これは期待したくなる!
スポーツウェアのLululemon(ルルレモン)が、ワークアウト系ディスプレイスタートアップのMirrorを買収したことがわかりました。買収額は5億ドル。
Lululemonといえば、ヨガパンツを(まったくヨガしないのに着ちゃう)日常ウェアの地位に押し上げた大注目ブランド。熱狂的なファンやスタッフがおり、そのカリスマ的人気からアパレル界のAppleとまでいわれています。リンゴとレモンで甘酸っぱいね。一方のMirrorはワークアウト系ディスプレイを手掛けるスタートアップ。…そもそもワークアウト系ディスプレイとはなんぞや?って話ですけど、これはコロナパンデミックでにわかに注目が高まったお家ジムの最先端。サブスク型フィットネスコンテンツと、それを見ながら運動する自分の姿が映る大きな反射ディスプレイです。ちなみに、ディスプレイのお値段は1500ドルほど。コンテンツは教室ごと購入することも、パーソナルトレーナーをつけることもでき、有名トレーナーからリモート指導が受けられるのもウリです。
フィットネスアパレルが、ワークアウト用のハード&コンテンツを手に入れたという、非常に面白い今回の買収。LululemonのCalvin McDonald氏は、ニューヨークタイムズ紙の取材にて「(Mirrorの買収は)我々のコミュニティを、ロイヤリティを、そして顧客やメンバーとの関係をより強固なものにしてくれる」と語っています。
強固になるのはそれだけじゃないでしょうけどね。買収によって最も強化を期待しているのは、ビジネスの多角化でしょう。ステイホームで売り上げが落ちたアパレル業界と、売り上げを伸ばしたホームフィットネス業界。現に、Mirrorの今年の売り上げは1億ドルをが見込まれ、来年には収支トントンまたは黒字化の見通しのようですから。ジャンルの違うビジネスならば、今後新たな困難に直面しても助け合うことができるかもしれません。
また、LululemonとMirrorはまったく異なるジャンルのビジネスでありながら、フィットネスという同じキーワードをもつのもプラス。熱狂的ファンを抱えるLululemonですから、イメージを変える・損なうことなく、経営を多角化する必要があります。Lululemonの店舗にMirrorのデモディスプレイがあるのも、これまためちゃくちゃ馴染みますね。この買収をきいて、きっと多くの人が「なるほど、考えましたな!」と膝をうったのではないでしょうか。
実にうまい買収で、今後が非常に楽しみです。スマートフォンのケースや、スマートウォッチのバンドの存在によって、IT企業とラグジュアリブランドの距離はぐっと縮まりました。一昔前は考えもしなかったけど、現代においてはアパレルとITは相性がすごくいいのです。いや、背を向けていただけで、本当は昔から距離は近かったのかもね。