「切られれば切られるほど硬くなる金属」が誕生。ノコギリが返り討ちに

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
  • [原文]
  • R.Mitsubori
「切られれば切られるほど硬くなる金属」が誕生。ノコギリが返り討ちに
Image: New Atlas / YouTube

切られたら、切り返す。

どんなに高価なチェーンロックを自転車につけても、本気でやろうと思ったらほんの数分でチョキンと切られてしまいます。ですから愛車を盗まれないよう、できるだけ狙われない場所に駐輪したりしますよね。

「絶対に切れない金属なんて存在しない…」と思われていましたが、今回イギリスのダラム大学とフラウンホーファー研究機構の研究者チームが史上初となる「絶対に切れない人工金属」を開発しました! 切削しようとしたノコギリが返り討ちにあう様子が動画で紹介されています。

たとえば、ダイヤモンド製のシールドで包んでおけば、ちょっと目を離しているスキに自転車が盗まれるってことはなくなるはず。しかし地球上で最も硬い物質の1つであるダイヤモンドも、加工の過程で宝石店のツール(これもまたダイヤモンド製)でカットされ成形されるわけですから、時間と忍耐さえあれば切断可能ということになります。そもそも、ダイヤ製の自転車ロックっていったいいくらするんだろう…。

その点、プロテウスと名づけられたこちらの新素材は、まったく別のアプローチをとります。ダイヤモンドの強靭さは高密度の原子構造によるものですが、プロテウスの密度は金属の25%程度。では、なぜプロテウスは切削されないのか? その秘密は、発泡アルミニウムにセラミック球が埋め込まれるという独自構造です。削れば削るほどノコギリの切れ味が悪くなり、成分がダスト状になるほど切れにくくなっていきます。

なんだか地球に不時着したUFOから発見された素材のような名前だし、従来の「強くて切れない素材」へのアプローチをひっくり返すような画期的な手法です。プロテウスの画像や動画を見ると、その外層は簡単に切断され突破されているのですが、ノコギリの刃なりドリルなりが表面下に埋め込まれたセラミック球に当たったとたん振動が起き、鋭い切れ味が突如鈍っているのがわかります。

Video: New Atlas/YouTube

これは、セラミック球が切断されることでセラミックダストの小さな粒子が蓄積し、発泡アルミニウムを充填したことによるもの。工具の速度が上がれば上がるほど、金属の密度が上がり、硬くなっていきます。たとえば、サンドバッグに弾丸を撃ち込むと、その衝撃がサンドバッグに吸収されることで内部の小さな粒子が圧縮・硬化し、弾丸の動きが止まりますよね。それと同じような原理です。

YouTubeには、ウォータージェットカッターを使っていろいろなものを簡単に切っていく動画が溢れています。ノコギリよりも切れるんだぜ、って感じのもありますが、研究者チームは「プロテウスはセラミック球体の形状が細かい水の流れを広げ、スピードとパワーを落とすので、ノコギリなど同様ウォータージェットカッターからのダメージにも負けない」と指摘しています。

研究者チームはなにも、超頑丈な自転車用ロックを作るためにプロテウスを生み出したわけではありません。この素材がもっとも力を発揮するユースケースは、たとえは超軽量でありながら戦車並みの耐久性を持つ車を作れる装甲とかね。それでいてサイズはお手頃で燃費も良い、みたいな。あとは、アングルグラインダー(研削盤)やテーブルソーといった危険な工具を使用する際の保護具の開発にも使えそうですね。

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