最新コロナウイルス科学:真の致死率や他の疾患との関連性について

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  • author Ed Cara - Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
最新コロナウイルス科学:真の致死率や他の疾患との関連性について
Image: Askolds Berovskis / Shutterstock.com

致死率が高いと警戒感も高まって対策が進みそうだけどとても歓迎できないし、低いと油断して対策も緩くなりそうでどっちにしても不安…。

毎日のように新型コロナウイルスについての新たな科学的洞察が行なわれています。ここでは、致死率や子どもへの影響に関する最新の研究と開発の一部を紹介していきます。

中国での大流行を減速させた極端な社会的距離

現在利用可能なワクチンや、効果的な治療薬がないため、ほとんどの国では新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにソーシャルディスタンシング(社会的距離を保つ措置)を実施しています。そして、ウイルス拡散を遅らせたり止めたりするために必要なことがようやく明らかになりつつあるようです。

4月末にサイエンス誌に掲載された最新の研究では、中国政府が移動を厳しく制限しはじめてから中国の2つの地域における人々の移動と、他者との交流の様子を調査しています。研究者らは、中国における新型コロナの大流行がピークに達して封鎖が行なわれていた2月上旬以降、上海と世界ではじめて感染例(19人)が報告された武漢の合計1,000人以上について調査したそうです。

調査によると、武漢の回答者は2019年12月に1日平均約14人と接触していましたが、上海の回答者は1日平均20人と接触していたそうです。ところが、封鎖されている間は社会的な接触が劇的に減少し、両市の人たちは1日平均で2人程度しか接触しなくなったとのこと。

研究者たちは、両市におけるこのような変化が、ウイルスの感染能力を劇的に低下させることを突き止めました。中国の公式な症例数と死亡者数の集計の妥当性を批判する人もいますが、それでも中国での発生はかなり鈍化しているようです。イタリアスペインなどの大きな打撃を受けた国々でも、社会的接触の制限によって報告された症例数は減少しています。

しかしながら、アメリカでは横ばい状態が続いています。4月に報告された新たな感染者数と死者数はそれほど減りませんでした。このようなことから、ソーシャルディスタンシングは指数関数的な感染拡大を防ぐことはできても、減少させるには十分ではないと言われ始めています。そんな状況のなかで、いくつかの州ではすでに旅行や対面販売の規制を緩和しています。

新型コロナと川崎病との関連

4月末に、ヨーロッパの医師たちが新型コロナウイルスは子どもたちに予期せぬ結果をもたらすかもしれないと警鐘を鳴らしはじめました。医師らは、まれな炎症性疾患である川崎病と毒素性ショック症候群を発症している小児の増加に気づいたそうです。このような子どもたちの一部は、新型コロナウイルスに陽性反応を示していたり、以前に感染したことが疑われています。

4月22日には、カリフォルニア州にあるスタンフォード小児病院の医師たちによって、新型コロナウイルスに関連すると思われる川崎病の発症例はじめて報告されました。救急外来を訪れた生後6か月の女児が受診直後に川崎病と診断され、その後新型コロナウイルスに感染していることがわかったそうです。不幸中の幸いだったのは、川崎病は早期に発見できれば、長期的な後遺症を伴わずに治療できることです。女児は14日間の治療と隔離を経て完全に回復しました。よかった。

川崎病は新型コロナウイルスを含めたヒトコロナウイルスなどへの感染と関連性があるとされてきましたが、この疾患がなぜ起こるのか(遺伝的特徴が一役買っているとも)については、まだほとんどわかっていません。いずれそのあたりのことは明らかになってくると思われますが、このパンデミックのなかで、若者たちだけがこのパンデミックと無関係ということはないみたいですね。

新型コロナと心臓治療薬

5月1日に発表された最新の研究では、新型コロナウイルスが特に心臓に悪影響を及ぼすことが指摘されています。

研究者らがアジア、ヨーロッパ、北米の169病院における新型コロナ患者約9,000人の死亡率を調査したところ、冠動脈疾患や不整脈などの既存の心疾患を有する感染患者は、心疾患のない患者よりも死亡する確率が高かったそうです。

心血管疾患のある人のほうが新型コロナウイルスの致死率が高い理由のひとつに、服用薬であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)があげられています。どちらの薬も、ウイルスが細胞を乗っ取るために使う受容体であるACE2(アンジオテンシン変換酵素2)と相互作用するのだそうです。この作用を懸念する一部の医師は、予防措置としてこれらの薬剤の使用をやめる必要があるかもしれないと主張しています。一方で米国心臓協会などの団体は、ウイルスに感染した場合にどちらかの薬を服用すると害があるという決定的な証拠がないとして、この主張に反対しています。

この研究では、これらの薬剤の使用と死亡リスク増大との間に関連性は認められなかったようです。心血管疾患の管理におけるこれらの薬の価値を考えると、この研究結果が覆されなければ少しは安心できそうですね。

新型コロナによる死亡率のローエンド推定値

最後にちょっとした数学を。

やたらと声のデカい少数派が、相変わらず新型コロナウイルスはたいしたことないと触れ回っています。また、報告されていない症例を考慮に入れれば新型コロナウイルスはインフルエンザほど致命的ではないと主張する人もたくさんいます。

実際の死亡率を計算するには時間がかかると思われますが、季節性インフルエンザほど低くはないはずです。まだ査読を経ていない予備研究で、ニューヨーク市、スペインのマドリード、イタリアのロンバルディで死亡した3万5000人を、3地域の合計人口にあたる2510万人で割って算出したところ、死亡率は約0.14%と、典型的なインフルエンザの推定死亡率である0.1%よりも高かったそうです。

しかしながら、研究論文でも認められているように、この数字はあまりにも大ざっぱすぎます。なぜかというと、これら3都市の住民全員が新型コロナウイルスに感染していて、これ以上の死者は出ないと仮定しているんです。初期の情報では、ニューヨーク市民の約4分の1が感染したといわれており、ニューヨーク市を含む世界中で、未検査ではあるものの新型コロナウイルス感染が疑われる多くの死亡例もあるんです。より正確な数値が出るにはまだ時間がかかりそうですね…。

新型コロナウイルスの感染地域で抗体を保有している人の数を調べて、報告された死亡数と比較するのが、死亡率を算出する最良の方法のひとつのよう。抗体に関する研究の多くはまだ進行中でもありますし、方法論について批判されている研究もあるようです。でも全体的にみると、今のところ致死率はインフルエンザの5倍以上にあたる0.5%から1%の範囲に落ち着きそうな感じです。


もっと時間がたって多くの調査が行なわれたあとに、ある程度正確な死亡率が出たとして、たとえその数値が低いと感じられるものであったとしても、継続的なソーシャルディスタンシングを含め、再流行の影響を最小限に抑えることができるような予防策の実施と、新型コロナと共にある社会づくりが必要な気がします。

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