「映画はおうちで見る」がスタンダードに? 新作映画を17日後にネット配信するシステムが解禁

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  • author 傭兵ペンギン
「映画はおうちで見る」がスタンダードに? 新作映画を17日後にネット配信するシステムが解禁
Photo: Shutterstock

映画の鑑賞スタイルに大きな影響を与えるか?

ワイルド・スピード』など世界で大人気の作品を多く抱える映画製作&配給会社のユニバーサル・ピクチャーズが、アメリカの映画館チェーンの最大手であるAMCと共に、劇場公開から17日でプレミアムVOD配信(レンタル配信)出来るようにする数年間の契約に合意したとの発表が行われました。

今までアメリカでは劇場公開から3ヶ月間程度は新作映画は映画館のみで見られるものとするというのが一般的だったので、これは大きな変化。

そもそもの始まりはコロナ禍

実は今年の4月頃、ユニバーサル・ピクチャーズがコロナ禍を受けて自社の映画『トロールズ ミュージック☆パワー』を劇場公開予定日と同時にデジタル配信(営業可能だったドライブイン・シアターでの公開)をしたところ大ヒットとなり、それを受けて同社は、これからは劇場公開と同時にデジタル配信を行うという方針を発表していました。

しかし、それに対し映画館最大手のAMCが強く反発し、同社の社長はそのようなことになればユニバーサルの映画は同社の映画館で上映しないとまで発言するまでの事態になっていました。要するに今回の合意は、一種の和解といったところ。

ちなみに、今回の契約におけるプレミアムVOD配信とは、いわゆる20ドルくらいの(映画館に行くのと同じくらいの値段)デジタルレンタルないしは販売を指すものなので、17日後にいきなりNetflixのような見放題配信サービス来るというわけではありません。

とにかく、まだ映画館が営業再開を許可されていない大都市が多いアメリカでは妥当な判断にも思えるし、映画ファンとしてもすぐお家で作品が見られるようになるというのは嬉しいことに思えますが……どうも喜んでばかりはいられないかもしれません。

映画館の危機につながる?

アメリカの劇場は公開してから日が経つと映画館側の取り分が増えていくという仕組みであることが多く、それを担保するところもあっての3ヶ月だったわけなので、それが短くなるというのは単純に映画館が儲かりにくくなる可能性が高いわけです。

今回の契約が具体的にどういった取り分となっているかは不明ですが、Varietyの記事によるとどうやらレンタル分の20%くらいを映画館側の取り分とする契約の様子なので、とりあえずレンタル分からも収入はある様子。

しかし、そもそも2週間ほどで家で見られるんだったら、わざわざ外に出ないで家で最新作を見るのも悪くないと判断する人も少なくないでしょう。そしてどうせ家で見るなら、安くなるか見放題サービスに来てからでいいや……という人も出てくるはず。となると、今回の契約での映画館の取り分は発生しないはず……。

映画館でどうしても見たいタイプのド派手な大作であればまだしも、そうではない映画にはより一層、興行成績に響きそうというのは想像するに難くありません。

また、ColiderVarietyなどの映画メディアが指摘しているように、最大手がこのような契約を結ぶと小さな劇場も業界の新スタンダードに従うこととなり、大手と比べて体力があるわけではないので収入減によってより大きなダメージを受けるのではないかとも考えられます。

結果として、小さな劇場にしかかからないようないわゆるミニシアター系映画が上映される場所が減ってしまうんじゃないかという懸念があります。もちろんそういった映画はデジタル配信サービスの普及によってだいぶ見やすくなりましたが、それでも家で見るのと劇場で見るのでは別の体験ではあるので、劇場で見るという選択肢が失われてしまうのは厳しい

そもそも上映される場所が減ったら、そういう映画が作られていく機会も減るのではないかという懸念もありますよね。

他社も追従する? 日本はどう?

執筆現在で、他の映画会社が同じような契約を結んだという話は出ていませんが、Deadlineが掲載したアナリストのレポートによれば、そもそも3ヶ月ルールをどんどん短くしようとしていた映画会社が多いようで(まじめに守っているのはディズニーだけらしい)、追従する映画会社も出てくる可能性は高そうです。

また、映画館側もそういった話は出ていませんが、AMCのような大手がこうした契約を結ぶと追従することになるのではないでしょうか。今回の契約は数年に及ぶもので、映画館が本格的に再開して最終的にはユニバーサルとAMCがどれくらいの利益を上げるかによるところが大きいので、今後の動向を見守っていきたいところ。

日本はそもそもとして今の映画館の営業状況が違うというのもあり、どうなるかは不透明。ただ、アメリカでも日本でもこのコロナ禍でかなりの打撃を受けており、新作の制作ができるかすらまだ怪しいところで、悪化が続くようであればそもそも新作が全然出てこないという状況もありうりますからね……。

ともかく、これからの状況には注目しておく必要がありそうです。あとはそれぞれがマスクをして手を洗い感染症を広めないようにしながら、映画館であれ家であれ見られる場所で映画をとにかく見て業界全体をサポートしていくしかないというのが正直なところ。とにかく映画を見るんですよ!

Source: Variety12DeadlineColider

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