茶の間で家族と映画を見ているときの気まずさがなくなるのかな。
映画業界は新型コロナウイルスの影響をモロに受けています。わかりやすいところで言えば、映画館閉鎖による上映延期やプレミアムVOD化、撮影中止、アカデミー賞のルール変更などなど。しかし、内容の部分にも影響が出るかもしれないというのです。
Daily Mailは、緊急事態宣言とソーシャルディスタンスの規制が8月以降に解除されたとしても、映画俳優たちが濃厚接触のシーンは拒否したいと主張していると伝えています。
つまり、『氷の微笑』や『薔薇の素顔』や『フィフティ・シェード・オブ・グレイ』や『ネクロマンティック』みたいな映画がなくなっちゃうかもしれないんです。
今のようなラブシーンは絶滅するかも
ハリウッドの濡れ場に立ち会い、俳優と製作陣の橋渡しをするインティマシー・コーディネーターで、Intimacy Professionals Association (IPA)の創設者でもあるAmanda Blumenthal氏は、いくつかのスタジオでは単純にキスシーンや濡れ場を完全になくすことで、安全を確保しようとするのではないかと感じているそうです。また、今後は俳優の中には新型コロナウイルスの感染を恐れて、キスシーンや濡れ場を拒否する人がでてくるだろうと話しています。
ラブシーンを見せるのではなく、ほのめかすといった手法が使われるかもしれません。今はまだ何も始まっていませんが、俳優陣からの要望が多いので、早急に押し進められるかもしれません。
新たな保険が作られるだろう
また、メジャーなエンタメ保険会社は、既にAリストのタレントをカメラの中と外で守るよう、撮影の前に新型コロナウィルスの検査を受けさせることなどを組み込んだ新たなポリシーを考えているとのこと。United Talent Agencyのエージェントによれば、業界は大きな懸念を抱いていると言います。
ハリウッドのすべてがストップした状態ですが、もし撮影再開ということになれば、プロジェクトにおける保険面で大きな不安があります。近年のハリウッドで、このような健康危惧はありませんでした。当たり前ですが、どの会社も人道的だけでなく、保証的な意味でもリスクを負いたくないと思っています。今の時代、脚本にラブシーンがあれば警戒しなければいけません。命がけでラブシーンを演じたいと思っている俳優はほんのごく一部です。
ハリウッドのエンターテイメント保険会社「Truman Van Dyke」のマネージング・ディレクターのRay Ossenkop氏も、スタジオは巨額な裁判に発展しないように、保険のポリシーを変えなければならないと話しているとDaily Mailは伝えています。その上で、いくつかのシーンは危険すぎて保険適応外とみなされるだろうとも話しています。
ただ、どこまで保証するのか、どれくらい保証するかを決めるのは時間がかかるかもしれません。なので、保険のポリシーがフィックスするより先に撮影を開始さ、医療チェックの頻度を上げ、ガイドラインは作成はその後になる可能性もあります。
スタジオのジレンマ
ラブシーンを演じる俳優たちだけではなく、撮影クルーや関係者にも感染リスクはあります。キスシーンや濡れ場は、脚本を変えてほのめかすことでストーリーの流れを担保できるかもしれませんが、働いている人たちの健康を守る場合、どこまで補償すればいいのでしょう。
エキストラを雇って撮影するとしても、日銭稼ぎの素人もいれば、ユニオンに加入している俳優の卵という人たちもたくさんいます。これまでならば、無所属かユニオンかで分けて規定の額を支払えばよかったものを、今後は健康を保証するために保険をかける必要も出てくるでしょう。なにせ、待機場は三密の条件を満たしやすいですし、参加者全員に保険をかけるとすると、それだけで予算は跳ね上がりそう…。スタジオ側は保険会社と話し合いを進めているようですが、どんなポリシーになるのでしょうか。
アジアに目を向けてみれば
そういえば、アジア映画の中には宗教的理由や倫理的な問題で、キスシーンや濡れ場を見せられないものもあります。しかし、ダイレクトに見せなくともほのめかすことで関係を表現するのがうまいですよね(宮崎駿監督のアニメでも、セリフから関係を推測できるなんて言われています)。
インド出身の友人から聞いたのですが、ボリウッドムービー(インド・ムンバイのインド映画産業全般につけられた名前)では官能的なシーンを流せないので、かわりにダンスシーンや海の波打ち際のシーンを入れたりしているのだそうです。これが本当なのかはわかりませんが、そう解釈している人たちにとって、そういったシーンが長ければ長いほど興奮するのだとか。直接見せない方法というのであれば、日本を代表するコメディ映画の『釣りバカ日誌』シリーズの「合体」も有名ですね。まぁ、どの映画にも使える表現方法ではありませんが…。
見せることができないとなるとチラリズムの美学が見直されるようになるかも。考えてみれば、1933年のチェコ映画『Ecstasy』まで濡れ場は銀幕に登場することはありませんでした。つまり、映画の濡れ場の歴史は100年以下と歴史はまだまだ浅いのです。それでも娯楽として成り立っていたと考えれば、どうとでもなりそう。だとすれば、残るのは保険の問題なのかもしれません。
Source: Inside Edition、Daily Mail
2020年5月28日 16:50 訂正:タイトルの誤字を修正しました。