種子島から発射された火星探査機HOPEはかなりユニーク

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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  • たもり
種子島から発射された火星探査機HOPEはかなりユニーク
Image: UAE Space Agency アーティストによる、アラブ首長国連邦のHOPE探査機のコンセプト図

打ち上げ成功!

エミレーツ・ホープ(HOPE)・ミッションは、アラブ首長国連邦(UAE)にとって初となる火星探査機です。

HOPE(別名アル・アマル)は、火星の気象衛星と言えそうな約1,350㎏の探査機で、三菱重工のロケット「H-2A」に搭載されて宇宙へ到達し、これから火星に接近していきます。2021年2月ごろに火星の軌道に到達し、火星の大気と気候を研究する予定。打ち上げの様子はコチラから見れます。

エミレーツ・マーズ・ミッション(EMM)は現在開かれている打ち上げウィンドウで予定されている火星への3つミッションのうちの1つ。残り2つは今後2週間以内に打ち上げ予定のNASAのパーシビアランス探査機と中国の天問一号です(欧州とロシアのExoMarsミッションは技術的な遅れと新型コロナの流行により延期となりました)。この打ち上げウィンドウは26カ月ごとにあるもので、地球から赤い惑星へのもっともまっすぐなルートを提供します。

以下、この歴史的なHOPEミッションについて知っておくべき5つのポイントをご紹介。

すこし他国からのサポートを受けつつも、アラブ首長国連邦製

2014年に始まったHOPEプロジェクトは、Arab Newsによればエミレーツチームが計画、管理そして実行しており、UAE宇宙機関からの監督と資金提供を受けているとのこと。

UAEがこのミッションにかけた費用は三菱重工へ外注した打ち上げ費を含め、約2億ドル(約2,147億円)ほど。NASAが2013年に火星へと打ち上げた、同等のミッションMAVEN探査機の開発費が6.7億ドルだったことを考えるとかなり控えめな価格です。それでも、7,400万ドルという驚異的に低価格だったインドのマーズ・オービター・ミッションに比べられるものではありません。

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Image: UAE Space Agency
開発中のHOPE。

UAEがこのようなプロジェクトに乗り出すのは初めてで、そのため賢くもかつてMAVENミッションに取り組んでいたコロラド大学ボルダー校の大気宇宙物理学研究所(LASP)を含む米国の機関から専門的知識を獲得。BBCによると、UAEと米国のエンジニアらは探査機の設計と製造を共同で行なったとか。

LASPのシニアシステムエンジニアであるBrett Landin氏はBBCに、「自転車の乗り方を教えても、自分でやってみるまではどんな感じか実際に理解できません。探査機も同じことです」と語っています。「探査機に燃料を積み込むプロセスを教えることはできますが、脱出服を着て800kgもの高揮発性なロケット燃料を貯蔵タンクから探査機へと運ぶすまで、実際にはどんなものか分からないのです」

ご尤もです。

国家の威信

エミレーツ・ホープ・ミッションがUAEの建国50周年と重なるのは、偶然ではありません。

EMMのプロジェクトマネージャーOmran Sharaf氏いわく、「同ミッションのアイデンティティーはUAEのみならず、アラブ界のためでもあるのです」とのこと。このミッションは「アラブの若者を触発して希望のメッセージを送るためのもので、そのメッセージとはUAEのような国家は50年足らずで火星に到達できて、ならばそんな歴史と人としての才能からして君たちならもっと多くの偉業を成し遂げられると伝えるものです」とSpaceflightNowで語っていました。

アラブによる火星へ遠征が新たな国家の威信をあおるのは間違いありませんが、EMMのサイトによれば、ミッションが「アラブの次世代の人たちが宇宙科学に従事するよう、刺激を与える」ことも願っているそうで。そのうえ、「サスティナブルで将来性のある経済とは、知識集約型経済である」とUAE宇宙機関は書いています。 STEM分野、特に宇宙テクノロジーへの投資は、暴落している原油価格を踏まえるとUAEにとっては賢い動きです。

科学研究のためのユニークな軌道

火星に到達したら、HOPEは赤い惑星の空高くにあるユニークな赤道軌道に突入します。惑星の自転と同じ方向に動いて、およそ55時間ごとに一周します。これにより探査機の機材は、1つのターゲットを長期間にわたって観察できるとか。

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Image: UAE Space Agency
火星への旅。

「どの土地も1日のあらゆる時間帯での観測を行ないたいという欲求によって、軌道が巨大な楕円形になった」とLASPの科学者David Brain氏はBBCに語っています。「そういった選択によって、たとえばオリンポス山(太陽系としては最大の火山)は1日を通じて変化するが、その上空を飛ぶことができる。また自転する火星を見下ろすことも」と言い、「火星の全球画像を得られるが、カメラにはフィルターがついているため、我々は必要に応じて異なるゴーグルのついた全体的な光景を取得して科学を研究する」と付け加えています。

オリンポス山の新しい画像だって? 待ちきれませんね。

火星にとって「初の気象衛星」

軌道に突入したら、HOPEは全球スケールで火星の大気を研究します。探査機が集めたデータは、季節の移り変わりや昼から夜に変わる影響の変化を追跡するのに使われます。また、宇宙へと散逸している火星の水素と酸素の研究にも使われ、下層と中層大気の気象パターンとその仕組みを研究する予定。

2018年にオポチュニティのミッションを終わらせた大規模な砂嵐など、時々発生する巨大なダストタワーや惑星を覆うほどの砂嵐を含む過酷な気象条件も、より深く理解させてくれるはずです。

HOPE探査機は、火星の初期の歴史についての疑問や、かつては湿気を含んで厚い大気に覆われていた惑星がいかにして現在の冷たく乾燥した荒れ果てた地になったのかという疑問にも答えてくれるでしょう。

「火星にとって初となる気象衛星です」とHOPEミッションの副プロジェクトマネージャーSarah al-Amiri氏は、6月に行なわれたウェビナーにおいてこう説明しています。「過去のミッションは大気条件を散発的に、特定のロケーションを特定の時間帯で見て研究しただけです。1日の中で異なる時間帯でのアラスカ、ロンドンそしてUAEから地球を研究させて、天候と気候の全体像を形成できるようになれと言っているようなもの」とのこと。

もっと大まかな概念的なレベルで言うとHOPEは、火星の以前、あるいは現在の生命を宿す能力を評価しようとする科学者らへの助力となるのです。それにUAE宇宙機関いわく、地質系統としての火星への認識を向上させることに加えて、将来の火星への有人ミッションのために科学者らが備えられるようになるとか。

探査のための3つのツール

こういった意欲的なゴールの実現のためにHOPE探査機にはカメラ、赤外線分光計に紫外線分光計といった3台の観測装置が搭載されています。

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Image: UAE Space Agency
HOPE探査機に搭載される装置。

カメラはEmirates eXploration Imager(EXI)と呼ばれるもので、火星の高解像イメージを捉え、水氷の深さを測り、火星のオゾン層などを研究します。

Emirates Mars Infrared Spectrometer (EMIRS)は赤外線域にある火星の下層大気をスキャンして、塵や氷雲そして水蒸気を観測。この装置は表面と下層大気の温度を測ることもできます。

Emirates Mars Ultraviolet Spectrometer (EMUS)はあらゆる高度と季節を通じての一酸化炭素、酸素と水素の分布を観測するのに使われます。このデータでもって科学者らは、大気中の酸素と水素の分布を示す3次元マップを作り上げます。

HOPEの活躍で火星への理解はかなり深まると思われます。データが流れてくる来年初めまで待つとしましょう。

Source: emiratesmarsmission(1, 2, 3, 4), Arab News, Spaceflight Now, NBC, BBC, spacenews,

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