お金を使うとなぜ気持ちが良いのか

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  • author Daniel Kolitz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岩田リョウコ
お金を使うとなぜ気持ちが良いのか
Illustration: Elena Scotti/Gizmodo US

確かに結構な額のお金を使うと、変な達成感がありますよね?

お金使っても使いきれない、湯水のように湧いてくる! みたいな人は少数で、大体の人は多かれ少なかれ、お金を気にして生活していると思います。でもなぜお金を思いっきり使うその瞬間、妙な気持ち良さがあるんでしょうか。この変な気持ちの理由、専門家に聞いてみました。

Scott Rick

ミシガン大学マーケティング准教授

どうしてお金を使うことが気持ちがいいのかについては、いくつか考え方があります。まず、獲得効用(実の価値よりも安く値段が付けられているのを見つけた時)と取引効用(予想していたよりも安く値段が付けられているのを見つけた時)について話をしたほうがよさそうです。どちらも購入が明らかに合理的でない場合でも、気持ちの良さの素となります。たとえば、何かを買う時セールだったら嬉しいですよね。自分にとってそんなに価値があるモノではなかったとしてもセールの値段であると気持ちが良くなるのです。他の言葉で言うなら、取引効用というのは、意外と影響力があるということです。

お金を使うと気持ち良くなる理由の一部には、誤報によるものがあります。たとえば、広告やモノを実物より良く見せる包装などです。でも完璧な情報が書いてあったとしても、人間はその日そのモノに買いてあった宣伝文句がずっと続くと思ってしまうのです。私たち人間は、新しい製品へのワクワクがすぐに消えて無くなってしまうことに気づかないものです。

以前「買い物セラピー」の効果について研究したことがあるのですが、何を購入するか選ぶという行為は、人生をコントロールする力の修復を手助けすることがわかりました。災害やパンデミックなど外からの力によって起る悲しさや不安などのネガティブな気持ちは、買い物によって和らぐ効果があるとわかりました。逆に、他の人との関係で生じる怒りは買い物では和らがないというのもわかっています。

Uma R. Karmarkar

カリフォルニア大学サンディエゴ校マネージメント&グローバル戦略准教授

私たちは「支払いの痛み」を知っているのに、同時にお金を使うことに快感を感じるのには、いくつか理由があります。まずひとつ目は、お金を使うと達成感やゴールに到達した感覚があるからです。たとえばずっとお金を貯めて車を買ったりなどです。すでにゴールを達成するためにこのお金を使うんだと決めているからです。なので、購入時にはお金を失くしているという感覚があまりなく、ワクワクする気持ちの方が勝っているのです。あとこれは行動経済にも関係しています。精神的にお金の意味と価値をカテゴリー分けしているのです。たとえば「新しい車を買うお金」はエキサイティングですが、「家賃」は毎月自動的に引き落とされいることであっても、やはり楽しくないですよね。

セールが好きな人は「取引効用」という経済原則をご存知かもしれません。何かが思っていたよりも安く変えた時、お金を使うのが気持ちいいと感じるのです。

また、お金を使って気持ちがいいと感じるもうひとつの場面は、自分に対する社会的な地位のためにお金を使う時です。たとえば、高いワインや有名なブランドのものを買う時、他の人にそれを認知させることができます。こう言った消費は裕福だぞと他人にお金を使うことで見せつけることができるので気持ちが良いのです。また、他の人のためにお金を使う時も気分が良くなります。寄付やチャリティなど、なにかいいことをすることで温情効果と呼ばれるポカポカしたポジティブな気持ちになります。お金を使うというのは、使い方、いつ使うか、なぜ使うかで大きく意味が変わってくるのです。

Catherine Franssen

ロングウッド大学心理学准教授

脳にあるモチベーションと報酬系中枢は強い結びつきがあります。何かが欲しい時、脳内のこれらの部分が激しく活性化し、ドーパミンを放出し、「これを手に入れなければ」という気持ちになります。それを抑えるには満足感を得なければなりません。脳内のモチベーションと報酬系中枢は記憶バンクにリンクされていて、モノを買う時満足感を引き起こし、気持ち良くさせてくれるのです。欲しいという理由がなんであれ、私たちの脳はモノを買うことで気持ちが良くなるよとリマインドするのです。ここで気をつけたいのが、ストレスがある時気持ち良さを求めてお金を使うようになると、経済的なリスクが高まることです。

お金を使うことで嫌な気分になることもあります。脳が痛みの記憶を引き起こすのです。現金で支払いをする時、そして現金で支払いを受ける時は特にこの痛みの反応が出ることがあります。現金で買う時は、この現金を手に入れるためにどれだけ働いたかというのを脳が思い出すのです。引き落としやクレジットカードの支払いでは痛みを感じないのは、新しいモノを得るという行動の方にフォーカスするからです。

Syon Bhanot

スワースモア大学経済学准教授

お金を使うことで得られる喜びは「情緒回復」という役割があります。私たちの生活や人生は不確かで脆いことが多いですが、モノを買うという経験は確かな決定により、確かなモノの流通を生み出します。なのでモノを買う時、必ずなにか行動をしていて、自分がそのモノに対するコントロール権を持つことができるのです。これによって自我を形成できたり自分の道を選ぶという体験ができることで気持ちが良くなるのではないかと思っています。これはちょっと哲学的すぎるかもしれませんが、でも重要な役割を果たしていると思っています。

もうひとつ、行動経済学からの考えは「現在バイアス(目の前にある事柄を過大に評価してしまう心理)」です。何かをいまこの瞬間に手に入れると言うのは、クレジットカード社会ではまだ支払いをしなくてもいいということです。なので使いすぎてお金が無くなったりという状況を生み出しているのも現状です。

Camelia Kuhnen

ノースカロライナ大学チャペルヒル校 財政学教授

気持ちがいいのはほとんどの場合「お金を使う」部分ではないと思います。お金を払って手に入れたモノ自体が気持ち良くさせてくれるのだと思います。お金を払わずに欲しいモノを得た場合、もっと気持ちがいいですよね。ずっと欲しかったモノを手に入れると、脳内の報酬系中枢がドーパミンを排出します。結果的にワクワクしたり、嬉しかったり、一時的にするわけです。たとえば、チャリティにお金を寄付した場合、大変嬉しい気持ちになると思います。報酬が物理的なモノではなく、誰かを助けたという「温情効果」を手に入れるからです。

ひとつ気に留めておくべきは、お金を使って満足を得ることで次に起こることを見えなくする可能性もあるということ。お金を使いすぎると何ヶ月か後に支払いに縛られることになります。目の前にある価値にフォーカスしすぎる「現在バイアス」で考えていると、その後に起こる経済的な問題が見えなくなってしまうのです。

Katherine Fox-Glassman

コロンビア大学心理学講師

私はもう少し絞った質問にしてみようと思います。「なぜハッピーでない時にお金を使いたがるのか」です。

人間は失うことを嫌うという研究結果が何十年も前からあるというのに、お金を使うことで気持ちが良くなるというのはちょっと驚きですよね。イギリスの小説家で007シリーズを書いたことで有名なイアン・フレミングはその傾向に半世紀も前に気づいていました。ジェームス・ボンドがカジノ中に「勝者が獲得するものは、おかしなことだが、敗者が失うものよりも少ないのだ」と書いています。数十年後、経済学者のダニエル・カーネマンと心理学者のエイモス・トベルスキーがこれについて「平均的に人は得より損失の方が2倍以上大きく感じる」と。自分が所有しているモノに価値を感じて、それを手放すことに抵抗を感じてしまう心理現象を「授かり効果」というのですが、持ち主が売りたい価格と買い手が買いたい価格は2:1という比があるのです。

これについては面白い実験が2004年にされています。持ち主と買い手に悲しい動画を見せてから値段交渉したグループは、持ち主は悲しい動画を見ていないグループよりも安く自分の所有物を売ろうとし、買い手は高いお金を払って買おうとすることがわかっています。

なぜ悲しみで物の価値が変わるのでしょうか。悲しみは無力感と結びつきがあるため、悲しい時は言われるがまま、なすがままになる傾向があるという研究結果が出ています。なので、悲しさから抜け出すために、いまいる状況を自分でコントロールしようという気になるのです。なので、悲しい動画を見た持ち主は、少しでも状況を変えようと安く所有物を売ろうとするのです。なので「買い物セラピー」は悲しみを感じている時の自然な反応です。部分的ではありますが、お金を使うことがなぜ気持ちいいのか、それはお金を使うことで自分でが置かれている状況をコントロールして変えることができるからなのです。

Kathleen Vohs

ミネソタ大学マーケティング学部教授

お金を使うのことで気持ち良くなるのは、消費は売買や取引に従事するという現代的形態だからです。人類は祖先の時代からずっと売買・取引に携わってきました。人類学者たちはネアンデルタール人が絶滅した理由は、取引をあまりしなかったからではないかと考えられています。取引をすることでもっと資源が増え、新しいことを学び、結果健康につながるのですが、現代で言うなら、お金を使い売買や取引をすることで、社会に入り自分の種が繁栄していることを感じられるため、お金を使うことが気持ちが良いのではないかと考えられます。

C. Monica Capra

クレアモント大学院大学経済科学教授

一般的にお金そのものではなく、消費が効用や価値を生み出すと考えられます。私たち人間は、食べ物、家、教育、健康、エンタメ、ステータスなどに価値をつけます。お金を使うというのは、必要なこと好きなことに対して消費をすることで、それが満足感を感じさせるのです。

行動経済学では、人間の心理や文化はお金を使うことに対しての態度を決定する役目をしていると考えられています。これは、お金を借りてでも消費をしてしまうことに説明がつきますよね。また他の人のためにお金を使うことに気持ち良さを感じる人は多いです。たとえばチャリティへの寄付です。寄付は、利他的で他の人が気持ち良くなることで自分が気持ち良くなるからです。また寄付で自分が良い人間だというサインを他の人に送れることも気持ち良さの理由です。経済学者はこれを「温情効果」と呼んでいます。

基本的なレベルで言うと、「なぜ進化は子孫を反映させることよりお金を使うことをへ向くのか」と質問する人もいるかもしれません。でも異性との出会いで子孫の繁栄の確率を予測することは難しく、この確率のサンプルを集めることもできません。しかし消費は私たちの行動に対して明確なゴールが見えることで、ゴールに到達するための構造を学ぶこともできるから、でしょう。

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