スペインで7週間のロックダウンが解除され、初めてランニングした日のこと

  • 6,893

  • author Jody Serrano - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
スペインで7週間のロックダウンが解除され、初めてランニングした日のこと
Image: alvarobueno / Shutterstock.com

ランニングする人、増えてますよね。

かくいう訳者もステイホーム生活が始まってから「にわかランナー」になりました。マスクを着用して、できるだけ人出を避けながら早朝ランに出ています。

緊急事態宣言下とはいえ、日本ではなるべく外出しないようにお願いされているだけなので、好きなときに外で運動できるのはありがたいかぎり。一方で、最近まで厳格なロックダウン体制が敷かれていたスペインでは、ランニングや散歩すら許されていない状況でした。

7週間続いたロックダウンがついに緩和されたのが 5月2日。その日を心待ちにして、入念に体の調子を整えて49日ぶりのランニングに挑んだスペイン在住の米Gizmodo記者・Jody Serranoさんの体験記は、同じくコロナ禍を生き抜く私たちにさわやかな風を届けてくれます


この一週間、この日を待ちわびてきました。

スペインがついにコロナ対策ロックダウンを緩和して、人々が外で運動したり散歩したりできるようになる日を。

ロックダウンの辛い現状

スペインはアメリカに次いで世界で2番目に新型コロナウイルス感染者が多い国となっています。だから、感染状況に改善が見られないかぎりはロックダウンを緩和しないという条件つきでした。ほんとうに緩和してくれたらと心の底から願ってはいたものの、もし実現しなかった場合にも心が折れないよう、身構えていました。

私はアメリカのテキサス州出身ですが、2016年からスペインの首都・マドリードに住んでいます。今アメリカでは屋外での運動や散歩がほとんど許されていますが、スペインでは食品の買い出し、銀行の用事、リモートワークができない職種の人の通勤など、ごく限られた行動以外の外出は禁止されていました。この7週間、スペインで暮らす大半の人々はこれらの限られた行動だけしか取れなかったのです。

厳格なロックダウンが緩和されるかもしれない。そう知っても、友人に宛てたメッセージには「ojalá(願わくば)」とか「a ver(様子を見ましょう)」などのなまぬるい表現が満載でした。こんなにも長い間自宅に閉じ込められっぱなしだったので、本当に感染状況が改善したとは信じ難かったんです。とはいえ、私たちは自宅に篭る必要性を充分に理解していましたし、ヨーロッパ内でもとりわけ厳しいロックダウンのおかげでスペインはウイルスの拡散をコントロールできたとも思っています。

でも、ロックダウンは身体的、精神的に辛いものでした。この数週間、活力が湧かなくて、なかなか寝つけない夜が続きました。一日中座りっぱなしで脚が痛みましたし、初めの頃こそは家でダンベルトレーニングに取り組んだりもしていたんですが、最近ではそのモチベーションすら失ってしまっていました。さらに集中力が散漫になり、日によっては誰にも話したくないと思うこともありました。一人暮らしなので、このロックダウンが始まって以来友達とは誰とも会っていませんでした。

外出が可能になる日

それが日が経つにつれて、私や私と同じ境遇にいる何百万もの人たちの共通の願いがほんとうに叶うかもしれないと思うようになってきました。スペイン政府はロックダウンの規制緩和を4段階のフェーズに分けて行なうと発表。6月の終わり頃までフェーズを追って徐々に国を開いていき、最終的に「ニューノーマル」と位置づけられた新たな日常を目指す、という政府の計画が明らかになりました。

4月30日の木曜日には、Salvador Illa厚生相が外出可能な時間帯を年齢別に公表しました。14歳以上の人は午前6時〜10時と午後8時〜11時の間、親御さんは12時正午〜午後7時の間であれば子供を連れて外出可能で、70歳以上の人は午前10時〜12時と午後7時〜8時の間だけ外出が許されるといった内容でした。

この対策に従えば人だかりを避けられますし、外出もちょっとだけ気が楽になりそうです。新型コロナウイルスのリスクが高い高齢者を守ることもできます。でも、外出しても一人で行動し、運動はランニング、サイクリング、サーフィンなど他人とのコンタクトを必要としないものに限られるとのこと。また、散歩はどんなに長くてもOKで一緒に生活している人が一人だけ同行してもいいのですが、自宅から半径1キロメートル以内でにとどまる必要があるとのことでした。

運動や散歩に時間制限はない代わりに、外出は一日一回だけ、指定された時間帯内のみに限られます。

外出に備えて

これらの情報がどんどん入ってきて、金曜日を迎える頃にはどうやら本当に緩和されそうだと確信を持つに至りました。あとたった一日で、外へ出て走りに行ける…! すばらしいニュースにうれしい反面、ちょっと心配なこともありました。私はこの49日間まったく走っていなかったし、久しぶりにランに出たところで体がどう反応するかがまったく読めなかったのです。気絶するとかはさすがにないでしょうけど、せっかく久しぶりに喜び勇んでランニングしている最中に脇腹痛に襲われたりしたら嫌だなと思ったわけです。

そこで、私は考えつくベストなやり方で体を整えました。マドリードの公園はまだ封鎖されたままなので、おそらくコンクリートの上を走らざるをえない。そう考えて、ランバーエクササイズで背筋を鍛えました。そのほかも10kgの重りを担ぎながらスクワットを繰り返して、脚の筋力を強化しました。私よりもこういうことに詳しい読者の方は、たぶんこれよりももっと効果的なエクササイズを知っているでしょうけれど、私のジムインストラクターに相談したところ、久しぶりに外で走るためにはランバーとスクワットがいいと教えてもらったんです。

いざ、49日ぶりにランニングへ

そしてついに5月2日、土曜日。

目覚まし時計を7時20分にセットしていました。なんとアラームが鳴る5分前に目が覚めて(そんなこと絶対にありえないんだけど)、朝は苦手なのであやうく二度寝してしまうところでした。が、眠気でもうろうとしている私の脳ミソがなんとか今日が土曜日で外に出られる日なんだと思い出してくれました。一連のすばやい動作でベッドを抜け出し、朝食を取ってコーヒーをいっぱい飲んで、ストレッチしてから着替えました。

朝にめっぽう弱い私は動作が鈍く、家を出たのは8時45分。でも時間制限の10時まで2時間余りぶっ続けで走りたくなかったので、ちょうどいい感じでした。家の外へ出て、表通りへと一歩踏み出してみると、数十人のランウェアに身を固めた人たちの姿が目に飛び込んできました。ウォーキングしている人も見かけました。ランナーの人たちはマスクを着用しておらず、私も非着用でした。ほかのことなら何をするにも必ずマスクを着用する私ですが、走っているとき息苦しくなりそうだったから。でもウォーキングを楽しんでいる人たちはみんなちゃんとマスクを着けていました。

まずは家の近くにある、歩道が広いセラーノ通りまで歩いていくことにしました。今日外出している人の多さからして、マリオカートみたいに障害物を次々と避けていくハメには陥りたくなかったからです。本来リラックスするためのランのはずなのに。あと、数週間ぶりのランニングなので、まずは歩いて体を慣らしてから走り出したかったのもあります。これは予想以上によい決断でした。さわやかな5月の朝の空気をたっぷり呼吸して、まわりを見回す時間を取れました。

街は運動する人だらけ

街はまだ眠りから覚めていないようでした。通り沿いの店はすべて閉まっていて、車の往来はほとんどありませんでした。ウォーキングしている人たちはお店のショーウィンドウをのぞいたりしていました。かたや、ランナーたちは走りながらもソーシャルディスタンス(社会的距離)を保とうとして苦戦していました。私のように、外出が可能になったとたんに外の空気を吸いに出てきた人々で道路はあふれかえり、コロナ仕様に作られていない歩道は狭すぎて、お互い距離を保とうにもなかなか難しいものがありました。

セラーノ通りに出ると、さらに人出が多くなりました。ほかの人も私と同様に歩道の広さを考慮していたようです。でも広い通りだったので、人でごった返していたわりにはさほど問題になりませんでした。けれどレティーロ公園に着いたとたん、ランナーとウォーキングしている人でいっぱいで、一気に課題が浮き彫りになりました。

公園自体は閉まっていたものの、公園を周回することはできるだろうと考えた人が多かったようです。しかし、歩道が狭いのが難点でした。ほかの人との接触を避けるために、ついに道路に下りて走り出す人も増えてきました。それでもあまりに人が多かったので問題解決にはならず…。私はソーシャルディスタンスのルールを守りつつもランニングを楽しみたかったので、広い道路へと踵を返しました。

すがすがしい5kmランを終えて

早朝は涼しかったものの、日が昇るにつれてじわじわと暑くなってきました。私は建物の内部に住んでいて、ロックダウン以来1日5分か10分ぐらいしか日光浴していなかったので、陽射しの強さには用心していました。公共テレビで見た専門家が、長らく陽の光を浴びていない人が急に日光浴をする危険性について述べていたので、出かける前にSPF50のサンスクリーンをしっかり塗っておきました。私のシールドのようなものでした。

3kmちょっと走ったところで休憩して、脚を伸ばしました。背筋はバッチリで、脚はちょっとストレッチが必要だったぐらいで特に問題なし。うれしい驚きでしたし、ありがたくもありました。

家から10分ほどの地点で5kmのランを完走。そこから歩いて帰ることにしました。午前10時が迫っており、私に与えられた時間帯ももう終わりに近づいていました。汗がほとばしり、顔は真っ赤でしたが、体の調子はこの数週間で感じたことのないぐらいいい感じでした。歩き慣れた家路に着きながら、「ああ、ふつうだな」と感じました。ロックダウンが始まる前、新型コロナウイルスがみんなをそれぞれの家の中に閉じ込めてしまう前までは、いつもこうやって運動後にすっきりとした気持ちで歩いていたんだな、と。

ここまで来るのにたくさんの犠牲を払ってきました。完ぺきな道のりであるはずもなく、失敗もたくさんありましたが、とにかくここまで来れたのです。

まだウイルスは完全に封じ込められてはいませんが、ウイルスが私たちの生活から奪いとってしまった日常を少しずつ取り戻しつつあります

明日にはまた走る時間がやってきます。

    あわせて読みたい

    powered by