数字で推測。Apple Siliconってどれくらいパワフルなの?

  • 13,702

  • author Joanna Nelius - Gizmodo US
  • [原文]
  • Kaori Myatt
数字で推測。Apple Siliconってどれくらいパワフルなの?
Image: Apple

先日のWWDCで、Appleはラップトップとデスクトップを含むコンピュータ製品全般に独自のプロセッサ「Apple Silicon(アップル シリコン)」 を使用していくことを公式に発表しましたね。

以前からその噂はちらほら聞こえてきていたので、驚愕の発表とまではいきませんでした。しかしAppleの公式発表により、A12Z Bionicコンピュータプロセッサの存在が公にされたことはシンプルに喜ぶべきことです。

プロセッサの仕様は謎のまま

いっぽう、WWDCでAppleが明らかにしなかったのはその仕様ですよね。コア数もわからない、クロック周波数もわからない、消費電力もわかっていません。でも、チラ見させてくれたmacOSの次世代となる Big Sur上の「 Rosetta 2」で動く『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』はいい感じで動作しているように見えました。実際のところは一体どんな感じになるのでしょう? それが疑問です。

最近のうわさによれば、12コアというのが有力な線かもしれません。パフォーマンスの高い8コアで重いタスクをこなしつつ、エネルギー効率の高い4コアで小さなタスクを同時にこなす、それが全て5nmプロセスで作られたプロセッサに載っているという噂です。

少なくともAppleは、これから搭載されるプロセッサ群は2020のiPadにすでに搭載されているA12Zをベースにすることを明らかにしています。(4つのパフォーマンスコアと4つの効率コアを併せ持つハイブリッド CPUです)だから、ラップトップやデスクトップ製品にも、ハイブリッドコアテクノロジーを採用するだろうと考えるのが合理的でしょう。 また、A12ZはARMアーキテクチャをベースとしたプロセッサでもあります。 ということは、Apple SiliconはIntelやAMDのCPUとは違った形で情報を処理するということです。

A12Zは「RISC=Reduced Instruction Set Computer」と呼ばれる命令セット。IntelとAMDのCPUは両方とも「CISC=Complex Instruction Set Computer」と呼ばれる方式を使用しています。RISCプロセッサの利点は、タスクによっては電力効率に優れていてパフォーマンスが高速であること。ただし、RISCはCISCよりも情報処理にメモリが必要とされ、クロックサイクルごとにひとつの命令を実行するため、それぞれの命令を呼び出すのに多くのメモリが必要とされます。RISCマシンで同じCISC命令を実行すれば、情報処理に時間がかかるはずです。CISCは一度にできるだけ効率的に複数の命令を処理するように設計されていると考えていいでしょう。

ただし、それとプロセッサのスピードと、どう関係があるのでしょうか? それは実行するプログラムによります。AppleのARM A12Zプロセッサは命令を処理する方法が違うため、IntelやAMDのx86プロセッサよりも速くなることもあれば、遅くなることだってあり得るのです。

CPUのパフォーマンスは?

ベンチマークソフトであるGeekbench 5の話をしましょう。まず、Apple Siliconのパフォーマンスを今推し量るのは非常に難しいです。というのも、AppleのAプロセッサはもともとiOSとiPadOSのために開発されたものであり、macOSやWindows 10上で実行するタスクやハードウェアのために設計されたものではないから。ただ、IntelやAMDと比較してApple Siliconがどのような性能を発揮するのかを知るには、現在最新のiPadに搭載されたA12Zがもっともそれに近いところにいる、ということになります。念のため言っておくと、Mac用のA12Zはもしかしたら比較にならないようなモノであるかもしれない可能性はあります。とにかく現在のMacと他社PCに対し、どんなポテンシャルを持つのか、という参考にはなりそうです。

新しいiPad Pro に搭載されているA12Zのシングルコアパフォーマンスのスコアは1114、マルチコアパフォーマンスは4654です(他の結果はこちらを参照)。4コアのIntel Core i7-1068NG7とメモリ16 GBを載せた 2020 MacBook Pro 13Geekbench 5 の結果を見ると、数字にはそれほどの違いはありません。MacBook Pro 13のスコアはシングルコアで1260で、マルチコアで4676です。

Geekbench 5において、A12Zは、 Intel の第10世代CPUと比較してシングルコアでもマルチコアでも同じくらいのパフォーマンスであったわけです。悪くないですよね。 でも考えてみるとA12ZはハイブリッドCPUです。だからこれらのスコアは4つのパフォーマンスコアに基づいており、8コアすべてではないことが想像されます。だから、このスコアから読み取れることは、Macバージョンのプロセッサにうわさ通りの4コアがプラスされたとしたら、(現行のMacBook Proの4コアに対し、合計12コアとなるとしたら...)Apple Siliconは最強のプロセッサとなる可能性が高いということ。

パフォーマンスで競うなら、IntelとAMDのコア数と同じだけのパフォーマンスコアをそろえる必要があります。AcerのPredator Triton 500ラップトップにはIntelのCore i7-10785Hが入っています。このプロセッサはIntelのパフォーマンスモバイルプロセッサで、6コアです。シングルコアでは iPadの1223よりも100ポイント高く、マルチコアでは 6408と2000近くも高くなっています。この数字からは6コアを最高クロックで同時に稼働させられるIntelのアドバンテージが読み取れます。いっぽうiPadのA12Zにはパフォーマンスコアが4つしかありません。ということは、現在のiPadに搭載されているA12Zプロセッサは現行の16インチのMacBook Proにはかなわないということになります。この16インチのMacBook ProにはPredator Triton 500と同じプロセッサが採用されています。 Intelが持てる最高のモバイルプロセッサと競い合い、出し抜くためには、これよりも多くのコア数が必要です。

ただ、私としては、ラップトップでもデスクトップでもAMDのマルチコアプロセッサの王座は譲り渡すことはできないと考えます。AMDはマルチコアパフォーマンスにおいては、野獣のように獰猛なパフォーマンスを見せますから。私が2019年の初頭に組み立てたマシンはAMD Ryzen 7 2700XとGTX 1080 Ti、メモリが16 GBの DDR4でWindows 10バージョン 1903で以下のとおり。

  • シングルコア: 1064
  • マルチコア: 6971

Ryzen 7 2700Xも8コアのCPUです。Intelのように8つのコアすべてを最高速度で稼働させることができます。一方、A12Zはそれができません。 しかし、数字がここに示すように、AppleはシングルコアのパフォーマンスではAMDと同等か、それをわずかに凌いでいるのです。ですが、このCPUはずいぶんと古いものです。それではA12ZとAMDの新型のCPUを比較してみましょう。 以下は 8コアのモバイルプロセッサである AMD Ryzen 9 4900HSを載せたAsus ROG Zephyrus G14の数字です。

  • シングルコア: 1104
  • マルチコア: 6226

また、せっかくですからAMDの最新の廉価デスクトップCPUとも比べてみましょう。以下の数字はAMDの4コアのRyzen 3 3100 廉価デスクトップのCPUです。

  • シングルコア: 1085
  • マルチコア: 4723

ここでも、AMDはマルチコアで競り勝っています。一方、iPadのA12Zはシングルコアのパフォーマンスで少しだけ Ryzen 3 3100とRyzen 9 4900HSに勝っています。MacBook Pro 13のような、現在出回っているMac製品と比較すると、A12ZはIntelやAMDの廉価またはミッドレンジの製品群となんら引けをとらないパフォーマンスを見せているのです。仮にマルチコアでパフォーマンスの伸びが見られるとすれば、AMDのマルチコアにも匹敵するのです。でもマルチコアのパフォーマンスを伸ばすのは並大抵なことではありません。 ハードウェアのパフォーマンス改善と、コアカウントをソフト面で伸ばせるメリットを生かすことこそAppleの試練ともいえるポイントであります。

GPUのパフォーマンスは?

それでは、次にGPUのパフォーマンスを見てみましょう。 Appleはキーノートで私たちに『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』のデモを見せてくれましたね。ですが、Appleはデモ機のセットアップについては詳しく説明していません。このゲームは「Rosetta 2」のエミュレーション上でプレイされていたもので、解像度は1080pでした。これはフレームレート30fpsかそれ以上のプレイバックで、グラフィックの設定はミッドレンジからハイレンジあたりとみられます。これはNvidiaのGTX 1050に匹敵するパフォーマンス。Appleのデモが統合型GPUではなく外部GPUだった可能性は否めませんが、ここでは統合型GPUだったと仮定します。

統合型GPUとしては、このパフォーマンスはすごい。今市場に出ているグラボの中で最高のAPUであるはずのAMDのVega 11ですら、このパフォーマンスは導き出せません。ハードウェアファンが集うウェブマガジン、Tom’s Hardwareでは、 Vega 11とRyzen APUの統合型GPUはIntelのUHD Graphics 630の2.5倍速いとしています。 Tom's HardwareによればGTX 1050はVega 11よりも74%速く、UHD 630よりも150%速い (720p)としているので、『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』を見る限りではAppleのデモにおいてはこのゲームは30fps以上でプレイされているというだけでなく、AppleのGPUが業界最速となる可能性を十分に含んでいることを示唆するものです。

ただ、ゲームの設定をすべて確認しないことには確実なことは言えません。Apple Siliconが iPadの現在のパフォーマンスを凌ぐCPUとGPUを持つものであるとすれば、AppleはIntelもAMDもはるかに凌ぐものすごいパフォーマンスの処理装置を製作中ということになります。これも、この新しいApple SilliconをまずはMacBook Proに投入するといううわさを裏付けることにもなります。将来にわたりすべてのラップトップ製品とデスクトップ製品でCPUのパフォーマンスを向上させるのが狙いだとしたら、IntelだけでなくXeonベースのMac Proも軒並み変えることにするのだとすれば、それは魔法のようなすごい計画としか表現できません。

そのパフォーマンスはAppleが豪語する通りのものに仕上がる可能性が高いです。ですが本当にこの目でmacOSの中で動いているのを見なくてはわかりません。この仕様変更により素晴らしい機能向上が見込まれるのは予想にすぎません。そして、その真価は、この秋に見極めることができるのです。

    あわせて読みたい

    powered by