結局のところ、Googleとプライバシーは相容れない
シェアが相変わらずダントツトップなGoogle Chromeですが、Google(グーグル)そのものがユーザの情報を商売道具にしている以上、プライバシーに関しては疑問点が多かったのも事実。そんな中、GoogleはChromeの最新アップデートを発表。その見所はプライバシー関連の強化だったのですが、米GizmodoのShoshana Wodinsky氏は納得が行っていない様子。なぜでしょうか?
Googleと聞いて、堅牢な個人プライバシーの保護を連想する人はまずいないと思います。なので、Googleが先日、最新のChromeアップデート「Chrome 83」がブラウザのプライバシーとセキュリティを大幅に強化すると発表したとき、私は正直言って懐疑的でした。
セキュリティ面は満足のアップデート
結果として、特にセキュリティの面ではいい意味で驚かされました。たとえばブラウザに完全に組み込まれた「セキュリティチェック」は、ブラウザに保存されているパスワードが漏洩したかどうかや、悪意のある、またはマルウェアっぽいアドオンをインストールしてしまったかどうかをチェックしてくれます。
そのほかにも、これまでのセーフブラウジング機能をさらに強化した「Enhanced Safe Browsing」が追加されました。これはユーザーが訪れるかもしれないサイトのセキュリティの通知してくれるもので、サイトを訪れる前にフィッシング詐欺などの可能性を防ぐものです。Chrome 83において、Googleはブラウザとサイトのサーバー間の通信ある程度を暗号化することまで行なっています。これにより、ユーザーが訪れているサイトを通じてハッカーの盗聴を防げる可能性があります。
これらの新しいセキュリティ機能をバカにするつもりは一切ありません。Googleが怪しいサイトやアドオンにより積極的に対応してくれるのはありがたいことです。今までなら、ちょっとでも怪しいアドオンをインストールしたら、ユーザーの個人情報が丸裸にされてしまう可能性がありましたからね。とはいえ、Googleのセキュリティに関するスタンスで不安を覚える人はそもそもあまりいないと思います。セキュリティはテック業界全体が常に気をかけるべきことだし、これでまでもGoogleは危険に割と真面目に対応し、コミュニティの助けになるようなことをしてきました。
プライバシーとGoogle
しかし、プライバシーに関しては別です。Googleのプライバシーに対する扱いは、州法務長官や司法省(その他諸々)から厳しい目を向けられてきました。そして今回のChromeアップデートに関しても、技術的なレベルではほぼ何も変わっていません。
ブログによると、これまで非常に難解だったプライバシー規約を、「より簡単な言葉や図」を入れて理解しやすくしたりといった手は加えられています。また、サイト固有の設定の配置を変えてアクセスしやすくしたりもしました。以下はブログからの引用です:
サイト設定に関しては、設定ボタンを大きく2つのセクションに分けることで、最もセンシティブなウェブサイトの認証を見つけやすくしました:場所、カメラ、マイクへのアクセスと通知です。また、新しいセクションは認証に関する最新の活動をハイライトします。
Chromeの設定のトップには、以前プロフィールと呼んでいた「You and Google」という項目があり、そこから同期の設定ができます。これらの設定は、どの情報がGoogleと共有されてGoogleアカウントに保存され、あなたのすべてのデバイスに送られるかを管理できます。
ブラウジング履歴を頻繁に消去するユーザが多いので、「閲覧履歴データの削除」を「プライバシーとセキュリティ」セクションのトップに移動しました。
小さい変更とは別に、あとひとつ大きな変更点があります。最新のChromeでようやく、シークレットモードの際にサードパーティのCookieをデフォルトでブロックするようにしたのです。また、通常モードでも同様に行えます。ここ何ヶ月も、Googleはよりプライベートでセキュア、あらゆるサイトを通じて広告主に嗅ぎ回られないWebを目指すため、そういったトラッキング用のタグを廃止する計画を論じてきましたが、これはその結果と考えられます。
でも、本当にブライベート?
しかし、サードパーティが嗅ぎ回らなくても、Googleがデータを集めていないわけではありません。何度も何度も何度も言われていますが、Googleはいまだにユーザが訪れるサイトすべての情報や検索ワードの情報を山のように持っており、それによって強大なアドテック帝国を築き上げているのです。このようにファーストパーティによって収集されるGoogleのためのデータは、Facebook(フェイスブック)やAmazon(アマゾン)のそれと同様、最新版でも決して変わっていません。
言い方を変えれば、Googleが自身のトラッキング技術を少し無効化させたところで、デスクトップで日常のウェブブラウジングにChromeを使っている世界70パーセントのユーザーを、広告主が手放すわけがないということです。ただこれまでと違い、Googleが自身で集めたデータを使わざるをえなくなり、今まで払う必要のなかった何億ドルという金額を払わざるを得なくなったのです。cookieをブロックしたところで私たちのプライバシーが守られるわけではなく、ただ独占状態を強めるだけです。
追い詰められたGoogle
Googleは現在、どちらを選んでも悪い結果しかない選択を迫られています。サードパーティcookieのサポートを止めればプライバシーの支持者としての立場を確保できますが、反競争的な態度として批判を受けかねません。一方でCookieをそのままにすると、マーケットの独占率は低くなるものの、サードパーティのアドテック企業が生業とするウェブ全体の監視に関与し続けることになります。いずれにせよ、私たちは監視され続け、Googleはこれからも勝者であり続けます。つまり、何も変わらないのです。