ツッコミどころが多すぎる。
スマートホームハブメーカーの米企業winkは、先日公開したブログで「長期的なコストと昨今の経済情勢」を背景に、月額5ドル(約536円)のサブスクリプション制に移行することを発表しました。
しかも、ブログが更新されたのは5月6日、新ルールが適用されるのはたった1週間後の5月13日。ユーザーからしたら突然、「来週からは、毎月お金を徴収します」と通達されたことになります。
支払いたくない人は、どうする?
今まで無料だったサービスが、急にお金のかかるものになるとは...。同ブログによると、サブスクしたくない人に残るのは、もはや役に立たないデバイスのみ。
サブスクリプションにサインアップしないことを選択した場合、アプリから音声やAPIを介してWinkデバイスにアクセスできなくなり、5月13日にオートメーションが無効になります。
後日、サブスクリプションを始めたい場合には、デバイスの接続、設定、オートメーションを再度アクティブ化することができます。
ユーザーの怒りは、あちこちに
もちろん、ユーザー側も黙っちゃいません。Redditでは、こうした案内がわずか1週間前に行なわれたことについて「身代金だ」、「もはや恐喝に近い」という声あり。「もうゴミ箱行きだ」と、デバイスを破棄しようとする声もあり。
また、製品のアップデートがここ数ヶ月ほど不安定であったとして、会社が破綻する前にユーザーからできるだけ現金を集めようとしているのではないかという憶測も一部にあるようです。
Twitterでは、ユーザーの怒りがあらゆる方向に広がっていることが見受けられます。ある人は、アーティストのWill.i.am(2017年に自身のテック企業i.am+を通じて同社を買収)に非があると訴えたり、またある人はIoT全般が抱える問題について言及したり...。
なかには、「winkのハブの箱に月額利用料やサブスクリプションなしと明記されているのに」と鋭く指摘するツイートも。
We’re moving to a monthly subscription on 5/13 in order to better serve our users. This will enable us to continue providing the functionality customers have come to rely on, and focus on accelerating new integrations and app features. Go to https://t.co/zWYdv6HavN to learn more.
— Wink (@TheWinkApp) May 6, 2020
winkのやり方がマズい理由
スマートホームガジェットが持続しないのは、ハードウェアの売上だけでは長期的なサーバーやクラウドのメンテナンスコストを賄えないことが主な原因として挙げられます。詳しくは、「スマートガジェットの寿命が短いという事実」で取り上げています。
とはいえ、winkのやり方は消費者の頬を引っ叩くようなもの。製品を買い揃えた人ほど損をする仕組みになっていて、家中がシステムに頼っている状態の人ほど、お金を払うか、すべて無駄にするかを選ばなければいけなくなります。しかも、このことを1週間前に通告して、十分な移行期間も用意しないのもどこか"異常感"が漂っているような。
月額5ドルという料金設定に関しては、winkは「可能な限り低めにデザインした」と主張していますが、真摯な対応というよりも中指を突き立てられた気分になりそうだと米GizmodoのVictoria Songが率直な感想をぶつけています。
さらにwinkは、ユーザーデータをサードパーティに販売しないことから毎月のサブスクリプションを正当化しようとしています。実際には、会社のビジネスモデルがうまく成立していないことが原因であるにもかかわらず、ユーザーがサブスクしないことに罪悪感を持たせるような格好になり得るのもなかなか気になるところ...。
会社として、どうすべきだったのか
理想は、基本的な機能についてはサブスクなしで保証することではないでしょうか。そして応用的なプレミアム機能を使いたいユーザーにだけサブスクリプションに加入してもらう仕組みが(面倒ですが)現実的で、今回のような事例を防ぐのにも有効なはずです。
少なくとも、おそらく今の状態のwinkが最低限すべきだったのは移行期間を設けることかもしれません。特に、今は新型コロナウイルスの影響で人々の生活が通常運行できない時期です。代替となるガジェットを買いに出かけるのも困難ですし、スマートガジェットを交換する作業が面倒であることを踏まえても、「1週間後までに決めて」と促すのは酷です。
たとえば最近、古い製品の廃止を発表したところユーザーから猛反発を受け、すぐに謝罪してセキュリティ更新を続けると表明した会社があります。ワイヤレスオーディオを手掛けるのSonos(ソノス )です。それも、ユーザーには約4か月前に通達があり、状況を理解するのに十分な時間を与えました。
もちろん、winkがソノスと同じ財務状況にあるとはいいませんが、それでもWinkが抱えていた問題は一夜にして発生したわけでもないはずです。The Vergeによると、winkの従業員への給与支払いが7週間遅延していたこと、オフィスの閉鎖、カスタマーサポートラインの崩壊が報告されています。これらが事実であるならば、winkが抱えていた問題の大きさが浮き彫りに...。いずれにせよ、ユーザーの反応を受けたwinkが今後、企業としてどのような姿勢を取るのか注目したいところです。