新型コロナ、再感染について今わかっていること

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新型コロナ、再感染について今わかっていること
Image: Getty

1回かかって回復したらもう大丈夫、とはいかないのかも。

新型コロナウイルスのちょっとだけ良いところは、いったん感染した人は(少なくとも一時的には)免疫ができるらしいことです。でもVoxに寄稿した米国首都ワシントンD.C.の内科医は、その免疫が必ずしもあてにならないと警告しています。実際彼の患者のひとりが、一度はコロナから回復したように見えたのに、3カ月経たないうちに再度陽性となったそうです。

そんなに早く再感染しうることを示す証拠はまだ限られていますが、新型コロナに対する免疫に関してはまだまだ謎が多いです。その謎が精査されなければ、再感染の可能性とか、再感染する場合どんな症状になるのかといったことはわかりません。

Voxに寄稿した内科医・かかりつけ医のD. Clay Ackerly氏は、3カ月以内に2回新型コロナウイルスに感染したと見られる50歳の患者のケースを詳細に記しています。Ackerly氏によれば、この患者は最初の陽性判定を受けた後に回復し、その後2回の検査では陰性判定が出て6週間近く元気な状態だったため、3カ月間ずっと陽性のままだった可能性は低いとのこと。怖いのは、1回目の感染では軽症だったのに、2回目では低酸素症や息切れといった症状が重く、病院に何回も通う必要があったことです。

「この患者は最初の感染からは完全に回復し、その後若い成人の家族との接触で2回目の感染に至った可能性が高いと考えられる」とAckerly氏は言います。

再感染らしき事例は各地で

新型コロナ再感染の可能性を指摘した医師はAckerly氏だけではありません。同様の事例は、このパンデミックの初期からあちこちで出ていて、たとえば韓国では4月に「再発」のケースが数百件あったと報告されています。ただ韓国の保険当局は、2回目の陽性反応は死んだコロナウイルスが患者の中に残っていたためだろう結論づけていました

さらに抗体の値が2〜3カ月で激減することを示す研究が発表され、再感染への懸念が強くなっています。

でもコロンビア大学のウイルス学者・Angela Rasmussen氏によれば、今の段階ではこうした懸念に具体的なデータの裏付けがありません

「私が知る限り、再感染がきちんと記録されたケースはありません」とRasmussen氏。「回復後に再度陽性の結果が出た人は新規感染のケースと関連付けられていないし、彼らの検体から感染力のあるウイルスを培養しする試みではすべて陰性になっています。なので、陽性になった検査で検出していたのはウイルスのRNAの残骸だけで、本当に複製していくウイルスではなかったのではないかと考えられます」

複雑な免疫の仕組み

でもだからって、新型コロナ再感染がありえないということにはなりません。新型コロナウイルスに対する自然免疫の仕組みがまだはっきりしていないだけです。

たとえば前述の研究であったように、新型コロナに対する抗体の値が数カ月で激減するのは事実かもしれません。でも、再感染を防ぐのに十分な抗体(中和抗体)を維持できていて、数カ月以上経っても免疫が続くという可能性もあります。我々の免疫システムを支えるのは抗体だけでなく、既知の脅威を検知して追い出すT細胞のような細胞もあります。そしてT細胞が新型コロナ感染後に強力に反応することは研究でわかっています。

新型コロナへの免疫力が何で決まるのかはまだあまりわかっていませんが、Rasmussen氏いわく、数カ月後に抗体がなくなることは必ずしも再感染の危険があることにはならないそうです。

再感染はあってもおかしくない

他の種類のコロナウイルスに関する知見に基づくと、感染から回復した人の少なくとも一部が再感染しないのはむしろおかしいです。でも他のコロナウイルスの場合、免疫が明らかに下がりだすのは最初の感染から1年近くまたはそれ以上経ってからだと考えられています。一般にどんな病原菌に対しても再感染での症状は軽くなりがちなので、新型コロナだけは2回め以降が悪化する、という可能性は低いです。ただ他の病気、たとえばデング熱などとの相互効果は知られていて、免疫力の低下した人は2回目の感染でも症状が1回目と同等か、より悪くなるリスクが高いですが、どちらも例外的です。

もうひとつ大事なポイントは、再感染するからって効果的なワクチンができないとはいえないことです。ワクチンによっては自然免疫以上に強く長く効果を発揮できる場合もあり、新型コロナワクチン開発でもそれが明らかな目標です。免疫を更新するためのブースター注射もよく使われています。効果の低いワクチン、たとえばインフルエンザ予防接種でさえ、標的となる病気の症状を軽くする効果があります。とはいえ、ワクチン候補に対する免疫システムの反応は厳しく検証されています。

ともあれ、引き続きいろいろ注意

Ackerly氏が見たケースやそれと似たケースはたしかに注視していく必要がある、とRasmussen氏も認めます。新型コロナからの回復者の一部では、とくに1回目の感染での免疫反応が強くなかった場合は、短期間に免疫を失ってしまう可能性もあります。でもRasmussen氏は、ウイルスが3カ月にわたって患者の体内に残っていた可能性も排除していません。第三の可能性は、1回目の陽性反応が偽陽性だったことです(Ackerly氏は、最初の感染確認のときに複数回検査があったのかどうかは言及していません。また、この患者は抗体の有無の検査はできなかったとしています。でもそれ以上の証拠がないので、こうしたケースがより多くの人にもあてはまりうるのか、広く再感染の心配があるのかは確信がもてないとRasmussen氏は言います。

いま新型コロナ感染が広がっているといっても、実際かかった人はまだまだ少数派です。なので再感染というよりも、まずは1回目の感染のほうがより大きなリスクであり続けるでしょう。

Source: VoxThe Guardian、Nature(12