「10秒で10億」を可能にしたのはスマートサングラス。『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』ガジェット解説

  • 8,945

  • author 西谷茂リチャード
「10秒で10億」を可能にしたのはスマートサングラス。『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』ガジェット解説
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

スマホ級のイノベーションが目の前に。

ギズモードがガジェットコーディネート担当として作中のテクノロジー監修やガジェット考案したTVアニメ、『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』の放送が再開して早1週間。

Video: アニプレックス/YouTube

第2話では、主人公で大富豪の神戸大助(かんべ だいすけ)と、マジメで人情派の加藤春(かとう はる)が、事件捜査の方針で大きく対立しました。

加藤が先輩と友人の力を借りながら泥臭く事件を解決しようとしているのを傍目に、テクノロジーと(謎の女と)お金を使ってかなり強引に捜査を進めてしまう大助。ここで気になってくるのが、大助がここぞというときに取り出すハイテクガジェット=スマートサングラスの存在です。

20200715-fugou-keiji-bul-smart-sunglasses-explained-04
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

第1話ではホログラムみたいな小切手の署名に使われ、第2話では取調べ相手の発言の信憑性を評価するのに使われたりしました。いろいろできそうなコレ、一体どんなガジェットなのか?

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』のガジェット解説シリーズ第2弾では、大助のスマートサングラスが備えている機能や、それを支えるテクノロジー、そしてリアル世界での状況をご紹介します。前回ご紹介したAI執事ヒュスクみたいな残高無限大の願望実現機はなかなか手に入らないとしても、スマートサングラスなら10年以内に手に入るはず。

あと、第3話以降を見るときに役立つ情報も混じっていますよー!

「10秒で10億」を可能にするガジェット

大助の使うこのサングラスは、いわゆるスマートグラス(賢いメガネ)の亜種になります。スマートグラスは現実世界にデジタル表示を重ねることができるシロモノで、かけることで機械にしか見えない世界が人間にも見えるようになるガジェット。たとえばQRコードを見たとき、肉眼にはただの難解な模様としか映りませんが、スマートグラスを通して視ることでQRコードの意味することをすぐさま確認できるようになるんです。

Video: Jongfeel Kim/YouTube
QRコードをARマーカーとして使っているケース。

これはいわば高性能なスマホの眼を通して世界を見るようなもの。目の前にあるモノやコトの関連情報をネットと照らし合わせてすぐに確認したり、肉眼には映りにくい情報を映像解析で引き出したり。もしくは空中に仮想的に浮かばせることのできるディスプレイ代わりとして使えたり…。

大助のスマートサングラスは、こうしたスマートグラスの超カスタム・超ハイエンド機になります。

では具体的にどういうことができるのかというと、あらゆるデータ処理を素早く手軽に行なえるんです。たとえば第1話では、大助が現場で人から車を買い取るときに使っていましたよね。このとき大助のやったことはせいぜい、相手のクレジットカードを手にして「ヒュスク、小切手を」と命令し、指をシュシュっと動かした程度です。それだけで車の買収取り引きを完遂できたのは、ガジェットが何気なく活躍していたため…。

なにをしていたか…。まずスマートサングラス(以後スマグラ)が大助の手にした取り引き相手のクレジットカードをカメラで読み取り、そこからAI執事ヒュスクが流れるようにカード番号から口座番号をネット経由で照会し、送り先を特定しています。

20200715-fugou-keiji-bul-smart-sunglasses-explained-02
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

それからピアスにあるマイクが大助の「ヒュスク、小切手を…」の命令を聞き取り、ヒュスクはそれに従って若干オーバーな10億円のバーチャル小切手を用意(相手は3億円でいいと言っていたのに…)。生成されたバーチャル小切手を、スマグラがレンズに組み込まれたディスプレイで大助の視界に3Dで映していました。

最後に、大助が指でサインしているところをスマグラのセンサー(カメラ・LiDAR・レーダーなど)が検知し、その筆跡をリアルタイムでバーチャル小切手に反映しつつ、署名が終わると同時にヒュスクが金銭的な処理を完遂することですぐさま取り引き完了。相手が状況を飲み込めないうちに車の買収終了です。

このスピード感と手軽さ。大助を10秒で10億動かす人たらしめているのは懐の深さと思い切りのよさ&最新ガジェットなんです。スマホを使ってたらプラス何秒かかることやら!

なんでも情報源、どこでも最大限

スマグラの活躍は第2話に入っても失速することなく、様々な形で大助をサポートしていました。こちらの裏側も若干駆け足で解説していきますよ。

スマグラ使用シーンでまず思い浮かぶのが、取調室で容疑者の発言のいくつかを「嘘だ」と断定する大助です。まるで心を読み取るメンタリストのようですが、ここでもスマグラのアシストが効いています。鍵となるのは大助の視界。

20200715-fugou-keiji-bul-smart-sunglasses-explained-08
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

そう、相手の心拍数が映っているんですね。これはトンデモ技術ではなくすでにあるテクノロジー、やろうと思えば現代のスマホカメラでもできるはずです。仕組みとしては、肉眼では気づけない小さな変化をカメラで捉え、賢い映像解析で変化の度合いを誇張し、データとして抽出するといったもの。

以下の動画にもあるとおり、現代のテクノロジーでもごく僅かな色や動きの変化から心拍数や呼吸頻度などを読み取れるんです。

Video: Miki Rubinstein/YouTube

大助のスマグラもこのテクノロジーの応用で人の心拍数を表示することが可能になっています。あとは大助が相手の挙動を心理学などの知識と照らし合わせることで、相手の発言の信憑性をかなりの確度で言い当てられるというカラクリです。本来であれば信憑性の評価も含めてスマグラが担っていてもおかしくありませんが、刑事になって間もないからまだ開発中なのかもしれませんね。

あとスマグラの活躍ポイントでいうと、容疑者の交通系ICカードから過去の行動履歴を洗い出したり、張り込み中は双眼鏡代わりにもなって、人物認証もしていました。ほかにも様々な機能があるのですが、要は身の回りのものすべてから情報を引き出すことができ、その機能をどこでも最大限行使できるのが大助用スマグラです。もし今後の話数で大助がワナワナと空中で手を動かしていたら、それはスマグラでなにかしている時ですよ。

白熱するスマグラ競争とその未来

20200715-fugou-keiji-bul-smart-sunglasses-explained-09
Photo: 西谷茂リチャード

ではいつリアル世界でゲットできるのか。本当に「10年以内に手に入る」のか……。

YES。

これは自信を持って YES と言えます。というのも、スマグラはテック業界の既定路線なんです。

たとえば有名どころを挙げていくと、Googleはすでに「Google Glass」という開発者/業務利用向けのスマグラを出しており(最近別のスマグラ会社Northも買収)、Amazonも「Echo Frames」で片足突っ込んでいて、ちょっとゴツくてよければMicrosoftからHololensシリーズ、Magic LeapからMagic Leap Oneが出ています。Facebookもレイバンなどのメガネブランドと提携しながら開発を進めているほか、Appleも様々な特許を取得しながら「Apple Glass」の発表に向けて準備を進めていると噂されています。それどころかSnapchatVuzixEpsonnrealも……と挙げていったらキリがないほど各社がしのぎを削って「スマホの次」を狙っているんです。

さすがに現状だとどれも(相当ハイテクとはいえ)まだまだ大助用のスマグラには遠く及ばず、いずれスマグラが成熟してもプライバシーに配慮したものになると思われます(口座特定とか心拍数とか顔認証とか一般人ができちゃったら怖いので)。それこそ大助の使うようなプライバシーガン無視の最強スマグラは、気まぐれな大富豪や強力な国家権力が関わっていないと実現は難しいでしょう。たとえ10年後でも、大助のスマグラはスペシャルな存在なんです。

20200715-fugou-keiji-bul-smart-sunglasses-explained-03
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

そしてスマグラが成熟する頃には(スマホが成熟しているいまスマグラが取り沙汰され始めたように)、次のイノベーションが待ち受けていることでしょう。それがコンタクトレンズ型なのか義眼なのか脳インプラントなのか別のものなのかは分かりませんが、スマホの常時携帯から本格化し始めた人類のサイボーグ化はこれからどんどん加速していくと思われます。社会の常識も大きく変わっていき、文化もいまの僕たちには想像がつかない進化を遂げているはずです。そのさなかにいると考えると、ワクワクしますよね。大助は、僕たちの数年後を歩んで見せてくれているんです。

こうしたテクノロジーの大きなうねりの中から誕生した大助のスマグラ。僕だったらあれこれガジェット買うのに使っちゃいますが、皆さんならどう使いますか? #富豪刑事BULスマグラ

ほどよいミサイルと膨らむガスマスク

手短にご紹介していきます。

20200715-fugou-keiji-bul-smart-sunglasses-explained-06
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

第2話の終盤で大助が発射したミサイルは、貫通力を調整できるバンカーバスターミサイルに催眠ガスのカートリッジを積んだものです。マンション最上階に集まった大人数の容疑者らを一斉に無力化させべく、あらゆる非殺傷兵器や手段を検討した結果、速度と確実性(と派手さ)で選ばれました。個人的には人を追跡するスマートスタン弾丸がお気に入りでしたが、アニメでは画力(えぢから)がものを言いますからね。

Video: ThePhillipthe2/YouTube

ちなみに本来のバンカーバスターは分厚いコンクリを突っ切るほどの威力があるため(上の動画のように)、屋上だけ貫いて止まるのは割と高度な調整機能だったりします。

20200715-fugou-keiji-bul-smart-sunglasses-explained-05
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

そしてミサイルの催眠ガスから守るべく協力者の三田に渡されたのは、瞬時に展開する折りたたみ式ガスマスクです。

持ち運んでいるときや現場に侵入している時は小さく、いざとなったらボタンひとつでガスカートリッジのガス圧を使ってポンッと展開。

Video: Hövding Sverige/YouTube
このようなエアバッグ的ヘルメットに近い仕組みで展開します。

展開後は、窒素と酸素のガスカートリッジがスキューバダイビングに近い感覚で新鮮な空気を出してくれます。またマスク内は外気圧に比べて少し高く設定してあるため、多少隙間があっても外気が入ってこない陽圧室方式です。その代わりマスクを使えるのはせいぜい数分くらいでしょう。


sp_banner_04


大助のスマグラ #富豪刑事BULスマグラ ほしい?

  • 0
  • 0

シェアする

    あわせて読みたい

    powered by