冷戦時代の核実験。その副産物から解明された、ジンベイザメの寿命

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • mayumine
冷戦時代の核実験。その副産物から解明された、ジンベイザメの寿命
Photo: Wayne Osborn

全長18mにも及ぶ世界最大級の魚であり絶滅危惧種に分類されるジンベエザメの寿命を解明するために、冷戦時代に行われた核兵器実験が役に立つ日がくるとは

日本でも大阪の海遊館や神奈川の八景島シーパラダイスなど、限られた水族館で飼育されている有名な魚ですが、繁殖方法や寿命などはわからないことが多い謎の魚でもあります。

これまでの別の研究では、ジンベイザメは約130年くらい生きることが示唆されていましたが、今回は新しいアプローチの研究になります。核実験で人為的に大気中へ放出された放射性炭素がジンベエザメの脊椎骨に現れるのですが、炭素の放射性同位体「炭素14」を追跡する方法で、ジンベエザメの寿命を解明しました。

米ラトガース大学の、本研究の筆頭著者であるJoyce Ong氏は、米Gizmodoのメール取材に応じ、「放射性炭素年代測定で、さまざまな魚、特に長期間生きた魚の絶対年齢を調べることが可能になってきましたが、今回始めてジンベエザメの脊椎骨に適用されました」とコメントしています。

大気中の炭素14濃度をタイムスタンプに

研究チームは、ジンベエザメの脊椎骨のサンプルを入手。2005年に台湾で揚がったジンベエザメと、2012年にパキスタンで座礁したジンベエザメの死体からサンプルが採取されました。まず顕微鏡で椎骨を撮影し、木の年輪の数を数えるようなイメージで、骨の断面の「輪紋」を数えます。しかし「輪紋」がどのくらいのスピードで成長するのか不明なので、これだけではジンベイザメの年齢を推測することはできません。

そこで、放射性炭素による情報を活用します。アメリカやソ連などの国々が1950年代から60年代にかけて核爆弾を大気中に放ったことにより、大気中の炭素14濃度は大きく変動しました。この炭素は食物連鎖過程の中に沈着し、動物の組織に現れることがあります。研究者はこれをタイムスタンプのように使います。

加速器質量分析法(AMS法)による放射性炭素年代測定の結果、台湾のサメの3つの輪紋のうちの1つは、1972年に形成されたものであることがわかりました。一方、パキスタンのサメの輪紋は、爆弾炭素分析の1年ごとに増加しているとし、リサーチャーは、このサメの年齢を、50歳と推定することができました。どちらのサメも寿命で死んだわけではなく、もっと長生きする可能性がありました。この手法で特定したジンベエザメでは、これが最高年齢となります。

この研究結果の論文は学術誌「Frontiers in Marine Science」に掲載されています。この放射性炭素年代測定は、すでに自然保護、生物学、法医学等の分野で活用されていますが、ジンベエザメのような絶滅危惧種の研究には特に重要なツールとなります。

オーストラリア海洋科学研究所(Australian Institute of Marine Science)の研究者で魚類生物学の主席研究員でもあるMark Meekan氏が米Gizmodoに伝えた内容によると、「魚の年齢とサイズがわかれば、成長率を計算することができます。これは調査・マネジメントとしても重要なパラメータであり、乱獲などによって種の個体数が減少した場合に、その種がどのくらい繁殖力を持ち、どの程度の速さで個体数を回復できるかを示しているからです。ジンベエザメの場合は、大きなサイズまで成長するのが非常に遅く、サメが成熟するのは30歳くらいになってからです。つまり、ジンベエザメの個体数が減っても、すぐには回復しないということです」

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