開発が遅れているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、新型コロナの影響でさらに遅れが…

  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
開発が遅れているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、新型コロナの影響でさらに遅れが…
Image: NASA

待てば空路の日和あり?

待望の次世代宇宙望遠鏡のローンチが、またしても延期を余儀なくされました。ご多分にもれず、コロナのせい。ウイルスの悪影響は地球の大気圏を突破し、宇宙空間までにも及んでいます。

まったく新しい宇宙観測所

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のイメージ画。金色に輝く主鏡はベリリウムに金メッキされたもの。下の部分は5層から成るサンシールドで、最下部に搭載されている機器を太陽の熱から守り、赤外線測定に適した摂氏マイナス223 ℃に保つ。
Image: NASA

ハッブル宇宙望遠鏡の後継機であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、アメリカのNASAを中心にカナダ宇宙庁や欧州宇宙機構が共同開発を進めている天文学界のネクスト・ビッグ・シング。

赤外線望遠鏡として卓越した感度を誇り、NASAいわく「宇宙が誕生した瞬間に迫り、今まで観測不可能だった原始の銀河を探し出すだけでなく、超新星爆発のクラウド内で恒星や惑星系が生まれくる様子も観測できるようになる」と期待されています。また、太陽系外惑星の大気についてより詳しく調べられるので、居住可能な星を探す上でも大きな推進力となりそうです。

Image: NASA

そんな期待を一手に担うジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ですが、残念ながら開発は思うように進んでいません。当初の打ち上げ予定はなんと10年前(!)。これまで延期に延期を重ね、2021年3月30日には打ち上げが再設定されていたんですが…。

またしても延期

6月10日に行なわれた全米科学アカデミー内宇宙研究委員会(Space Studies Board)のオンライン会議にて、NASAの理事長・ Thomas Zurbuchen氏がこんな発言をしました。

3月には打ち上げない。3月には絶対に打ち上げられない

これまでにもコストの予算超過や納期の遅延など、次から次へとトラブルに悩まされてきたNASAと製造を任されているノースロップ・グラマン社ですが、今回の遅延だけはどうしようも避けられなかったようです。なにしろ、新型コロナウイルスの蔓延が原因ですから。

Zurbuchen氏の言葉を借りれば、「NASAとノースロップ・グラマンが悪かったわけではない」そう。「どうしても間に合わない事態になってしまったが、なにか運営上の不始末があったわけではない」と強調しています。

伸長試験は成功

Video: NASA Goddard/YouTube

事実、最近のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡開発は目覚ましい進展を遂げていました。ついこの間の6月9日には、要となるタワー構造(Deployable Tower Assembly, DTA)の伸長試験に成功したばかり。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は大きすぎて、そのままでは運搬用のロケットに入りきりません。そこで、いったん畳んでからアリアン5ロケットに積みこんで、宇宙空間にたどり着いたらトランスフォーマーよろしく本来の姿に変形する予定となっています。今回はタワー構造がちゃんと伸長するのかテストしたところ、見事意図した通りに動いたそうです。

遅延の要因

しかし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の要となるのはタワー構造だけではありません。Space Policy Onlineによれば、壊れたら全体に不具合を引き起こしかねない単一障害点が300カ所も含まれているそうで、それらすべてを設計して、製造して、テストして、改良して…という作業工程は困難を極めています。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、ノースロップ・グラマン社では製造のペースを落とさざるを得なくなりました。SpaceNewsが報告したところによると、通常は10時間シフトを週12回行なうところを、現在では8時間シフトを週5回こなしているとのことです。

コスト面でも天文学的

そして工期が伸びれば伸びるほど、当然ながら費用も膨れ上がってきています。当初は米10億ドル(約1070億円)の値札がついていたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ですが、今では97億ドル(約約1兆393億円)とまで言われており(Ars TechnicaのEric Berger氏の試算による)、さらに膨れ上がる可能性も。

これだけの莫大な資金を投じてまでNASAは先鋭的なフラッグシップ・ミッションを追求するべきなのか? と疑問視する声も上がっていますが、これについてNASAのZurbuchen理事長はこのように発言しています。

NASAは先鋭的なミッションに挑み続けるべきだ。そのようなミッションの効率化も図っていくべきだ。宇宙開発を牽引するリーダーとして、NASAは今までほかに誰も成し遂げていないことに着手する必要がある。天文物理学、そして惑星科学などの分野においては、このような先鋭的なミッションなくして前進できない。

志はあれど、現実はなかなか厳しいようですね。

最後に明るいニュースを。火星探査機「Perserverance」は予定どおり今年7月に打ち上げられるようです(今のところ)。ただ、謎の理由で3日間だけ延期される模様。どうか、これだけはコロナ禍に翻弄されませんように…!

Reference: NASA, James Webb Space Telescope


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