとめ役のEmily CunninghamさんとMaren Costaさんがその日のうちに解雇されてしまったのだ。ちゃんちゃらおかしな理由で。声を挙げて追い出されたことはだれの目にも明らかだった。

その数日後には防護具の補強を求めたミネソタの倉庫のBashir Mohammedさん(28)まで解雇になりました。倉庫初の死者がカリフォルニアで出たので消毒や防護の徹底を呼び掛けたばかりに…。解雇理由は「ソーシャルディスタンスのルール違反など」というもので、先にクビになったNYの倉庫のChristian Smallsさん(31)とまったく同じです。でも倉庫って距離を気にしてたら作業になりませんよね。監視カメラで見張っている会社が本気で取り締まったら全員クビになってしまう! というわけで、倉庫では「会社に逆らう社員をクビにする道具にソーシャルディスタンスが使われている」という批判も随分出ました。

こうした仕打ちに「ぶちキレた」Brayさん。ブログには次のような香ばしいワードが躍っています。

  • チキンシット
  • メッセンジャーを殺す
  • ストライサンド効果というものすら知らない
  • 恐怖政治
  • 首になった6人は全員、非ホワイトか女性。もちろん偶然…だよね?
  • 倉庫の人間をいくらでも替えの効く部品のように扱っている。これはAmazonのみならず21世紀の資本主義構造。
  • 間断のない成長、富と権力の集中。その陰で犠牲になる人的コストについては何もビジョンがない。
  • Amazonに問題行動があるなら法で歯止めが必要。既存の独禁法、最低賃金法、労働者保護法で充分。
  • 内部告発者をクビにするのは組織に毒が回っている証拠だ。毒は飲まされるのも、飲ますのも御免だ。

Brayさんが辞職した1日は、ちょうどAmazonの四半期決算発表の日でした。今期は前年同期比26%増の驚異的売上を記録し、ベゾスCEOは「利益はパンデミック対応の支出にすべて役立てる」意向を明らかにしました。会社が倉庫の安全対策に全力を挙げる点については「信頼できる社員から詳細も聞いている」ので、そこは信用していいとBrayさんもフォローしています。ただそこにいたるまでに社員を敵に回し、14州の検察を敵に回してしまったのは惜しかった…。隠ぺいするほど騒ぎが大きくなるストライサンド効果とは言い得て妙ですね…。

Brayさんのその後も気になるとことですが、そちらは大丈夫。もうGoogle、Huaweiなどからラブコールがかかってるみたいですよ?

よかった…。

2020年5月7日 12:45 訂正:タイトルの誤字を訂正いたしました。

Source: Tim Bray