地球にもっとも近いブラックホールが発見されたかもしれない

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
地球にもっとも近いブラックホールが発見されたかもしれない
Image: ESO/L. Calçada via Gizmodo US

もしこれが本当にブラックホールだったら、地球から肉眼で見れちゃうほど近いそうです。

地球から1,000光年離れたところにあるHR 6819という星系。三つの星のうちのひとつは姿が見えないながらももうひとつの伴星に影響を及ぼしているとされ、ブラックホールではないかという見解が発表されました。

もし研究者の主張が正しく、これが「静かな」ブラックホールなのだとしたら、地球から意外と近い場所でもこのようなブラックホールをたくさん見つけられるかもしれません。

見えない標的

静かなブラックホールとは、X線を放出していないブラックホールのことです。

「天の川銀河に含まれているブラックホールの大半は静かなブラックホールだと考えられていて、1億個ぐらいあるんじゃないかと言われていますが、そのうち今まで見つかっているのは100個ぐらいです」と説明してくれたのはヨーロッパ南天天文台に所属している天文学者のMarianne Heidaさん。「そういう意味では、今回の発見は氷山の一角に過ぎません」。

HR 6819が発見されたのは2004年でした。当初はわりとふつうの伴星がお互いを周回していて、少し離れたところにもうひとつの星が伴星を周回しているだけだと思われ、さほど注目されていませんでした。ところが、三つの星の光を星ごとに分析する段階で、奇妙な事実が判明しました。真ん中にふたつあるはずの星がひとつしか見当たらなかったのです。

計算してみると、伴星の片方がもうひとつを覆いかくすようなことは無理でしたし、質量が少なくとも太陽の4.2倍あるはずなので中性子星にしては大きすぎることもわかりました。とすると、残された可能性はただひとつ。ブラックホールを発見しちゃったみたいだ!

灯台下暗し

これは二重の意味での大発見です。

まず、1,000光年は宇宙でいえばとても近い距離です。今回の発見について研究論文を執筆したヨーロッパ南天天文台のDietrich Baadeさんいわく、「天の川銀河のスケール感で言えば、庭ぐらい…いや、もしかしたら玄関ぐらいの近さ」なんだとか。

さらに、今回はこれまでとは根本的に異なる方法でブラックホールを探し当てたことになります。光さえも吸いこんでしまうブラックホールは当然望遠鏡では見えないので、従来ブラックホールが発する強力なX線を頼りに観測してきました(ブラックホールは物質を吸いこむ際に高温のガス円盤を形成し、ここからX線を放射しています)。

ところが、今回発見したような静かなブラックホールはX線を放出していないので、従来の観測方法では見つけられずじまいでした。地球からこんなに近いところに静かなブラックホールが存在しているとしたら、いままで見つけられていなかっただけで、ほかにもたくさんある可能性大です。

賛否両論

この発見について数人の天文学者に意見を伺ったところ、研究結果に信頼を寄せている人もいました。

カリフォルニア大学バークレー校で天文学の研究を行っている院生のKareem El-Badryさんは、「こんなに明るくてよく知られている星の裏側にブラックホールの候補が潜んでいたのを発見したのはすごいよ」と驚きを隠せない様子で語ってくれました。

ただし、伴星の質量を計算するのに用いた数式が仮定に基づいていることも指摘しています。その仮定がもし間違っていたら、姿が見えない星の質量はもっと少なくなるので、中性子星か、それよりももっと平凡な星である可能性も。

一方、オークランド工科大学のJJ Eldridge准教授は、ブラックホールだと断定するには論文の分析が不十分だと感じています。「これはきっとなんの変哲もない星系なんだと思います」と米Gizmodo宛にメールで見解を述べてくれました。「おそらく星は三つではなく、二つだけあると考えられます。その場合は、星のひとつがガス円盤を持つBe星なのではないかと思われます」。

Eldridge准教授の見解は、つい最近話題に上っていたLB-1という別の星系にも関連しています。LB-1も三つの星から成る星系で、そのうちのひとつが太陽の70倍の質量を持つブラックホールだとされていました。しかし、今では星系の質量の計算が疑問視されており、ブラックホールは存在しないとまで反論されています。

今回新たにブラックホールを発見した研究チームは、LB-1にもブラックホールが存在すると主張していますし、Eldridge准教授はどちらもブラックホールではないと否定しています。

いずれにせよ、これは天の川銀河のひとつのブラックホールに過ぎません。まだまだ何万、何億ものブラックホールが至るところにひっそりと存在しているはずで、今後もHR 6819のような星系を探し出して、静かなブラックホールの存在を突き止めたいとBaadeさんたちは意気込んでいます。

南半球に住んでいる読者は、星が見える夜に「ぼうえんきょう座」を探してみてください。もしかしたら、あなたが見ているのはブラックホールかもしれないですよ。

おとなりのブラックホール ほしい?

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