本人よりも健康状態を知っている人たちがいて、それが知らないところでシェアされている。しかもそれが合法だなんて、ゾッとしませんか…。
メリーランド大学の研究者とThe Washington Postが発表した共同世論調査によると、多くの消費者はさまざまな理由から、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)が新型コロナウイルスの拡散を追跡するために開発中の曝露(ばくろ)追跡アプリをダウンロードできないか、ダウンロードしたくないと考えているそうです。調査に参加した消費者の中には、このテクノロジーの採用そのものに反対した人もいましたが、多くの人は長年アメリカの医療制度をむしばんできた大手テクノロジー企業を信用できないのだそうです。
大きく分かれる接触追跡アプリへの信用度
数字を見ると、これらの企業のデータを信頼している消費者と信頼していない消費者の意見は大きく分かれています。研究者らが調査対象とした人のうち、スマートフォンを所有する成人の41%がAppleとGoogleの技術を使用して曝露追跡アプリを「使うだろう」と答え、41%は「たぶん使わないだろう」「絶対使わないだろう」と答えています。残りの18%は、経済的な理由や、スマートフォンに弱いとされてきた高齢層に属しているため、スマートフォンを所有していなかったそうです。
当たり前ですが、この実験に参加するには電話が必要です。AppleとGoogleが共同開発したこの曝露通知APIは、公衆衛生当局が提供する健康管理アプリに組み込むために開発されているそうです。この技術の仕組みはこんな感じ。
1. スマートフォンをBluetoothビーコンに変換して、絶えず変化する追跡コード「一時曝露キー」を発信します。
2. AppleとGoogleのAPIを使っている健康管理アプリを持っている誰かが6フィート以内(約2メートル)を通ると、スマートフォンが詳細情報を交換します。
3. どちらかの人が新型コロナウイルスに陽性反応を示した場合(そしてその情報が自分のアプリに登録された場合)、もう一方の人が感染者と接触した可能性があるという通知を受け取ります。
4. AppleとGoogleがAPIアクセスを許可している公的医療機関も、ユーザーが許可すれば同じ情報を共有できます。
医療データにプライバシーは存在しない
こんなのを見ると、「(たぶんもしくは絶対)使わないだろう」と答えた41%の人たちが懐疑的になるのも無理はないですよね。Googleが新型コロナ専用サイトを通じて民間製薬会社に医療データを提供する可能性や、Appleの消費者医療データ網、そして「健康データ」の大部分がアメリカのプライバシー法から完全に除外されているという事実を考えると、ちょっと不穏な感じがします。とはいえ、今回のことを抜きにしても、これらの企業(ここに書かれていないたくさんの企業も含む)は、曝露通知アプリをダウンロードするかどうかなんて関係なく、私たちの健康データをゲットするためにできる限りのことをしています。
私たちには見えないところで医療記録がますますGoogleに委ねられるようになり、Appleは2018年にApple Healthを立ち上げて以来、記録管理システムを自前で作り上げています。どちらのケースでも、ますます経済的な負担が大きくなってきている医療システムは、たとえそれがシリコンバレーの中心部に直接つながっていようと、最も簡単に利益を得られる道を選択するでしょう。ちなみに、病院自身が健康データを使って何をしているのかは、誰にもわかりません。プライバシーなんて過去の遺物のよう…。
これはもう新型コロナ対策としての接触追跡技術がプライバシーを危うくしてるという問題ではなくて、むしろ、AppleとGoogleが新型コロナウイルス問題を解決しようと努力していることで、健康データにプライバシーなんて存在しないことがより鮮明になったっていう話のような気がしますね。