宇宙からプレゼントが!
国立科学博物館の調査により、千葉県習志野市のマンションに新しい隕石が落下したことが確認されました。
夜中の2時半過ぎだったので幸いケガ人はなく、マンション住人の機転の利いた行動のおかげで落下から発見までスピーディーな展開だったとのこと。隕石が落ちたのは2018年の小牧隕石以来で、国内で確認されたのはこれが53番目だそうです。
大火球が堕ちてきた
時は7月2日午前2時32分。多数の写真家が関東地方上空を西から東へと横切っていく巨大な火の球を目撃し、映像に捉えました。
中でも星景写真家・KAGAYAさんが捉えた映像は圧巻です。
たった10秒間のミラクル!
KAGAYAさんは後にこの映像を解析し、火球が「月のように明るく」輝いたと表現しています。
さらに「数回爆発したように明るくなり」、その後「破片が分裂」したことも指摘しています。たしかに後半の映像では火花が散ったように見えますね。『君の名は。』の名シーンと重ねると、背筋がゾクッとします…。
発見までメチャ早かった!
さて、同時刻の千葉県習志野市内のマンションでは2階で大きな物音が。
国立科学博物館のプレスリリースによれば、マンションの住人が翌朝玄関を開けると、玄関先の中庭に面した共用廊下に石の破片が落ちていたそうです。そして廊下の手すりにはなにかが衝突したような傷あとも確認できたそうです。

火球のニュースを知って「もしや隕石の破片では」と思い当たった住人さんは、その後石の破片を保管しました。
さらに「ほかにも破片があるのでは?」と思って2日後の7月4日にマンションの管理人さんと中庭を調べてみたところ、ふたつめの石の破片を見事発見したそうです。

ふたつの破片を比べるとずいぶん違う色をしているんですが、これはふたつめが2日間も雨ざらしになっていたために金属が錆びて茶色くなったからだそうです。
そしてこのふたつの破片を組み合わせてみると…

ほぼぴったり。
きれいに合わさっているため、ひとつの隕石が割れたものと考えられるそうです。
黒く煤けた表面がまだ欠けているのをみるかぎり、もとの隕石はもっと大きかったんじゃないかと素人なりに勘ぐってしまいます。もしかしたら今後も習志野市近郊で同じ隕石の破片が見つかるかもしれませんよね?それとも、大気圏で燃え尽きてしまったんでしょうか。
隕石の破片は発見後すぐに千葉県立中央博物館へ送られ、さらには国立科学博物館に調査が依頼されたそうです。住人さんの聡明な判断による、素早い回収劇でした。
やっぱり隕石だった
ところで、隕石ってどのように確認してるんでしょうか。
見ためは地球に転がっている石と大差ないものの、隕石には「宇宙線生成核種」が含まれているそうです。
隕石は宇宙空間を漂いながら高エネルギーの宇宙線を浴び続けています。宇宙線とは放射線の一種で、太陽や超新星爆発など激しく活動している天体から放出され、光速に近い速さで宇宙空間を飛び回っている極小の粒子。これらが隕石と衝突してできるのが宇宙線生成核種です。
大気圏が守ってくれているおかげで、地球では宇宙線をダイレクトに浴びることはありません。ですから、隕石が地球に落下してくると宇宙線との接触がなくなり、宇宙線生成核種の生成もなくなります。それどころか、宇宙線生成核種は放射壊変を起こして崩れていく一方。
だから宇宙線生成核種を調べてみれば、普通の石なのか、宇宙の石なのかがわかるんですね。というわけで、国立科学博物館の調査結果がこちらです。

7月6日より約1週間のガンマ線測定を行った結果、宇宙線より生成する宇宙線生成核種のAl-26、Na-22、Mn-54とMn-52などが検出され、これにより最近落下した隕石であることが確認されたそうです。
星のかけらはどこから来たのか
現在も大学や研究所の隕石研究者が分析を続けているそうで、1ヶ月後ぐらいにはどの種類の隕石かが判明するそうです。今のところ、外観からは普通球粒隕石(コンドライト)の一種と思われるそう。
ちなみに隕石の名前ですが、「習志野隕石(Narashino Meteor)」として国際隕石学会に登録申請する予定だそうです。
隕石の種類、またどこから飛来したかによっては、太陽系の成り立ちを研究するうえで貴重な試料となりそうです。
隕石がたまたま地球のそばを通りかかったことも稀ですし、ちっぽけな地球の重力にとらわれて落ちてきたのも稀。さらに日本の領土内に落ちてきたのもものすごい偶然です。無人宇宙探査機をわざわざ宇宙に送り出さずとも、向こうから星のかけらが降ってきたんですから、もう宇宙からのプレゼントとしか思えません。
Reference: PR Times, 国立科学博物館, KAGAYA STUDIO, 名古屋市科学館, 東京大学総合研究博物館放射性炭素年代測定室