温暖化対策に禁断の「太陽光遮断計画」が!

  • 6,591

  • author Brian Kahn - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
温暖化対策に禁断の「太陽光遮断計画」が!
Image: Wikimedia

2020年7月上旬、米連邦下院気候危機特別委員会の民主党議員が、大規模な気候変動対策を発表しました。この報告書には、民主党のジョー・バイデン前副大統領が秋に行なわれる大統領選に勝って、中間選挙でも民主党が上院を奪還した場合に、党として優先させる対策が多く盛り込まれているようです。中には物議を醸すようなものも含まれているみたいですけど。

かつてはタブーだった「地球工学」が主流になるほど地球がヤバい?

そんな500ページを超えるリポートの片隅に、温暖化する地球を人工的に冷やしちゃえっていう、地球工学的な対策がコッソリ書かれています。世界が大気を炭素で汚染する危険な道を突き進む中で、かつてはタブーとされたやり方が主流になりつつあることを示しています。

「地球工学」は、太陽光の遮断や、大気中の炭素を回収・貯留する技術などを表す用語で、民主党の対策には両方とも含まれています。でも、実施した際のリスクを考えると、特に注目すべきなのは太陽光の遮断なのだとか。

太陽光を反射させるために宇宙空間に小さな粒子を散布すれば、確かに地球を冷やすことができるんです。できるんですけど、そんなことをすると、気象パターンは変化しますし、一度始めれば止められなくなって、何十年にもわたって太陽光をブロックし続けることになるなど、あらゆる問題が発生してしまいます。

そんなリスクがあるものの、気候変動が現在の壊滅的なものから終末的なものへと激化した場合や、不正を働く国家や億万長者が金儲けになると判断した場合に実施されてしまう可能性があります。そんなもしもの場合に対処することが非常に重要になってくるのだそうです。そんなわけなので、民主党の気候変動対策を読むのはちょっと怖いけど、しょうがないのでチェックしてみましょう。

「気候介入」へ高まる期待となおも残る不安

報告書では地球工学のことを「気候介入」と呼んでいて、15ページ目で唐突に何の文脈も持たないまま登場し、研究の柱には「大気中での気候介入のリスクに対するガバナンス的なアプローチ」が検討されるべきとだけ述べられているそうです。そして、報告書の最後のほうの536ページで、それがどういう意味なのかを次のように明文化しています。

炭素排出量緩和のための世界的な取り組みが失敗に終わり、気候変動が深刻化し続けた場合、各国政府が気候システムに介入するためのアプローチを検討する可能性があります。

報告書は、太陽光を遮る場合の危険性も指摘しているようです。この計画では議会が太陽光を遮ることに関し、全米科学アカデミーの報告書を考慮に入れたうえで、地球工学研究プログラムを開始することになっています。議会が地球工学について言及するのはこれが初めてというわけではありませんが(それについての詳細は後ほど)、基本的には大きな一歩と言えるでしょう。

地球工学のガバナンスを研究する『憂慮する科学者同盟』に所属するShuchi Talati氏は、Eartherにこう語っています。

とても重要な一歩です。2008年のオバマ政権発足直後を振り返ると、大統領の科学顧問を務めていたジョン・ホルドレン氏が地球工学的な話をしただけで、本当にネガティブな報道をされていました。地球工学プログラムとそのガバナンスが優先事項として真剣に議論されているという事実だけでも、かなり大きな変化です。

これは、このところ地球工学への関心が高まっている証拠でもあります。民主党の大統領指名候補だったアンドリュー・ヤン氏は、地球工学(太陽光反射)を熱烈に支持していましたし、今年初めには米議会が地球工学研究に資金を与えました。米連邦下院はかつて、共和党主導で太陽放射管理として知られている太陽光のブロックを検討したことがありました。人為的気候変動を否定したり、気候変動政策に反対しまくったりする同党としては世にも珍しい気候変動に関する公聴会を開いて、地球工学を最後の手段じゃなく、特効薬として検討したことすらあったそうです。しかも気候変動の原因には触れず、地球工学の長所を強調した共和党はやっぱりミラクル…。

世界の炭素排出量が増加を続ける中での、排出量削減の努力を伴わない地球工学の実施はとても危険です。Talati氏は、トランプ政権もしくは温室効果ガス排出量緩和を優先しない政権下で地球工学の研究を推進するようなことがあれば、排出量削減の努力を怠る危険な前例を作ってしまうことになるだろうと述べています。

でも、もしも排出量削減のために行動している政権が、責任を持って地球工学の影響と実施の可能性についての調査に尽力すれば、それは大きな成果をもたらすことになるでしょう。 たとえ世界が太陽光の遮断を望んでいないとしても、その結果がどうなるのかは知りたいはずです。また、どこかの悪党が太陽光を反射する粒子を大気中にばらまいたり、地球が危険な気候の転換点を超えたときに、指導者が否応なく太陽光をブロックしなければならない状況に陥ったりするかもしれません。何もわからないまま実施することになるよりは、太陽放射管理の危険性を知っておくほうがはるかにマシです。民主党の計画は、その結果どうなっちゃうのかを予測するため、そして地球工学プログラムがどのように機能するのかを知るための最初の一歩ということみたいですね。使わないに越したことはありませんが、最悪に備えて念のためにってところでしょうか。

気候への介入は、温暖化に脆弱な途上国主導で

Talati氏は、途上国を犠牲にして気候危機を引き起こしてきたのと同じ状況になりかねないため、アメリカをはじめとする先進国が地球工学を主導、実施することにとても慎重です。民主党の気候計画は主に米国内の政策に焦点を当てているのでやや孤立主義的になっています。あたりまえですが、気候変動は地球規模の問題ですし、特に地球工学の潜在的な悪影響を考えれば、内向的な姿勢は改める必要があるでしょう

Talati氏はこう語ります。

先進国が作り出した問題への不完全な解決策になっているこの計画は、まったくもって正当性に欠けるとみなされるでしょう。太陽光をブロックする地球工学の研究とガバナンスを、気候変動に対して脆弱な国々に主導してもらうのが正しいやり方です。人類が進む道を決定する過程で、発展途上国がより大きな発言権を持つべきです。

    あわせて読みたい